名ゼリフ続出の最終回「ウルトラマンオーブ」発声可能応援上映会を希望する
『ウルトラマンオーブ』、最高の最終回だった! 驚き、悲しみ、共感し、笑い、熱くなり、納得する。わずか30分足らずとは思えない濃密な最終回「さすらいの太陽」を振り返ってみよう。
前回「逆襲の超大魔王獣」の終わり方は悲惨だった。ウルトラマンオーブは超大魔王獣マガタノロチの前に歯が立たずに完敗。倒れ込むクレナイ ガイ(石黒英雄)の前で、宿敵ジャグラス ジャグラー(青柳尊哉)はナオミ(松浦雅)を刀で一閃! SSPのジェッタ(高橋直人)とシン(ねりお弘晃)も絶体絶命で、全国のちびっこが号泣するのもむべなるかな、「これ、本当にあと1話で終わるの!?」という感じだった。
無音のオープニングとガイの「ナオミィィィッ!」という絶叫で始まった最終回「さすらいの太陽」。廃墟の中をさまようガイは、マトリョーシカ型のびっくり箱という意地の悪いジャグラーからのメッセージを受け取る。ナオミは生きていた。ガイはナオミが拉致されている第三埠頭(晴海埠頭の晴海客船ターミナル)へ急ぐ。走るガイの背後にカメラが回り込むと、マガタノオロチとビートル隊が交戦している様子が写るショットがカッコいい。
シュワシュワコーヒー(2話でバイト中のナオミが試飲会を案内していた飲み物。13話のラストでは仲間たちに振舞っていた)をディスりながらナオミに迫るジャグラー。そこへ駆けつけるガイ。マガタノオロチがゼットビートルを次々と撃墜する様子(たぶん芝浦あたり)を背景に、2人が対峙するショットが新鮮だ。
ナオミを人質に取って、ジャグラーはガイに語りかける。かつて同じ光の勢力にいた2人はたくさんの思い出を共有してきた。だが、ガイは光の戦士に選ばれ、ガイに嫉妬したジャグラーは闇に魅入られた。2人の美しい思い出は、醜い感情でかき消される。ジャグラーの目から一筋の涙がこぼれ落ちる。
「唯一永遠ものがわかるか? なぁ、ガイ。それは何もない暗黒だヨ、お前の中にも、俺の中にも、誰の中にもある闇だ。埋まらない心の穴なんだヨ」
「闇は永遠じゃない。唯一永遠のもの、それは愛だ」
「ハァァ?」
ガイへの愛憎をこじらせたジャグラーは、思い出ではなく、心の闇を分かち合うことでガイとのつながりを得ようとしていた。だが、ジャグラーにナオミは毅然と反論する。死んでもあなたを忘れない、つまり私の思い出は永遠だとガイに告げ、ジャグラーを向く。
「さぁ、やれば? 私の体は斬れても、心は斬れないから」
激昂したジャグラーが剣を振り上げた瞬間、ゼットビートルが墜落してきて大爆発! ギャー!(CM)。絶体絶命のナオミを助け出したのは……ジャグラーだった!
ナオミは光の巨人が戦って爆発を起こし、誰かに助けられる夢を見続けてきた。それはかつてガイと愛し合っていたルサールカの少女、ナターシャの記憶だ。大爆発で死んだと思われていたナターシャは、実は生きていて子孫を残していた。子孫の一人、ナオミはナターシャの記憶を受けついでいたのだ。ならば、ナターシャを助けたのは誰だったのか? それがジャグラーだった。ジャグラーはナターシャとナオミ、ガイの想い人を2回も助けたことになる。
仲睦まじいガイとナターシャの陰で、がっくりとうなだれるジャグラーがせつない。光あるところには影がある。誰かが幸せな分、誰かが不幸になることもある。ガイから愛を与えられたことがないジャグラーが、ガイに「愛だ」と言われたら、そりゃ「ハァァ?」ともなるよね……。
それでもジャグラーは命がけでナターシャを助けた。「弱いものを放っておけないことがガイの弱点」だとわかっていたはずなのに自分も同じことをしてしまった。これがジャグラーの心に残っていた光だった。過去を告白するジャグラーの襟首を掴んだガイは、ぶん殴ってすかさずハグ! なにこれ新しい!
