左右を確認しないことがもっとも危険!

 乱横断という言葉を聞いたことがあるだろうか。朝のワイドショーなどでも取り上げられるようになってきた、乱横断。乱横断とは最近できた言葉で、当方ではその名称は使っていなかったものの、同様の内容はたびたび指摘してきた。それだけに世間的にも注目を浴びるようになってきたのは、やっとかといった感じだ。

 乱横断とは、横断歩道以外を渡ったり、横断歩道でも信号を無視して渡ることで、高齢者を中心に問題になっているのだが、実際は年齢を問わずで、高齢者であればゆっくりすぎて危険。中年以下だと、いきなり飛び出しのように突然渡るのが問題となっている。

 高齢者については事故データにも顕著に表れていて、2018年の統計では歩行者の事故は自転車よりも多く、さらにそのうちの7割が高齢者。その3分の2に法令違反があったというから、高齢者についてはかなりの問題であり、対策が急務と言っていい。

 ワイドショーでは、実際に行なった人に乱横断をした理由を聞いているのだが、「渡れると思った」、「あそこで渡っても危なくないから」というよくある定番以外に、「法律は関係なく、自分の人生の時間を大切にしたい。年寄りは危ないと思うけど、自分は運動神経や反射神経がハンパないから大丈夫」、「横断歩道以外を横断すると緊張感が増すので安全。横断歩道では気がゆるむのでかえって危険というのが持論」などという、パンチのある珍説が紹介され、ネット民を中心に炎上に近い盛り上がりを見せている。もちろん何言っているんだ、コイツ的なコメントがほとんどなのが救いではある。

 横断禁止の道路を渡るのは違反となるが、本質的な問題は渡ってはいけないところを渡ることだけにあるのではない。ワイドショーなどでは顔にモザイクがかかっていてわかりにくいが、一番の問題は左右を見ずに突然渡ること。今までの観察からすると、最近は老若男女関係なく行なわれている。

事故時の歩行者の過失割合は以前よりも高くなる傾向にある

 つまり乱横断ではなく、左右無視が根底にある問題で、そうなると歩行者だけの問題ではなくなる。自転車の突然の車道へのはみ出し、路地からの飛び出し。クルマでも突然、横から出てくるし、路肩に駐車して突然ドアを開けて平気な顔をしているなど、すべての根っこにあるのは左右確認、後方確認の不足だ。よくロシアンルーレット的にまわりを見ないで飛び出せるもんだと、変なところに関心してしまうほど。

 誤解を覚悟で現実に即して言うと、横断禁止場所や横断歩道での信号無視はやってはいけないが、信号までの迂回が何百メートルもあって、目の前をそのまま渡るのがラクということはあるだろう。そのときでも、渡るな、すべて横断歩道や歩道橋を使えとは言わない。少なくとも、右見て、左見て、安全を確認してから渡ってほしい。ドライバー側も、遠くからでも見ているんだなと思えば、なにかあっても対応しやすい。どう見ても、歩行者も自転車も左右確認せず、ときにはスマホ片手に、耳にはイヤホン入れて、突然ビュッと渡るのはなし。クルマも同様だ。

 もし事故になったら、実際の非は歩行者にあっても、歩行者は交通弱者ということもあって、過失はクルマのほうが多くなるだけに、ドライバーとしても納得がいかないこともある。ただ、最近ではあまりに頻発していることから、歩行者の過失を大きく取ることも出てきた。

 実際に筆者のまわりであった、幹線道路の交差点で信号無視をして対向車の影から突然飛び込むように出て来た歩行者に当たった事故は、7対3で歩行者の過失割合が多かった。この割合というのは以前であれば考えられないもの。クルマは動いている以上、過失ゼロにはならないが、それを考慮に入れるとこの割合は実質、信号無視の歩行者にすべての過失があると言っていいだろう。

 とにかく、人もクルマも一旦止まって、左右確認。横断歩道を渡るとき、青でもまず左右を確認。これは幼稚園や小学校で習うこと。左右を見て、アイコンタクトができれば、お互いに認知が確認でき、意思も通じる。これだけでも、事故減少対策になるので、警察を含めた行政側も啓蒙に力を入れてほしいものだ。