レンジャーズ戦に先発したエンゼルス・大谷翔平【写真:Getty Images】

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斎藤隆氏がズバリ「四球を出すのは日米共通してやってはいけないこと」

 今季、投打同時出場の“リアル二刀流”へ本格的に乗り出したエンゼルス・大谷翔平投手。4月4日(日本時間5日)のホワイトソックス戦で初先発し、「2番・投手」で打席に立つと初回に自ら先制ソロを放って見せ、ファンの期待をさらに大きく広げてくれた。

 右手中指にできたマメの治癒を待ち、今季2度目の先発となったのは20日(同21日)に行われた本拠地でのレンジャーズ戦。マメへの影響を考慮し、投手一本でマウンドに上がった大谷だが、コントロールが定まらず。4回を投げて1安打7四死球7奪三振。無失点に抑えたものの荒れた投球内容に試合後、大谷自身も「(制球面の採点は)ゼロ点ですね。自分でピンチを招いて、自分で抑えてっていうだけの感じだったので。自分でピンチを作るのは、いらないこと。なるべく減らした方が失点のリスクも低いかなと思います」と反省の言葉を並べた。

 大谷が挑む二刀流の難しさは、誰にも分からない次元の話だ。だが、大谷が類い稀の才能の持ち主であり、野球を新たなレベルへステップアップさせる可能性を持つ人物だと認めるからこそ、1人の投手として辛口エールを送るのが、元メジャー右腕の斎藤隆氏だ。斎藤氏はレンジャーズ戦での大谷の投球について「ピッチャーとしての若さ、幼さを感じた」と指摘。その上で「今年はピッチャーとしての礎を築いてほしい」とエールを送った。

 この日、大谷は初回1死から3者連続四球で満塁のピンチを招くと、2者連続で空振り三振で無失点。2、3回も四球で走者を背負い、先制直後の4回にも2者連続四死球を与えるが、得点を許さなかった。4回で要した球数は80球と多く、この日の球速は最速97.7マイル(約157.2キロ)。独り相撲となってしまった登板を、斎藤氏はこう見る。

「例えば、プロ1年目、2年目の投手が成長過程で見せたマウンドだったら分かるけれど、大谷翔平くらいの投手があの内容だと、幼い感じがしますね。三振かフォアボールか。クローザーが4イニング投げたようなピッチングでは、先発としては厳しい評価になりますね」

 斎藤氏が最も幼さを感じたのは「調整が良くない時の対応力」だという。この日はスライダーが生かせず、フォーシームとスプリットが中心の組み立てとなった。「初回の制球の乱れから2回に少し建て直したところは評価すべきところではありますが……」と続ける。

「投手は誰でもゲームの作り方を何パターンか持っている。全ての持ち球の調子がいい時は、何本かヒットを打たれることがあっても無失点に抑えることに苦労はしません。投手が持つ資質が試されるのは、ストライクが上手く入らない時にどうやってゲームを作るか。そういう試合を勝ちに結びつけたり、負けずに終われたりできる投手が、結果として2桁勝利を挙げて、5敗、6敗で堪えられる先発投手になる。大谷選手は右肘を手術したので、メジャーで投手としての経験が少ないことも影響しているとは思いますが、フォアボールを出すのは日米共通してやってはいけないことですね」

大谷の悔しげな表情に見た本気「だからこそ、厳しい目で見たい」

 史上稀に見るリアル二刀流の道に挑む大谷ゆえ、斎藤氏は「誰もが知らない領域。もしかしたら打撃で下半身が疲れている可能性もあるし、そもそも2way(二刀流)の選手にそこまで求めてもいいのかという疑問もある」と複雑な心境を明かす。だが、敢えて厳しい言葉を送るのには理由がある。

「レンジャーズ戦で投げ終えた後、大谷選手の表情が冴えなかった。ああいう姿を見ると、本人が求めていたのは『マメができた後で4回無事に投げられてよかった』という部分ではなかったというのが分かりますね。あの冴えない表情から、大谷選手自身がただ投打の両方をやっているだけではなく、投手としても打者としても本気で勝負しているのが分かる。だからこそ、こちらも投手として厳しい目で見たいし、ファンの皆さんにもしっかりした評価を知ってほしいと思います」

 斎藤氏が繰り返すのは「大谷翔平は今の野球のもう1つ上、大谷翔平にしか分からないレベルに行く」ということ。高い身体能力はもちろん、野球の才能とセンスを持つことは明らかだからこそ、投手本格復帰となる今年は大切な時になるとも信じている。

「投手としては実質、メジャー2年目、3年目。まだまだ経験として学ぶことは多いし、調子の良し悪しは必ずあります。調子が悪い時にどういうピッチングができるか。その基礎となる部分を、今は一生懸命に、嫌というほど叩き込むべきでしょう。レンジャーズ戦でも7四死球を与えながら、結果はゼロに抑えた。これは評価すべき点ですよね。投手・大谷翔平がこの先どこまで進化するのか。そのためにも、今年は重要なシーズンになると思います」

 高い期待を寄せるからこそ送る、先輩メジャーリーガーからの辛口エール。今季、投手・大谷がどんなシーズンを過ごすのか、未来の姿を思い描きながら見守りたい。(佐藤直子 / Naoko Sato)