ガイに抱きしめられたまま「ありがとう」と告げられたジャグラーは天を仰ぐ。ジャグラーの抱えてきた闇がほどけていくようだ。まさに「闇を抱いて光となる」だ。『ウルトラマンオーブ』は男同士の愛憎ドラマだった……! ジャグラーと心の決着をつけたガイは、マガタノオロチとの決着をつけるため、再び戦いに臨む!
一方、車の中に閉じ込められたままのジェッタとシンは『太平風土記』にマガタノオロチの弱点が記されていることを発見していた。マガタノオロチの元であるマガオロチが活動を止めた時、御神木の上に乗っていた。この御神木がマガタノオロチのウィークポイントとなるのだ。
12話の冒頭を見返してみると、たしかに御神木の上にマガオロチが乗る描写がある。『ウルトラマンオーブ』の伏線は本当に緻密だ。というか、伏線の回収とは気持ちのいいものであるということをよくわかって人たちによる作品だ。
それでも車に閉じ込められたままのジェッタとシンの意識は徐々に薄らいでいく。そこに突如として現れたのは、輝く黄金の光の包まれた柳沢慎吾の顔をした天使!(正体は本当に助けてきてくれた渋川一徹隊員)。
ずっとシリアスなムードの最終回なのに、突如として放り込まれる強烈なギャグに視聴者も腰を抜かすほかない。これが田口清隆監督の言う「遊び回・縦スジ回」の区別をなくした「面白いものはすべてブチこんでいくスタイル」だ。「迷ったらナナメ上をいけ!」という田口監督のスローガンを地で行くナナメ上のシーンだった。
ガイは走りながらウルトラマンオーブに変身! 従来の変身シークエンスではなく、ウルトラマンとウルトラマンティガが走っているガイと並行して低空飛行しながらフュージョンアップするという斬新な変身パターンが登場! これがめちゃくちゃカッコいい!
スペシウムゼペリオンにフュージョンアップし、名乗り口上を言いながら着陸して、八つ裂き光輪を放つスピード感! それをマガタノオロチにムシャムシャと食べられる絶望感! バーンマイトにタイプチェンジするが、やはり攻撃に効き目がない。
両者の戦いを心配そうに見つめるナオミと、力なくうなだれたままのジャグラー。ナオミはそんなジャグラーを「いい加減にしなさいよ!」と叱り飛ばす。ただ叱りつけるだけでなく、「あなたがいなかったら、私は生きていなかった」とさりげなく自信を持たせるところが上手い。「さあ、立って!」の一言は、かつて立ち上がることができない時期を過ごした人が見れば感涙ものだろう。負の感情に苛まれ、落ち込み、絶望し、恨み、こじらせ、闇のフィルターを通してでしか世界にアプローチできなかった男が、今、立ち上がるのだ。
苦戦するオーブオリジンの援護に現れたのは……無限魔人ジャグラス ジャグラー! 光の戦士と闇の戦士がついに共闘! 熱い! かつて一緒に戦っていたこともあって、コンビネーションもバッチリだ。しかし、それでもマガタノオロチは強い……。
ここで立ち上がったのがビートル隊だ。ジェッタとシンからマガタノオロチの弱点を聞いた渋川隊員は、菅沼長官(佐野史郎)に援護を要請する。「勝算はあるのか?」と問われた渋川は一言。
「情報特務隊隊長、渋川一徹が全責任を負います!」
カッコいい! 一徹さん、実は偉い人だった! そして、ただの一般人のSSPの情報と、これまでほとんど役に立たなかったビートル隊の官民合同攻撃で突破口が開けるという展開がまた熱い。
まだ熱い展開は続く。マガタノオロチの弱点をクラッシュギャルズばり(古い)のダブルの正拳突きで攻撃したオーブ&ジャグラー。たしかなダメージを与えるが、ジャグラーがマガタノオロチの触手にとらわれてしまった!
