予約バックレ問題へのあるべき対処/増沢 隆太
1.ドタキャンよりひどい無断キャンは犯罪
50人とか100人という大量の宴会予約をしておきながら、キャンセルの連絡もないまま当日現れないという事件が相次いで伝えられています。店にしてみれば、売上が立たないどころか、予定したメニュー用に仕入れた材料が無駄になる、大損害を食らうことになります。
しかし一方、こうした不測の事態を店側がインターネット・SNSで訴え、ニュースになり、それを見た人が義憤からお店に足を運んだりして、何とか損害を食い止めたり、最小限の被害で収まったりするようで、人情ニュースとしても報道されます。しかしそれで良いのでしょうか?
そうした犯罪的な行為を働いた側の多くは、電話しても出なかったり、そもそも電話をつながらなくしたりなど、きわめて悪質な対応を取ることも多く、店は対抗手段を持っていません。また世界中で飢えた人たちがたくさんいる中、使えない食材を廃棄しなければならないとは、そのニュースで見る私たちにも大きな罪悪感を感じさせます。
2.美談で終わらせてはならない
一番悪いのはこうした犯罪行為を働いた犯人である予約者です。意図的に他人の名前を語って大量の出前を注文する嫌がらせと同じ、店に対する詐欺行為といえます。詐欺は刑法犯。本来イタズラで済むことではありません。
SNSでつぶやいた結果、別のお客さんが来てくれてタダで食べてくれたとか、お金を払っていってくれたという美談で終わるものの、私は、悪質な犯罪行為に対し、美談で終わらせることに強い違和感を覚えます。無駄にならなかったことや店の損害を最小限で済ませたこと自体にはホッとしますが、一方で犯罪者を野放しにして良いのかという点がそのまま残っているからです。
店側がことを荒立てることなくうやむや解決を選ぶのは、飲食店の経営環境が厳しく、激しい競争下で少しでも客にネガティブな印象となる可能性を恐れてのことともいわれます。しかし予約を無断で反故にした行為にもかかわらず、店側をネガティブに捉える「客」などいるのでしょうか?
3.無断バックレはそもそも客ではない
お店はお客の奴隷でもなければ、お客は神様でも何でもありません。わずかでも評判を損なうことを恐れるというのは、リスク管理の視点が欠けているといわざるを得ません。このような犯罪行為を働く者は少なくとも客ではありません。またそうした事情を理解できない人間も同様に客にはなりません。記事を読んでも一方的に客に非があることを理解できないような第三者は、やはり客と呼べるようなものではないでしょう。
こうしたニュースに多くの人が関心を寄せ、店に対し同情的になるのは、そうした人たちが常識ある、まっとうな消費者だからです。商売は一部の犯罪者のためではなく、このようなまっとうな消費者をお客様としてこそ成り立つものです。
商売をする上で、本当のお客と偽の客は厳密に区別すべきもの。そこをごっちゃにしてしまうのは本当のお客様に対する冒涜でもあることを認識すべきと思います。まっとうな商取引をする人より、犯罪者やその予備軍が得をするような店は違うといえるでしょう
4.取るべき手立て
そもそもこうした事件が起こらないような施策も必要です。一連の事件では予約システムが、そもそも「システム」として機能していない点が挙げられます。飲食店の予約が電話一本で済むこと自体はやむを得ないとして、その予約内容が一定金額=キャンセルのリスク負担を超える金額であれば、通常予約時とは別な対応ができてこそシステムです。
リスク管理の原則は机上の精神論やあるべき論ではなく、ドタキャンは常に「当然あるもの」という前提で対応することです。お客さんを疑うべきでないなどの無意味な精神論では何のリスク対応にもなりません。
今般事件となった店では、当日予約時間になっても現れないため電話をしたらつながらなかったと報道されています。電話は当日ではなく、事前準備が被害を生まずに済むタイミングで店からかけ直すだけでも被害を防ぐ率は上がるでしょう。
さらにはリスクが生じる高い金額の予約であれば、前払いは無理でも事前に相手先に訪問するなども有効でしょう。ここまでの手間がかけられないのであれば、やはり金額のかさむリスキーな予約は受けるべきではありません。大きな売上げにリスクがあるのは当然です。本当のお客様は、文句も言わず、しっかり既定の料金を支払ってくれるサイレントマジョリティなのです。真のお客を見分け、決して文句も言わない真のお客を追い払うようなことがないよう、運営されることが大原則といえるでしょう。