サッカーIQラボ
〜勝負を決めるワンプレー〜

Question
味方にパスが入った時、メッシはどうしたか?

 リオネル・メッシほど、ゴールに愛されてきた男はいない。きっと誰しも明確に思い描けるメッシのゴールがあるだろう。それほどこの10番は人々の脳裏に焼きつく数多くのゴールを生み出し、多くのタイトルをチームにもたらしてきた。その存在は、現役にして伝説の域に達している。

 伝説の始まりは15年前の5月1日、バルセロナホームのアルバセテ戦だ。メッシはサミュエル・エトーに代わり、88分にピッチへ送り込まれた。そしてアディショナルタイム、先代10番ロナウジーニョのパスに導かれるようにディフェンスラインの裏へ抜け出し、17歳とは思えぬほど美しく冷静なループシュートでプロ初ゴールを刻み込んだ。

 そして2018-19シーズン、ラ・リーガ最終節エイバル戦。あれから600ゴール以上を積み重ねたメッシが、その洗練された動きで魅せた。


味方からバックパスが送られた状況。次の瞬間、メッシはどこへ動いた?

 前半31分、マウコムからバックパスを受けるアルトゥール・ビダル。さて、ボールがビダルの足元に収まった瞬間、メッシはどうしただろうか?

Answer
DFラインの裏へ走り
スルーパスを呼び込んでシュート

 メッシはどれだけ執拗にマークされていても、一瞬だけ相手の意識から自分が消える瞬間を知っている。この時もまさにそれを狙っていた。


相手DFラインが上がり、ボールに目が行った瞬間にメッシは裏へ走り出し、スルーパスを受けてゴールした

 その”瞬間”をつくり出す要素は2つある。1つはマウコムからビダルへの”バックパス”だ。基本的に守備陣形はボールの動きに合わせて動くので、バックパスの際はラインを押し上げる。このシーンのエイバルもそうだった。メッシはこの押し上げられる相手DFラインと、入れ替わるタイミングを狙っていた。

 そしてもう1つは、相手の視線だ。DFはどんなに周囲に気を配っていても、ボールが渡ったその一瞬はボールホルダーへ視線が向き、意識を奪われてしまいがちだ。このシーンでもビダルの足元にボールが収まった時、エイバルDFたちの視線はその一点に集まっていた。

 メッシが狙ったのはこの2つが重なるほんの一瞬だ。ビダルにボールが渡り、メッシは一気に加速。エイバルDFたちはビダルのノールックパスという名演技にフリーズし、次の瞬間にもう一度凍りつく。上がったラインと入れ替わり、視線から消えたメッシがエリア内でフリーとなってボールを受けとったのだ。

 もう結果は見えていた。老獪なハンターの如く、その一瞬を撃ち抜いたメッシ。まさに名人級のラインブレイクによるゴールだった。