「俺と一緒に撃て! 撃てーッ! ウルトラマンオーブ!」
『ドラゴンボール』に登場するピッコロの魔貫光殺砲を思い出した人も多いかもしれないが、筆者が思い出したのは橋本真也と小川直也のOH砲の必殺技「俺ごと刈れ」だ。
「諸先輩方、光の力、お借りします!」
ウルトラフュージョンカードを投げると、ウルトラマン、ウルトラマンティガ、ウルトラマンタロウ、ウルトラマンメビウス、ウルトラマンジャック、ウルトラマンゼロ、ゾフィー、ウルトラマンベリアルの8人のウルトラ戦士が勢ぞろい! ウルトラマンオーブと合わせて9人の合体光線を発射! ついにマガタノオロチを粉砕! やっぱりウルトラ兄弟合体光線はウルトラシリーズファンの夢だよね……。ベリアル閣下が宿敵ウルトラマンゼロと並んで光線を放っているのも感慨深い。
物語はついにエンディングを迎える。夕陽に光る海を背景に語り合うガイとナオミ。このシーンの元ネタは、『ウルトラセブン』最終回でダンがアンヌに正体を明かすシーンだろう。
ナオミはガイの正体がウルトラマンオーブであると気がついていた。「星から来た人」という表現が慎ましくて素敵。しかし、ガイはナオミの元を去っていく。風来坊ヒーロー・ガイの旅はまだ終わらないのだ。「私も連れて行って!」と『ルパン三世 カリオストロの城』のクラリスのようにすがるナオミだが、ガイはさらりとかわす。
「バカ言うなよ、俺は銀河の流れ星だぜ」
輝く夕陽の中、オーブニカが奏でるメロディーとともに去っていくガイ。アニメ『銀河旋風ブライガー』EDテーマ「さすらいキッド」の歌詞は「流れ星には明日はないさ 今日もひとり 夕陽に背をむけ 果てしなく遠く遠くゆく」だが、まるでガイそのものだ。
去りゆくガイを見つめるジャグラー。偏頭痛がないということは、何かが彼の中で変わったのだろう。ジェッタとシン、渋川隊長がナオミのもとにやってくるが、すでにガイは去った後だった。一徹さんは夕陽に向かって「あばよ!」と一言。
「きっとまた会える。だって、地球は丸いんだもの」
ナオミのセリフは、1話でガイが言った「どうせ地球は丸いんだ。またそのうちどこかで会えるだろう」を受けたもの。最初からゴールを決め、伏線を張り巡らせて全編を構成したという『ウルトラマンオーブ』らしい、きれいな終わり方だ。
ここでオープニングテーマ「オーブの祈り」が流れて、タイトル「さすらいの太陽」が出る。影絵はガイさん! 決まった!
ガイは流れ者の風来坊ヒーローだ。かつて傷つけてしまった人がいて、辛い思いを抱えながらさすらい歩く。「さすらいながら傷つきながら 明日の太陽をさがしているの」とは、1970年に放映されていたアニメ『さすらいの太陽』の主題歌の一節だ。流れ者は、自分がかかわると誰かを不幸にしてしまうと思いながら、それでも弱っている人を見ると放っておけない。
「誰かを守りたいと思う心が、俺に限界を超えた力を与えてくれる!」
という23話のセリフの通りである。ガイは自分が抱える闇とうまく付き合いながら、誰かを助けて、また新しい街へと旅立つことになる。
「誰の心にも闇がある。闇があるから光がある。闇を抱えていない人間に世界を照らすことはできない」
これは19話でのガイのセリフだ。光と闇の相克……ではなく、光と闇の共生が『ウルトラマンオーブ』の大きなテーマだった。
燃えに燃えた最終回、エンディングで流れる主題歌「オーブの祈り」のラスト「2つのパワーで 戦えウルトラマンオーブ!」と水木一郎アニキ&ボイジャーが吠えたところで、光の戦士ウルトラマンオーブと闇の戦士ジャグラス ジャグラーの2人が映し出される。このとき、多くの視聴者があらためて深く納得したと思う。ああ、おれたちも自分の光と闇の2つのパワーで戦っていかなきゃいけないんだな、と。
タイプチェンジの使い方が今ひとつ上手くいっていなかったところとか、SSPの3人の掘り下げがあまりなかったところとか、まったく不満がなかったわけではないけれど、『ウルトラマンオーブ』は本当に楽しいシリーズだった。名ゼリフもたくさんあるし、いつか発声可能上映会とかやってくれないかなぁ。
ありがとう、オーブ! また会える日まで! って、明日からAmazonプライムで『ウルトラマンオーブTHE ORIGIN SAGA』が始まるんだった!
