マニアと味わう「ご当地カップ麺」の世界第二十一回 五木食品「ナポリ風スパゲティ」 文・写真:オサーン

カップ麺ブロガーのオサーンです。「ご当地カップ麺」を食べて紹介していく連載の第二十一回目。今回は、熊本のご当地メーカー、五木食品が製造・販売する生タイプの袋麺「ナポリ風スパゲティ」をレビューします。カップ麺ではありませんが、九州の即席麺文化を語る上で欠かすことのできない商品です。

くまモンが目印の「ナポリ風スパゲティ」

「ナポリ風スパゲティ」は九州のソウルフード

「ナポリ風スパゲティ」のパッケージには熊本のご当地キャラクター「くまモン」が描かれています。九州では広く出回っている商品で、サンポー食品の「焼豚ラーメン」やマルタイの「長崎ちゃんぽん」などと同じように、どこに行っても店頭に並んでいるのを見かけます。

九州の方と話をすると、郷土のソウルフードとして熱く語られることがあり、うんうんと頷いて聞いていたら、後日お土産として大量にいただいたこともありました。九州の方はホント熱い!

五木食品は熊本の即席麺メーカー

五木食品は、熊本にある即席麺メーカーで、カップ麺は出していないものの、「アベックラーメン」などの棒状ラーメンや、長期常温保存が可能なスープ付の包装ゆで麺(LL麺)などを製造しています。

福岡のマルタイや佐賀のサンポー食品とはライバル関係にあり、九州を舞台にしのぎを削っています。五木食品の乾麺やLL麺(ロングライフ麺、常温での長期保存が可能な茹で麺のこと)は九州外のスーパーなどでも取り扱われていることが多く、手に取ったことのある方も多いのではないかと思います。

包装されたゆで麺とソース粉末の袋が入っている

ナポリ風スパゲティの調理方法

内容物は、包装されたゆで麺と、「トマトルー」と書かれたソース粉末が入っています。「マ・マー」ブランドでおなじみ日清フーズの「ゆでスパゲッティ」と同じ形態。麺の袋は、現在は消えつつあるという学校給食のソフト麺とよく似ています。

調理方法は、フライパンで炒める方法と電子レンジで作る方法が選択でき、今回はより手軽なレンジ調理を選択します。炒めた風味をつけてよりおいしく食べるなら、フライパンの方が良いのではないかと思います。

麺を袋から出して具と一緒に皿に開けた状態

商品には具が入っていないので、必要ならば自分で用意します。私は普段だと具が入っていなくても気にならないのですが、今回は写真も撮らなければならいのでちょっと見栄を張って、ウインナー、玉ねぎ、ピーマンといった、ナポリタンらしい具を用意してみました。

麺に小さじ1杯の油をかけ、お好みの具をのせて、ラップを掛けてレンジに入れます。調理時間は500Wレンジで3分。具をたくさん入れる場合は少し長くする必要があります。

赤と白が混ざったソース粉末

レンジ調理後、スープ粉末を混ぜ合わせて完成です。赤と白の粉末が混ざっていて、おそらく赤はトマトで白は砂糖と思われます。こう見ると、砂糖がかなりたくさん入っていることがわかります。この粉末を見ているだけだとかなり甘そうに見えます。

ナポリ風スパゲティ完成

直線的でジャンキーなソース

トマトの酸味と砂糖の甘さが感じられるソースです。カップ麺や冷凍食品のナポリタンだと、トマトケチャップの濃厚さやソテー玉ねぎによる甘みを売りにしているものが多いですが、今回のソースはそれらとは違い、塩気の強さと砂糖の直線的な甘さが特徴。

トマトの濃厚感や玉ねぎのソテー感がないため、味に厚みがなくチープな味という印象。同系商品のマ・マーのナポリタンは多少なりとも玉ねぎの旨みがあるので、今回のソースはさらに安っぽい味に感じられます。

食べ進めていくうちに、この旨みをすっ飛ばした直線的な味が、逆にジャンキーでおいしいと思えてきました。明らかにナポリタンの魅力とは別物ですが、食べてはいけないものを隠れて食べているような魅力があります。

中太のソフト麺

ナポリタンのイメージにマッチしたソフト麺

太めのソフト麺が用いられています。学校給食のソフト麺に比べるとしっかりしているものの、それでもちょっと伸びたような食感です。パスタではアルデンテ食感が美徳とされているので、伸びた食感なのは本来ならマイナス材料ですが、他のパスタと違って、ナポリタンはお店でもわざと伸びた状態にして供されることが多いため、ナポリタンのイメージにマッチしています。

長期保存を可能にするため酸味料が使われていて、ソースを混ぜ合わせる前は麺からちょっと酸っぱい香りが漂いますが、実際食べるとソースの味が濃いので酸味はあまり意識せず食べられるのではないかと思います。

少し塩辛いので野菜をたくさん入れて食べたい

スープ粉末をそのまま全部使ってしまうとかなり塩辛くなってしまうことが難点。粉末の入れる量を減らすか、具の量を増やすなどして味を調整する必要がありそうです。パッケージに「お弁当に最適」と書かれていて、確かにおかずの一品としてなら、この塩辛さでも良さそうです。

今回、野菜は玉ねぎとピーマンを入れましたが、特に玉ねぎは塩辛さを薄めるとともに味をまろやかにするため、たくさん入れた方が良さそうです。麺とのバランスが悪く見えるくらい野菜をたっぷり入れて食べたいですね。

おかず的なおいしさが魅力

ナポリタンの魅力として語られることの多いトマトの濃さやソテー玉ねぎの甘みとはかけ離れた、酸味や塩気、直線的な砂糖の甘さが特徴のスパゲティでしたが、これが熊本で、そして九州で愛されるソウルフードの味と考えると感慨深いものがあります。

舌に直に伝わってくるソースの味は、ごはんの上にのせて食べたい、おかず的なおいしさでした。賛同は得られないかもしれませんが、禁断の炭水化物オン炭水化物もぜひ試していただきたいです。

筆者:オサーンカップ麺ブロガー。十数年前に出会った「日清麺職人」のおいしさに感激したことがきっかけでブログを開設。「カップ麺をひたすら食いまくるブログ」で毎週発売される新商品を食べて毎日レビューしています。豚骨スープとノンフライ麺の組み合わせがお気に入りですが、実はスープにごはんを入れて食べるのが最も至福の時です。Twitter(@ossern)