売れなくても攻めていた! 個性豊かだった頃のホンダ車5選

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アイデア満載で斬新なデザインのホンダ車を振り返る

 ホンダは、1948年に浜松市で「本田技研工業株式会社」として創業。自転車用補助エンジンの生産からスタートしました。その後、本格的なオートバイの生産をおこない、1963年には同社初の4輪自動車となる軽トラックの「T360」を発売し、4輪自動車メーカーとしての歴史が始まりました。

残念な結果になってしまったものの個性的だったホンダ車たち

 さらに、1964年には日本初のF1マシンを製作し、F1グランプリに参戦するなど、技術屋として世界中に知られる存在になります。

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 ホンダクルマを作り続けて60年近く経ちますが、現在の主力車種は軽ハイトワゴンの「N-BOXシリーズ」やコンパクトカーの「フィット」、SUVの「ヴェゼル」、ミニバンの「ステップワゴン」です。

 一方、これまでセールス的には成功したといえませんでしたが、数多くのユニークなモデルも世に送り出してきました。

 そこで、1990年代から2000年代に登場した、個性的なホンダ車を5車種ピックアップして紹介します。

●HR-V

ホンダ製クロスオーバーSUVの先駆け的存在の「HR-V」

 現在ヒット中のヴェゼルに先駆け、1998年にデビューのが「HR-V」。コンパクトカーの「ロゴ」のシャシをベースに仕立てられたクロスオーバーSUVです。

 ステーションワゴンタイプの2ドアボディに大径タイヤを装着し、最低地上高を上げることでSUVらしさを表現し、伸びやかなサイドビューとキャビンが低くデザインされたスタイリッシュなフォルムとなっています。

 搭載されたエンジンは最高出力125馬力を発揮する1.6リッター直列4気筒VTECと、VTEC非搭載で105馬力を発揮する1.6リッターの2種類の仕様を設定し、駆動方式はスタンバイ式の4WDのみです。

 当時は斬新なスタイルで話題となったHR-Vでしたが、やはり2ドアのみだったことと特徴的なフロントマスクは好みが分かれ、「CR-V」ほどのヒット作にはなりませんでした。

 1999年には4ドアモデルが追加されて使い勝手が向上し、2001年にはVTECエンジンの2WDモデルを追加するなど、バリエーションを増やしましたがヒットすることなく、2003年には2ドアモデルの販売を終了し、2005年には4ドアモデルも生産終了となり、一代限りのモデルとなりました。

 なお現在、ヴェゼルは海外ではHR-Vの名で販売されています。

●アヴァンシア

シックで高級感のあるステーションワゴンの「アヴァンシア」

 2020年7月にホンダのステーションワゴンタイプのミニバン「ジェイド」の販売が終了し、現行ラインナップでは「シャトル」が唯一のステーションワゴンです。

 しかし、かつては「アコードワゴン」がヒットし、「シビックシャトル」や「オルティア」など、ステーションワゴンが充実していたこともありました。

 そして、1999年に発売されたステーションワゴンが「アヴァンシア」です。上級セダンのような落ち着いたデザインと広い室内空間で、プレミアムなステーションワゴンというコンセプトで開発されました。

 外観は低く構えたフロントに、流れるようなルーフラインが特徴で、同時期に販売されていた「アコードワゴン」よりもシックで高級感があります。

 ボディサイズは全長4700mm×全幅1790mm×全高1500mm(2WD)とワイドで全高が高く、2列シートのミニバンに近い印象です。

 搭載されたエンジンは2.3リッター直列4気筒と3リッターV型6気筒の2種類が設定されており、3リッター車にはホンダ初となる5速ATが搭載され、日常走行時から高速走行時まで、幅広いシーンで低燃費を実現しています。

 しかし、日本市場では「オデッセイ」とステップワゴンが高い人気を博していたことが影響し、ステーションワゴンのニーズも低下していたため販売は低迷。

 2003年に生産を終了しますが、2016年に中国向けのSUVとしてアヴァンシアの名が復活し、現在も販売されて高い人気を誇っています。

●エレメント

アメリカではヒットするも日本では微妙だった「エレメント」

 かつて大ヒットしたCR-Vですが、2016年に一旦国内販売を終了し、2018年に5代目が2年ぶりに日本でも販売されました。

 このSUV人気のなかでもCR-Vの販売は苦戦していますが、北米ではアコードやシビックと並んで好調なセールスを続けており、ホンダの看板車種といえます。

 そして、CR-Vと同様にアメリカでヒットして日本に導入されたSUVが、2005年発売の「エレメント」です。

 エレメントは北米市場では2002年に発売されたミドルサイズSUVで、企画、開発、デザイン、生産と、すべてアメリカホンダでおこなわれ、ジェネレーションYと呼ばれる若者層がターゲットでした。

