数億円のスーパーカーを「経費で落とす」はOK!? 節税対策はどこまで可能? 税理士に聞いてみた!
なぜスーパーカーが経費で落とせるのか?
経営者だったり、サラリーマンでもある程度の役職以上だったりすると「経費で落とす」ことで、食事代や宿泊交通費などを会社持ちにできることがあります。
なかにはクルマを経費で落とす人もいますが、そもそも「経費で落とす」ということは、どういうことなのでしょうか。
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自分の財布から出さなくていいという意味ではなんとなく得した気持ちになるものですが、実際に経費で落とすということを、どういうことなのかを理解している人は意外と少ないかもしれません。
クルマの場合、一般的に社用車と呼ばれるものですが、いかにも仕事用という感じの商用バンなどはまだしも、セダンやSUVだったりが社用車といわれるとピンとこないかもしれません。
ましてや、スーパーカーを社用車にして経費で落としているとなると、なんだかズルいことをしているようにも感じてしまうのではないでしょうか。
簡単にいえば、経費で落とすことで税金(法人税など)の支払いを少なくすることができます。基本的に、法人税やそのほかの関連税は、売上から経費を差し引いた金額である利益(所得金額)に応じて額が決まります。
例えば、年間1億円の売上がある飲食店の場合、原材料費、家賃、水道光熱費、従業員人件費、役員報酬などを合わせて9000万円を使うと、利益(所得金額)は1000万円となり、この金額に対しておよそ25%の法人税などが発生するため、それを差し引いた約750万円が最終的に会社に残る金額となります。
もし仮に、経費を余分に500万円多く使用した場合、利益(所得金額)は500万円となり、税金はおよそ125万円となります。経費を使用しなかった場合に比べて、約半額の支払いで済むことになります。
上記はあくまでも説明のために簡略化したものであり、実際にはより複雑な計算がおこなわれることになります。
つまり、税金で支払うよりも、会社に必要なものを購入したり会食を行ったりするほうが会社にとってメリットがあるとした際に、「経費で落とす」ということがおこなわれるのです。
しかし、「経費で落とす」は決して魔法の言葉ではありません。なぜならば、会社に利益が出ていることが前提であることや、あくまでも会社に必要なものやことに対してでなければ認められないからです。
「経費で落とす」ということの意味は前述のとおりですが、利益が出ている会社にとって必要なのであれば、クルマ、とくにスーパーカーなどを経費で落とすことは可能なのでしょうか。
東京都に事務所を置くある税理士は次のように説明します。
「適切な内容であれば、スーパーカーを経費で落とすこと自体は問題ありません。
ここでいう『適切』というのは、スーパーカーが業務に必要なものかどうかということです。最終的には税務署の判断になりますが、例えば自動車メディアのような、スーパーカーに乗ることそのものが仕事になるような会社なら認められる可能性はあるかもしれません。
逆に、普通の飲食店などの場合どう考えてもスーパーカーを必要としない業態では、認められる可能性は少ないといえるでしょう。
事業上の必要性を示すことが重要なので、事業で使っていることがしっかりと説明できなければなりません。
例えば、運行日誌や出張にいった際の履歴など証明になるものがあることが望ましいです。
逆にいえば、しっかりと業務に使用しているのであれば、ガソリン代はもちろん、高速代や駐車場代、自動車保険や自動車税なども経費として計上することが可能です」
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事業上の必要性が証明できれば、極端な話ですが数億円のスーパーカーでも経費で落とすことは可能なようです。
実際に、平均販売価格が2000万円を超える、超高級車ブランドでは顧客のおよそ9割が法人として購入するといいます。
経費で落とすなら、新車よりも中古車の方が良い?
事業上に必要である前提で社用車を購入する場合、多くの人はせっかくなら新車の方がいいと思うかもしれません。しかし、税制上のメリットを考慮すると、意外にも中古車のほうがよい場合も多いようです。
前出の税理士は次のように話します。
「自動車のように、複数年にわたって使用可能なものは、原則として1年で全額を経費にすることができません。
法定耐用年数といって、その製品の使用可能な年数が決められており、新車の場合、普通車は6年、軽自動車は4年となっています。
細かい計算は割愛しますが、たまたま1000万円の利益が出たからといって、1000万円の新車を購入しても実際にその年度に経費で落とせるのは200万円以下ということになるのです。
一方、中古車の場合、法定耐用年数は『新車の法定耐用年数−経過年数+経過年数×0.2』という式によって表されます。
中古車の方が、法定耐用年数が短い分、年度内により多くの経費を計上することができるという意味で、節税メリットはあるといえます。
さらに、4年落ちの中古車であるなど、一定の条件が整うと法定耐用年数が1年となり、年度内にすべてを経費として計上することが可能になります。
多くの企業は、翌年度以降も安定して利益が出続けるとは限らないため、その年度の利益だけにしか影響を及ぼさないというのは非常に大きなメリットです」
このように、特定の条件が揃うことで、節税効果を最大化させることができます。近年、高級輸入車ブランドが中古車の販売にも力を入れていますが、その背景にはこうした税制上のメリットがあるといえます。
節税すること自体は違法であるどころか、国税庁も推奨しています。事業上の必要性があれば、理論上はどんなクルマでも経費で落とすことが可能です。また、税金の仕組みを正確に理解できれば、節税効果を最大化することも可能です。
一方で、前出の税理士は次のように警鐘を鳴らします。
「手元の現金を最大化するためには、税金を支払う以外に方法はありません。利益が出ているからといって、本当に必要でないものを購入するのは本末転倒です。
また、社用車を購入する際も、節税を意識しすぎるのではなく、本当に必要なクルマを選ぶことをオススメしています。結果として、『節税効果があればラッキー』というように考えるのがよいのかもしれません」