最終回「逃げるは恥だが役に立つ」冷静に考えるとなかなかにひどいんだが
『Kiss』(講談社)で連載中の人気マンガが原作のTBS系ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』が21日最終回を迎えた。前回の梅原(成田凌)の「生きて会えるんだから」という意味深発言。生き死に問題を匂わせて少し強引に引きを作った感じはしたが、沼田(古田新太)との対面シーンの笑顔はすごい良かった。
参考→絶好調ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』は原作でも星野源=津崎がヒロインだ
「逃げるは恥だが役に立つ」には、悪いヤツが登場しない。裏切りもなければ、別れもない。誰も死なないし、大病にもかからない。不可抗力の交通事故も起こらない。簡単に言うと、“嫌なこと”が起こらない。
悪役や嫌な出来事は、物語の山場を作りやすい。悪をくじけば爽快感が生まれるし、病気や人の死を乗り越えれば感動が生まれる。
この「逃げ恥」にももちろん山場は存在する。みくり(新垣結衣)が実家に帰ってしまったり、津崎(星野源)のプロポーズを断ったり、この話の根幹である契約結婚というのも大きな山場の一つだ。
全ての事件は、登場人物の弱さから起きている。このドラマは人間の弱さが人を傷つけているのだ。
例えば、みくりが実家に帰ってしまったシーン。津崎(星野源)の弱さが、みくりの夜の誘いを断ったことから起きてしまった事件だ。他にも百合(石田ゆり子)の臆病さが風見(大谷亮平)を傷つけている。
その“弱さ”というのが、冷静に考えるとなかなかにひどい。津崎は自分のプライドの為に思いっきりみくりに恥をかかせているし、みくりも自分の都合や勝手な正義感を人に押し付けるきらいがある。風見は、その鉄壁の防御とも言える超理論で初登場時にとんでもない彼女のフリ方をしているし、百合は凝り固まった思考で当たり前のようにイケメン差別をする。沼田(古田新太)なんて、自分の単純な好奇心で2人の寝室を覗くわ、人の詮索ばかりするわでやりたい放題だ。
だが、このキャラクター達の中で特定の誰かが嫌いという視聴者はほとんどいないだろう。役者陣の演技と脚本の妙で全てが“人間味”という言葉で全て上手く収まり、かわいらしく見えてしまうのだ。むしろ“ダメなところが良い”という次元にまで達している。このドラマ全体を包むハッピー感を生んでいるように思う。
そしてそのそれぞれの弱さという個性が、絶食系男子、就職難、家事という労働について、独身貴族による少子化、という社会問題と直結している。これをマイルドに見せているのが、必ず毎話差し込まれるパロディシーンだったり、脚本の妙だったり、役者陣のポップな演技だ。こう考えると良くできたドラマというのは、全ての要素がガッチリ上手くハマッているという事がわかる。
みくりはやりがいのある仕事をすることが出来た。百合と風見もくっついたし、まさかの沼田も幸せを掴もうとしている。永遠に会えないと思われた日野(藤井隆)とみくりも会えた。誰も考えていなかった百合の部下の柚(山賀琴子)とバーのマスター(古館寛治)まで良い感じになっている。全ての伏線を回収し、みんなハッピーの最終回となった。
しかし、みくりと津崎の着地点は「二人で一緒になっても必ず面倒なことが起きる。だから模索は続いていく」というもの。この理論でいくと、今回丸く収まった全ての出来事に、どんな事件が起きてもおかしくないということだ。この続編やるぞ感はすごい。
何より、籍を入れていないので、普通の結婚なんか契約結婚なのかわからないまま終わらせている所が続編をやるつもりの証拠だろう。サラっと流した津崎のリストラ問題もある。新しい職場での出来事でも話は作れるし、そこが遠くになってしまい、契約結婚なのに別居というパターンもある。みくりの仕事が忙しくなり、寂しがる津崎を描くことも出来る。