 前後のドアが観音開きとなっていることが特徴で、ボディはバンパーやフェンダーなど、部分的にあえて無塗装の樹脂パーツとすることで、アウトドアギアのような機能性の高さが表現されています。

 エンジンは北米仕様の「アコード」と同じ2.4リッター直列4気筒DOHC「i-VTEC」が搭載され、160馬力と比較的パワフルながらも低燃費を実現。

 北米市場では個性的なデザインと高い走行性能によって一定の人気を集め、後に新グレードの追加やフロントフェイスの意匠変更が実施されています。

 しかし日本市場では個性的な外観が日本では受け入れられず、販売は低迷し、発売からわずか2年8か月ほどで販売を終了しました。

発想は良かったもののヒットには至らなかったミニバンとは!?

●インサイト

ストイックなまでに燃費を追求して開発された「インサイト」

 1997年にトヨタは世界初となる量産ハイブリッド車の初代「プリウス」を発売して、世界中のメーカーを驚嘆させました。

 ホンダも低燃費車の主流がハイブリッドになることを見据え、1999年に同社初のハイブリッド車「インサイト」を発売。

 パワーユニットは、新開発された70馬力の1リッター直列3気筒エンジンに、13馬力のアシスト用モーターを組み合わせた、「ホンダIMA(インテグレーテッド・モーターアシスト)システム」と呼称されるパラレルハイブリッドを採用。

 また、軽量化のために乗車定員は2名とし、NSXで培った技術を活かしたアルミ製シャシや、アルミと樹脂を組み合わせたボディパネルを採用したことで、車量は820kg(MT車)に抑えられていました。

 外観は完全に流麗なスポーツカーのようなフォルムで、リアタイヤをスパッツで覆い、空気抵抗を徹底的に削減した結果、Cd値(空気抵抗係数)0.25を実現。

 ストイックなまでに低燃費を目指し、燃費は初代プリウスを抜き、当時の量産ガソリン車で世界最高となる35km/L(10・15モード)を達成しています。

 しかし、インサイトは2名乗車としたことでユーザーからは受け入れられず、販売が低迷。2004年のマイナーチェンジで36km/L(10・15モード)と、さらに燃費を向上させましたが販売台数の回復にはつながらず、2006年に生産を終了しました。

 そして2009年に発売された2代目インサイトは、プリウスを意識した5ドアハッチバックに改められ、2018年に登場した現行モデルの3代目は北米での販売を主力したクーペタイプのミドルクラスセダンとなっています。

●エディックス

斬新な発想は良かったものの販売はイマイチだった「エディックス」

 1994年に同社初のミニバン「オデッセイ」が発売され大ヒットを記録。さらに1996年にはミニバン第2弾となるステップワゴンを発売してこちらも大ヒットし、ホンダは悪化していた経営状況が一気に好転しました。

 そして、あらゆるニーズに応えるためにミニバンラインナップを拡充し、2004年に新発想のモデル「エディックス」が登場。

 前列、後列とも独立する3つのシートが設置された2列シート6人乗りと、「3by2」と呼称されるユニークなシートアレンジが特徴で、新たなコンセプトのファミリーカーとして開発されました。

 発売当初は1.7リッターと2リッター直列4気筒エンジンが搭載されていましたが、複数人数の乗車ではパワー不足という声もあったため、後期型では2.4リッターエンジンが加わっています。

 このシート配置は大いに話題となりましたが、欧州ではヒットしたものの日本ではそれほど販売台数が伸びず、数回のマイナーチェンジを経て2009年に一代限りで販売を終了。

 やはり使い勝手的には、一般的な3列シート+スライドドアのミニバンに分があったようで、実際にヒンジドアのミニバン「ストリーム」や前述のジェイドは淘汰され、オデッセイもスライドドアに改められています。

※ ※ ※

 ホンダはかつて「ミニバンメーカー」といわれ、いまでは「軽自動車メーカー」と揶揄されますが、それらは「エンジン屋」と呼ばれたことがあった頃のギャップがあるからではないでしょうか。

 本文中にあるとおり、ホンダはオデッセイとステップワゴンに救われたのは事実で、現在も「NSX」や「シビックタイプR」、「S660」といったスポーツ車をラインナップできるのも、ミニバンや軽自動車の成功があったからです。

 ホンダは昔にくらべてだいぶ保守的になった印象ですが、まだまだホンダイズムの火は消えていません。