長崎県佐世保市の白岳(しらたけ)自然公園の看板犬で、スズメバチに襲われた登山客を守ろうとして自らが標的になった「ロン」は、それから1か月が経ってすっかり元気になった。

とはいえ、2度刺されると死に至る危険もあるアナフィラキシーショックの恐れもあり、ツイッター上などで気にかける声も出ている。

「勇気に感服した」などとロンを讃える声続々

「一時は、もうだめかと思うくらい弱ってましたが、もう元気です。ご心配していただき、本当にありがとうございました」。ロンがいる白岳自然公園内のレストランは2017年11月1日、店長ブログを更新してこう報告した。


白髪が増えた?(以下、白岳自然公園レストラン提供)

白岳自然公園では、9月30日、10月1日の土日に1泊で「自然に親しむ活動」の体験会を開き、ボーダーコリーのオス「ロン」も参加者らに付き添った。

自然公園の横松賢一所長(62)にJタウンネットが話を聞いたところでは、1日は、自然公園の向かい側にある白岳に希望者だけで登ったが、頂上から降りようとしたところで悲劇に襲われた。

小学生や幼児を含めた親子連れ20人が当時参加しており、午前11時ごろに一行が下山しようと花がたくさん咲いている草地に足を踏み入れると、地面付近から突然、スズメバチが襲ってきた。約50匹はいたといい、子供たちが悲鳴を上げると、ロンがハチを追い払うように駆け寄った。すると、今度は、ロンが標的になり、その間に、参加者らは避難したという。

子供4人と横松所長を含めた大人2人がハチに刺され、救急車で病院に運ばれたが、その後に回復した。ロンは、20か所以上も刺されて治療を受けたが、1週間ぐらい食欲不振や嘔吐が続いた。11月1日現在は、元気になって以前より甘えるようになったそうだ。

こんなロンの様子は、地元の長崎新聞が10月28日付ウェブ版記事で報じ、ツイッター上などでは、「ロン 凄いえらい!」「勇気に感服した」などと讃える声が相次いでいる。

「アナフィラキシーショック起きないか確認したい」

元気になったというロンだが、一方で、またハチに襲われればアナフィラキシーショックを起こすのではないかと心配する声も上がっている。



白岳自然公園の横松賢一所長は11月1日、取材に対し、こう話した。

「私も4か所刺されており、アナフィラキシーショックが起きないよう常備薬を持ち歩くことを考えています。犬については、よく分かりませんので、動物病院に行ってどうすればよいのか確認したいと考えています」

ハチは黒い色を敵だと認識するとも言われており、実際に被害に遭ったのは黒いシャツを着ていた子供らだという。ロンも、白い毛に黒い部分が半分ぐらい混じっており、そこが狙われたという。ハチに刺されて苦しんだためか、目の下の黒いところに白髪が増えたそうだ。ロンは8歳で、人間なら50代半ばぐらいに当たり、もう少し年齢が上なら危なかったとしている。

自然公園には、ロンの勇気を讃える電話やメールが相次いでいるというが、意見の1割ぐらいがお叱りの言葉だという。「事前に現地を歩いていなかったのか」「なぜ確認しなかった?」といったもので、白岳が公園内にあると誤解していたケースもあったという。

横松所長は、前日にこのルートを歩いた知人に安全を確認していたと説明する。周囲に巣はなく、草地にスズメバチがいたのは、想定外だったという。専門家に聞いたところ、秋はハチが蜜を吸いに花のあるところに降りてきていることがあると言われたというが、こんな体験は初めてだとしている。