今はELに出ていない分、1週間に1回しか試合がないので、練習するいいチャンス。ヤング・ボーイズではELやカップ戦もあって過密日程だったので、なかなかそういう時間を取ることができなかった。球際やキレを高めていけば、力強さが出てくるはずですし、この機会をうまく生かしたいですね」と本人も意気込みを新たにしていた。

 ヘントデビュー戦となった1月29日のクラブ・ブルージュ戦で直接FKを叩き込んでいきなり初ゴールを奪い、続く2月5日のズルテ・ワレゲム戦でもPKでゴールと、国内外での注目度を一気に高めた久保だが、流れの中でゴールする力をつけなければ、本人も納得できない様子。スイスでは今シーズン前半戦だけでリーグ・カップ含めて2ケタ得点を挙げている男には、点取屋の意地とプライドがある。それを新天地でも示し続けるべく、彼はいい準備をすることに徹していくという。

「スイスでも苦しい時期はありましたけど、あまり気にせずトレーニングを一生懸命やることだけを心がけてきました。いい準備をすればそれなりの結果が出る。それはここでも同じだと思います。

 ヘントはELでトッテナム相手にすごくいい試合を見せたように、もともと力があるチーム。その試合は前からここにいた攻撃陣が出ていたけど、僕ら新戦力が彼らの中に入ってどれだけフィットできるか。そこが大事になってきますよね。

 僕なんかは記事になるくらいの活躍をしないと、日本の人は気づかないと思う。最初の2試合は結果が出ただけで、全くいいプレーはしていません。その両方が出れば一番いいので、地道に頑張っていきます」

 スイス時代は自宅の壁にドイツ語の単語や文章を貼って語学を修得したほど、ストイックに自分自身に向き合ってきた久保裕也。そのひたむきさは今どきの若者とはかけ離れたものがある。ある意味、サッカーに持てるすべてを注ぎ込んでいる23歳のストライカーが、ベルギーで大きな飛躍を遂げてくれれば、日本サッカー界の世代交代もスムーズに進むはずだ。

 19日のオーストリアリーグ・SVリート戦でハットトリックを達成した南野拓実(ザルツブルク)、ドイツ・ブンデスリーガ2部で奮闘する浅野拓磨(シュトゥットガルト)とともに、リオデジャネイロ・オリンピック世代が一気に台頭してくれれば、今後への希望も見えてくる。そのけん引役である久保には、とにかく貪欲に結果にこだわってもらいたい。

文=元川悦子