増沢 隆太 / 株式会社RMロンドンパートナーズ

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1.履歴書フォーム
履歴書を書く際、文房具店などで売っている定型フォームや、就職情報サイトのフォームをダウンロードして作成することが多いと思いますが、中途採用の転職の場合、中にはワードやエクセルで履歴書を自作する人もいます。新卒就活で自由フォームを使うのを見たことがないので、これは転職に限定して良いと思いますが、私はコンサルタントとして何千何万に及ぶ転職の履歴書や職務経歴書を見てきました。

特に外資系勤務歴のある人や、海外の大学を出た方など、英語のResume風に自由書式で作る人もいます。英文レジュメでは自由書式が普通で、海外のレジュメの書き方本なども、その構成含めて審査対象であるというようなことが書かれています。中には外資系しか行く気がないので英文レジュメ以外作らないという人にも会ったことがあります。

ではJIS準拠の定型フォームと自由形フォームはどちらが良いのでしょうか?一般論でいえば定型フォームしかありません。なぜなら採否を決定するのは通常会社の経営者ですが、採用プロセスにおいて経営者が関与するのは採否確定の最終段階だからです。いきなり一発面接で採否が決まることは、よほどの超大物ヘッドハントでもない限りまずありません。経営者の最終決済までにまず通過しなければならないのは人事等のスタッフによる選考です

2.自由形フォームの問題
自由形フォームは、「自由」であるがゆえに非常に見づらいことが多いのです。その履歴書単体としては、よくできたアピールではあるかも知れませんが、普通は候補が一人ということはないため、複数候補から絞って選んでいきます。そんな時に「履歴」が学歴順か職歴順か、和暦か西暦か、学歴・職歴の空白など、統一表記でないものは非常に比較しづらいのです。

情報が判別しにくかったらどうなるでしょう?くり返しますが、絶対欲しいというヘッドハント人材でもない限り、「選びづらい」ということはそれだけで不利になります。選考する人の都合も考えない自由なアピールは、私は単なる独りよがりだと思います。

面白みのない定型フォームは、少なくとも選考する側にとって、比較対象が容易で、知りたい情報にすぐアクセスできるというのが最大のメリットです。また私個人では、そもそも履歴書は個性やアピールを発揮する場ではないという考えです。

3.職務経歴書との関係
個性や自己アピールが不要と言っているのではありません。転職では必ず履歴書と並んで職務経歴書が必要になります。これまた新卒では書きようがありませんので転職の中途採用限定ですが、その職務経歴書こそは自由な形式で工夫が可能です。

中には職歴が多かったり、一度社会に出てから大学院に留学した私などもけっこう学歴欄の行数が必要だったりします。(外国の大学だと大学名や研究科名、学位名が長い)こんなオリジナル対応にも、職務経歴書は適しています。私は自分の担当事業やプロダクト、サービスの成果をグラフにしたり図にしたりしてアピールする場合も、こうした自由フォームを活用しました。

履歴書の目的は正確な履歴情報を伝えることにありますから、職務経歴書と明確にその使途を分けて作成する必要があります。逆に職務経歴書は表層的な所属企業名や部課名ではなく、どこでどんな仕事を、どのように展開したのかという具体的な情報を説明するものですから、事業内容によっても説明の仕方や情報は異なるのが当然で、自由書式の優位点に合致します。

4.履歴書に写真は貼るべきか、貼らないべきか
答えは「絶対貼る」です。

もちろん法的には強制されるものではないので、断固拒否する権利はどなたもあります。海外では人種や年齢で採用を左右することが禁じられているため、写真は貼ってはいけないとされる国もあります。しかし日本では写真を貼ることを強制はできないものの、貼った方が明らかに有利です。

なぜ写真を貼るべきかと言えば、自分のイメージ訴求のためです。履歴書でも職歴書でも、データによってある程度、ご自身のキャリア情報は伝えられます。しかし単に伝えることがこうした書類の目的ではなく、たくさんの候補の中から自分1人だけが選ばれることが目的です。「たった一人選ばれる」ため、そのイメージをアピールするのは当然有効だからです。当然良い印象になる写真を貼ることで、この目的は達成されます。

私は長年その都度プロのカメラマンさんに撮ってもらった写真を使ってきました。ビジュアルに自信がないからこそ、少しでも良く写ることは十分投資に値すると考えます。外国風にニッコリ笑う写真はまだメジャーではありませんが、もしご自分のインターナショナルなバックグラウンドをアピールしたいのであれば意図的に笑顔にする。逆にドメスティックな重厚さを出したい時にはくそまじめな写真を使うなど、アピール目的によって使い分けることができます。

結局履歴書問題も戦略コミュニケーションの一環として、その目的達成が何であるかという視点で考えることで、選択は絞られるといえるでしょう。