みくりの最後の「火曜日から始めよう」というセリフ。続編は、映画ではなくドラマなのだろうか?どちらにせよ、「逃げ恥」の新作を勝手に今から楽しみにしていよう。
(沢野奈津夫)
参考→絶好調ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』は原作でも星野源=津崎がヒロインだ
悪いヤツが居なくても事件は起こる
「逃げるは恥だが役に立つ」には、悪いヤツが登場しない。裏切りもなければ、別れもない。誰も死なないし、大病にもかからない。不可抗力の交通事故も起こらない。簡単に言うと、“嫌なこと”が起こらない。
この「逃げ恥」にももちろん山場は存在する。みくり(新垣結衣)が実家に帰ってしまったり、津崎(星野源)のプロポーズを断ったり、この話の根幹である契約結婚というのも大きな山場の一つだ。
全ての事件は、登場人物の弱さから起きている。このドラマは人間の弱さが人を傷つけているのだ。
例えば、みくりが実家に帰ってしまったシーン。津崎(星野源)の弱さが、みくりの夜の誘いを断ったことから起きてしまった事件だ。他にも百合(石田ゆり子)の臆病さが風見(大谷亮平)を傷つけている。
登場人物がよく考えるとひどいことしてる
その“弱さ”というのが、冷静に考えるとなかなかにひどい。津崎は自分のプライドの為に思いっきりみくりに恥をかかせているし、みくりも自分の都合や勝手な正義感を人に押し付けるきらいがある。風見は、その鉄壁の防御とも言える超理論で初登場時にとんでもない彼女のフリ方をしているし、百合は凝り固まった思考で当たり前のようにイケメン差別をする。沼田(古田新太)なんて、自分の単純な好奇心で2人の寝室を覗くわ、人の詮索ばかりするわでやりたい放題だ。
だが、このキャラクター達の中で特定の誰かが嫌いという視聴者はほとんどいないだろう。役者陣の演技と脚本の妙で全てが“人間味”という言葉で全て上手く収まり、かわいらしく見えてしまうのだ。むしろ“ダメなところが良い”という次元にまで達している。このドラマ全体を包むハッピー感を生んでいるように思う。
そしてそのそれぞれの弱さという個性が、絶食系男子、就職難、家事という労働について、独身貴族による少子化、という社会問題と直結している。これをマイルドに見せているのが、必ず毎話差し込まれるパロディシーンだったり、脚本の妙だったり、役者陣のポップな演技だ。こう考えると良くできたドラマというのは、全ての要素がガッチリ上手くハマッているという事がわかる。
続編やるぞ感
みくりはやりがいのある仕事をすることが出来た。百合と風見もくっついたし、まさかの沼田も幸せを掴もうとしている。永遠に会えないと思われた日野(藤井隆)とみくりも会えた。誰も考えていなかった百合の部下の柚(山賀琴子)とバーのマスター(古館寛治)まで良い感じになっている。全ての伏線を回収し、みんなハッピーの最終回となった。
しかし、みくりと津崎の着地点は「二人で一緒になっても必ず面倒なことが起きる。だから模索は続いていく」というもの。この理論でいくと、今回丸く収まった全ての出来事に、どんな事件が起きてもおかしくないということだ。この続編やるぞ感はすごい。
何より、籍を入れていないので、普通の結婚なんか契約結婚なのかわからないまま終わらせている所が続編をやるつもりの証拠だろう。サラっと流した津崎のリストラ問題もある。新しい職場での出来事でも話は作れるし、そこが遠くになってしまい、契約結婚なのに別居というパターンもある。みくりの仕事が忙しくなり、寂しがる津崎を描くことも出来る。
みくりの最後の「火曜日から始めよう」というセリフ。続編は、映画ではなくドラマなのだろうか?どちらにせよ、「逃げ恥」の新作を勝手に今から楽しみにしていよう。
(沢野奈津夫)