(大山くまお)
ジャグラーの涙! その理由とは……?
前回「逆襲の超大魔王獣」の終わり方は悲惨だった。ウルトラマンオーブは超大魔王獣マガタノロチの前に歯が立たずに完敗。倒れ込むクレナイ ガイ(石黒英雄)の前で、宿敵ジャグラス ジャグラー(青柳尊哉)はナオミ(松浦雅)を刀で一閃! SSPのジェッタ(高橋直人)とシン(ねりお弘晃)も絶体絶命で、全国のちびっこが号泣するのもむべなるかな、「これ、本当にあと1話で終わるの!?」という感じだった。
シュワシュワコーヒー(2話でバイト中のナオミが試飲会を案内していた飲み物。13話のラストでは仲間たちに振舞っていた)をディスりながらナオミに迫るジャグラー。そこへ駆けつけるガイ。マガタノオロチがゼットビートルを次々と撃墜する様子(たぶん芝浦あたり)を背景に、2人が対峙するショットが新鮮だ。
ナオミを人質に取って、ジャグラーはガイに語りかける。かつて同じ光の勢力にいた2人はたくさんの思い出を共有してきた。だが、ガイは光の戦士に選ばれ、ガイに嫉妬したジャグラーは闇に魅入られた。2人の美しい思い出は、醜い感情でかき消される。ジャグラーの目から一筋の涙がこぼれ落ちる。
「唯一永遠ものがわかるか? なぁ、ガイ。それは何もない暗黒だヨ、お前の中にも、俺の中にも、誰の中にもある闇だ。埋まらない心の穴なんだヨ」
「闇は永遠じゃない。唯一永遠のもの、それは愛だ」
「ハァァ?」
ガイへの愛憎をこじらせたジャグラーは、思い出ではなく、心の闇を分かち合うことでガイとのつながりを得ようとしていた。だが、ジャグラーにナオミは毅然と反論する。死んでもあなたを忘れない、つまり私の思い出は永遠だとガイに告げ、ジャグラーを向く。
「さぁ、やれば? 私の体は斬れても、心は斬れないから」
激昂したジャグラーが剣を振り上げた瞬間、ゼットビートルが墜落してきて大爆発! ギャー!(CM)。絶体絶命のナオミを助け出したのは……ジャグラーだった!
「ハグの日」を超えた「殴って抱きしめる」
ナオミは光の巨人が戦って爆発を起こし、誰かに助けられる夢を見続けてきた。それはかつてガイと愛し合っていたルサールカの少女、ナターシャの記憶だ。大爆発で死んだと思われていたナターシャは、実は生きていて子孫を残していた。子孫の一人、ナオミはナターシャの記憶を受けついでいたのだ。ならば、ナターシャを助けたのは誰だったのか? それがジャグラーだった。ジャグラーはナターシャとナオミ、ガイの想い人を2回も助けたことになる。
仲睦まじいガイとナターシャの陰で、がっくりとうなだれるジャグラーがせつない。光あるところには影がある。誰かが幸せな分、誰かが不幸になることもある。ガイから愛を与えられたことがないジャグラーが、ガイに「愛だ」と言われたら、そりゃ「ハァァ?」ともなるよね……。
それでもジャグラーは命がけでナターシャを助けた。「弱いものを放っておけないことがガイの弱点」だとわかっていたはずなのに自分も同じことをしてしまった。これがジャグラーの心に残っていた光だった。過去を告白するジャグラーの襟首を掴んだガイは、ぶん殴ってすかさずハグ! なにこれ新しい!
ガイに抱きしめられたまま「ありがとう」と告げられたジャグラーは天を仰ぐ。ジャグラーの抱えてきた闇がほどけていくようだ。まさに「闇を抱いて光となる」だ。『ウルトラマンオーブ』は男同士の愛憎ドラマだった……! ジャグラーと心の決着をつけたガイは、マガタノオロチとの決着をつけるため、再び戦いに臨む!
