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「日本には、“思いやり予算”を年間80億ドル(約8,640億円)支払うよう求めていく」

米・トランプ政権が、そんな要求を日本に突きつけた。米・ボルトン大統領補佐官(当時)が今年7月に来日した際、日本側にそう伝えたと、アメリカの外交誌『フォーリン・ポリシー』が報じた。

思いやり予算とは、在日米軍関係経費のうち、日米地位協定(在日米軍の基地使用、行動、米軍関係者の権利を規定)に定められていない駐留経費を、日本側が負担しているものだ。

「日本政府は、『報道のような事実はない』と否定していますが、十分ありえますね。要求されたら日本はのまざるをえないでしょう」

そう話すのは、基地経済が専門の沖縄国際大学大学院教授・前泊博盛さん。その理由をこう続ける。

「10月に日米貿易協定が締結されましたが、日本が強く要望していた自動車関連の関税撤廃が先送りに。日本政府は、〈ウィンウィンの結果になった〉と発表しましたが、協定には、〈関税撤廃に関してさらに交渉する〉としか書かれていない。つまり決まってないんです。自動車関税を撤廃してほしいなら、これで穴埋めしろ、というトランプ流の揺さぶりです」

日本政府の試算では、アメリカが自動車関連の関税を撤廃した場合、日本には2,128億円の“利益”が出るという。

「少なくとも、この額以上は増額を要求するでしょう。取られた以上に取り返すのがアメリカのやり方です」

思いやり予算の内訳(2019年予算、防衛省資料などによる)は次のとおりだ。

【提供施設整備】207億円:内訳=原子力空母が接岸できる係留施設(横須賀基地)/戦闘機の格納庫・滑走路・耐爆シェルター/航空機などの修理施設/プール、ゴルフ場整備費など。

【在日米軍労務費】270億円:内訳=福利厚生費など。

【在日米軍労務費※】1,269億円:内訳=基地内従業員の基本給/劇場従業員の給与/夏季手当/寒冷地手当/時間外勤務給/消火手当/船長・機関長手当など。

【光熱水道費など】219億円

【訓練移転費】9億円:内訳=夜間離着陸訓練移転の費用。

【合計】1,974億円

その負担が始まったのは’78年。当初の62億円からどんどん増加し、’19年度予算では1,974億円にのぼる。

「’78年当時、財政と貿易の“双子の赤字”に苦しんでいたアメリカは、防衛庁長官だった金丸信氏に負担を要求してきました。最初は、〈雇用安定のため〉という日本の“思いやり”で、米軍施設の整備費や基地で働く労働者の福利厚生費のみ負担するはずでしたが、それが常態化して、項目も増えていったんです」(前泊さん・以下同)

後から増えていった項目が、「在日米軍労務費※」「光熱水道費など」「訓練移転費」だ。

「いまや、いちばん額が多い在日米軍労務費は43項目に及び、細かい手当まで負担しています。もとから負担していた提供施設整備費は、弾薬庫などの建設のほか、寝室が4つもあるような豪華な米兵の住宅、基地内の教会やゴルフ場、プールなどの建設費などに充てられています」

こうした思いやり予算は、本来、日本に負担義務はないという。

「戦後結ばれた日米地位協定で、日本側の負担として定められているのは、基地の土地提供(土地代)と、基地周辺の防音対策などにかかる費用だけ。それ以外に関しては、特別協定を結ぶなど、なんでもかんでも思いやり予算に計上し、日本に負担させているのです」

要するに、思いやり予算は米軍に都合のいい打ち出の小づちというわけだ。しかもこれまで日本は、思いやり予算以外にも、在日米軍関係経費として、辺野古新基地の建設費用や、グアムへの基地移転費用、さらには爆音訴訟の賠償金まで肩代わりして支払ってきた。その総額は’19年度で7,000億円を超える。

「日本の負担額は突出しています。駐留経費全体の負担割合は約75%(4,400億円)。ほかの同盟国は、韓国は40%(843億円)、ドイツは32.6%(1,564億円)です(※1)」

戦後74年。日本政府は、そろそろ米軍のやりたい放題に歯止めをかける時期ではないだろうか。

※1・米国防総省が’04年に公表した「共同防衛に対する同盟国の貢献度報告」による。これ以降この数値は発表されていない。米国の同盟国が米軍のために負担した金額。金額は’02年のもの。参考:2008年10月22日「しんぶん赤旗」。レートは報道当時のもの。