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「紀州のドン・ファン」の呼び名で知られた会社経営者、野崎幸助さん(77)が5月24日に亡くなりました。50億円の遺産があるとも言われる野崎さんは生前、ペットとして犬を可愛がっており、「自分の遺産は犬に相続させる」と話していたと伝えられています。

しかし、いくら家族として一緒に暮らしてきたペットでも、遺産を相続させることは残念ながら、不可能です。一方で、自分がこの世を去った後、愛するペットの生活がどうなるのか、心配な人は少なくないでしょう。そこで、自分の遺産を残されたペットのために使う方法があります。一体、どのような方法なのでしょうか。鈴木智洋弁護士に聞きました。

●「ペット信託」は確実に財産が飼育費に使われる仕組み

自分の死後、残されたペットのために「ペット信託」という仕組みがあるそうですが、いわゆる遺言書で明記する場合と、どのように違うのでしょうか?

「ペット信託とは、飼い主が自分の死後に備えて、ペットの飼育を任せられる人を定め、その人にペットの飼育費として残す財産を管理するための仕組みのことを言います。

遺言で明記する場合と異なり、確実にペットの飼育のために財産が使用されることになりますし、財産は信託されていますので、相続争いに巻き込まれるということもありません。

ただ、本件の場合、報道によれば、飼い主よりもペットの方が先に死亡しているようですので、いずれにしても、ペット信託を利用することは出来ないかと思います」

その手続き方法もお教えください。

「手続きは信託法に基づいて行われますが、大きく分けて、自分で会社を設立する方法、ペット信託の専門業者に依頼する方法があります。前者の場合、飼い主を代表者とする会社を設立した後、その会社に飼い主の死後にペットの飼養に必要な飼育費用を信託しておきます。

その上で、次の飼い主を受益者とする遺言書を作成するとともに、ペットの飼育の為ということを記載した信託契約書を取り交わします。また、弁護士などの監督人が、管理会社に移された財産の管理や、新しい飼い主によるペットの飼育状況を監督する制度も設けられています」

●対象は「鳥」や「魚」「爬虫類」でもOK?

ペット信託の対象となるのは、犬や猫以外の動物、たとえば、鳥や魚、爬虫類なども含まれますか?

「対象となる動物には特段の制限はありません。ただ、一般的に愛玩動物として飼育されている犬や猫などと比べると、それ以外の鳥、魚、爬虫類などの場合には、飼育方法の困難さなどから受託者が見つかりにくい、ということはあるかもしれません」

ペット信託のデメリットや心配事はありますか?

 「信託のための会社を設立する場合には、初期費用がかかるという点や、始まったばかりの制度なので、運用実績が沢山積み重ねられている訳ではなく、まだ流動的であるという点が挙げられるかと思います」

(弁護士ドットコムニュース)

【取材協力弁護士】
鈴木 智洋(すずき・ともひろ)弁護士
専門は労働法(使用者側限定)、行政法(行政側限定)、動物法・ペット法。動物法・ペット法に関しては、ペット法学会に所属する他、国立大学法人岐阜大学応用生物科学部獣医学課程の客員准教授も務めている
事務所名:後藤・鈴木法律事務所
事務所URL:http://www.gs-legal.jp/index.html