柳沢慎吾天使、降臨!
一方、車の中に閉じ込められたままのジェッタとシンは『太平風土記』にマガタノオロチの弱点が記されていることを発見していた。マガタノオロチの元であるマガオロチが活動を止めた時、御神木の上に乗っていた。この御神木がマガタノオロチのウィークポイントとなるのだ。
12話の冒頭を見返してみると、たしかに御神木の上にマガオロチが乗る描写がある。『ウルトラマンオーブ』の伏線は本当に緻密だ。というか、伏線の回収とは気持ちのいいものであるということをよくわかって人たちによる作品だ。
それでも車に閉じ込められたままのジェッタとシンの意識は徐々に薄らいでいく。そこに突如として現れたのは、輝く黄金の光の包まれた柳沢慎吾の顔をした天使!(正体は本当に助けてきてくれた渋川一徹隊員)。
ずっとシリアスなムードの最終回なのに、突如として放り込まれる強烈なギャグに視聴者も腰を抜かすほかない。これが田口清隆監督の言う「遊び回・縦スジ回」の区別をなくした「面白いものはすべてブチこんでいくスタイル」だ。「迷ったらナナメ上をいけ!」という田口監督のスローガンを地で行くナナメ上のシーンだった。
まさかの共闘、オーブとジャグラー!
ガイは走りながらウルトラマンオーブに変身! 従来の変身シークエンスではなく、ウルトラマンとウルトラマンティガが走っているガイと並行して低空飛行しながらフュージョンアップするという斬新な変身パターンが登場! これがめちゃくちゃカッコいい!
スペシウムゼペリオンにフュージョンアップし、名乗り口上を言いながら着陸して、八つ裂き光輪を放つスピード感! それをマガタノオロチにムシャムシャと食べられる絶望感! バーンマイトにタイプチェンジするが、やはり攻撃に効き目がない。
両者の戦いを心配そうに見つめるナオミと、力なくうなだれたままのジャグラー。ナオミはそんなジャグラーを「いい加減にしなさいよ!」と叱り飛ばす。ただ叱りつけるだけでなく、「あなたがいなかったら、私は生きていなかった」とさりげなく自信を持たせるところが上手い。「さあ、立って!」の一言は、かつて立ち上がることができない時期を過ごした人が見れば感涙ものだろう。負の感情に苛まれ、落ち込み、絶望し、恨み、こじらせ、闇のフィルターを通してでしか世界にアプローチできなかった男が、今、立ち上がるのだ。
苦戦するオーブオリジンの援護に現れたのは……無限魔人ジャグラス ジャグラー! 光の戦士と闇の戦士がついに共闘! 熱い! かつて一緒に戦っていたこともあって、コンビネーションもバッチリだ。しかし、それでもマガタノオロチは強い……。
炸裂! 9人のウルトラ戦士合体光線!
ここで立ち上がったのがビートル隊だ。ジェッタとシンからマガタノオロチの弱点を聞いた渋川隊員は、菅沼長官(佐野史郎)に援護を要請する。「勝算はあるのか?」と問われた渋川は一言。
「情報特務隊隊長、渋川一徹が全責任を負います!」
カッコいい! 一徹さん、実は偉い人だった! そして、ただの一般人のSSPの情報と、これまでほとんど役に立たなかったビートル隊の官民合同攻撃で突破口が開けるという展開がまた熱い。
まだ熱い展開は続く。マガタノオロチの弱点をクラッシュギャルズばり(古い)のダブルの正拳突きで攻撃したオーブ&ジャグラー。たしかなダメージを与えるが、ジャグラーがマガタノオロチの触手にとらわれてしまった!
「俺と一緒に撃て! 撃てーッ! ウルトラマンオーブ!」
『ドラゴンボール』に登場するピッコロの魔貫光殺砲を思い出した人も多いかもしれないが、筆者が思い出したのは橋本真也と小川直也のOH砲の必殺技「俺ごと刈れ」だ。
「諸先輩方、光の力、お借りします!」
ウルトラフュージョンカードを投げると、ウルトラマン、ウルトラマンティガ、ウルトラマンタロウ、ウルトラマンメビウス、ウルトラマンジャック、ウルトラマンゼロ、ゾフィー、ウルトラマンベリアルの8人のウルトラ戦士が勢ぞろい! ウルトラマンオーブと合わせて9人の合体光線を発射! ついにマガタノオロチを粉砕! やっぱりウルトラ兄弟合体光線はウルトラシリーズファンの夢だよね……。ベリアル閣下が宿敵ウルトラマンゼロと並んで光線を放っているのも感慨深い。
俺は銀河の流れ星
物語はついにエンディングを迎える。夕陽に光る海を背景に語り合うガイとナオミ。このシーンの元ネタは、『ウルトラセブン』最終回でダンがアンヌに正体を明かすシーンだろう。
ナオミはガイの正体がウルトラマンオーブであると気がついていた。「星から来た人」という表現が慎ましくて素敵。しかし、ガイはナオミの元を去っていく。風来坊ヒーロー・ガイの旅はまだ終わらないのだ。「私も連れて行って!」と『ルパン三世 カリオストロの城』のクラリスのようにすがるナオミだが、ガイはさらりとかわす。
「バカ言うなよ、俺は銀河の流れ星だぜ」
輝く夕陽の中、オーブニカが奏でるメロディーとともに去っていくガイ。アニメ『銀河旋風ブライガー』EDテーマ「さすらいキッド」の歌詞は「流れ星には明日はないさ 今日もひとり 夕陽に背をむけ 果てしなく遠く遠くゆく」だが、まるでガイそのものだ。
去りゆくガイを見つめるジャグラー。偏頭痛がないということは、何かが彼の中で変わったのだろう。ジェッタとシン、渋川隊長がナオミのもとにやってくるが、すでにガイは去った後だった。一徹さんは夕陽に向かって「あばよ!」と一言。
「きっとまた会える。だって、地球は丸いんだもの」
ナオミのセリフは、1話でガイが言った「どうせ地球は丸いんだ。またそのうちどこかで会えるだろう」を受けたもの。最初からゴールを決め、伏線を張り巡らせて全編を構成したという『ウルトラマンオーブ』らしい、きれいな終わり方だ。
ここでオープニングテーマ「オーブの祈り」が流れて、タイトル「さすらいの太陽」が出る。影絵はガイさん! 決まった!
光と闇、2つの力で戦え!
ガイは流れ者の風来坊ヒーローだ。かつて傷つけてしまった人がいて、辛い思いを抱えながらさすらい歩く。「さすらいながら傷つきながら 明日の太陽をさがしているの」とは、1970年に放映されていたアニメ『さすらいの太陽』の主題歌の一節だ。流れ者は、自分がかかわると誰かを不幸にしてしまうと思いながら、それでも弱っている人を見ると放っておけない。
「誰かを守りたいと思う心が、俺に限界を超えた力を与えてくれる!」
という23話のセリフの通りである。ガイは自分が抱える闇とうまく付き合いながら、誰かを助けて、また新しい街へと旅立つことになる。
「誰の心にも闇がある。闇があるから光がある。闇を抱えていない人間に世界を照らすことはできない」
これは19話でのガイのセリフだ。光と闇の相克……ではなく、光と闇の共生が『ウルトラマンオーブ』の大きなテーマだった。
燃えに燃えた最終回、エンディングで流れる主題歌「オーブの祈り」のラスト「2つのパワーで 戦えウルトラマンオーブ!」と水木一郎アニキ&ボイジャーが吠えたところで、光の戦士ウルトラマンオーブと闇の戦士ジャグラス ジャグラーの2人が映し出される。このとき、多くの視聴者があらためて深く納得したと思う。ああ、おれたちも自分の光と闇の2つのパワーで戦っていかなきゃいけないんだな、と。
タイプチェンジの使い方が今ひとつ上手くいっていなかったところとか、SSPの3人の掘り下げがあまりなかったところとか、まったく不満がなかったわけではないけれど、『ウルトラマンオーブ』は本当に楽しいシリーズだった。名ゼリフもたくさんあるし、いつか発声可能上映会とかやってくれないかなぁ。
ありがとう、オーブ! また会える日まで! って、明日からAmazonプライムで『ウルトラマンオーブTHE ORIGIN SAGA』が始まるんだった!
(大山くまお)