「べっぴんさん」64話。三谷幸喜が面白すぎるでしょ

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連続テレビ小説「べっぴんさん」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)第11週「やるべきこと」第64回 12月15日(木)放送より。 
脚本:渡辺千穂 演出:梛川善郎


64話はこんな話


大急での支店開店を前日に控え、ブースのディスプレーをひとり残って修正するすみれ(芳根京子)。時間を忘れるほど熱中して夜になり店内に閉じ込められてしまった。いっこうに帰ってこないすみれを心配する紀夫(永山絢斗)は、朝になってようやく帰って来たすみれを殴ってしまう。

似たもの夫婦


中古のミシンを2台、男会が安く手に入れてきて、妻たちに感謝される。
紀夫の「やあ、うん」は昭和の名優・笠智衆(りゅう・ちしゅう)の独特の返事を意識したものに違いない。12月3日「あさイチ」で永山は笠智衆を尊敬している話をしていたのだ。
紀夫が「やあ、うん」なら、妻のすみれは、「あ」「ああ」を多発。キアリスのディスプレーをひとり考えているとき「あ」「ああ」と「はい」「はいはいはい」で感情をすべて表現していた。こういうとき、ドラマは独白させがちだが、余計な台詞いっさいなしですばらしかった。

めっちゃ深刻なんだけど笑いも


「あ」と「はい」のみですみれが仕事していたら閉じ込められて電気も消されてしまった頃、紀夫は生きた心地がしない様子で探し回っている。大急にも行ってみたら、と思うんだが・・・。
で、朝になって、布をかぶって寝ているところ、警備の人(海原はるか)がやって来て、すみれが、忠さん(曾我廼家文童)の十八番、「ここ(は)どこ」「あんた(私は)誰?」をやるのだ。
さらに警備員は「朝方ですよ」と顔を大きく左右に振って頭髪を動かす。これは海原はるかの頭髪ネタ。
だがしかし、こういう笑わせどころがすべてやりっぱなし。これまでもその調子で、なんか、なんかなあ・・・とずっと思っていたが、そうか、「べっぴんさん」にはツッコミなし、ボケのみで笑いをさせようと高度なことに挑んでいる。いや、ツッコミは全面的に視聴者に委ねて、テレビとお茶の間(死語?)との連動によって笑いを完成させようとしている。なんという偉業。

そこに、三谷幸喜が


朝帰りしたすみれの頬を思わず殴った紀夫はそのまま家の中に入ってしまい、すみれは玄関で立ち尽くしたまま。ずーんと重い終わりの次にはじまった「あさイチ」で、ゲストの三谷幸喜が頬を押さえて、ばっちりカメラ目線で登場。あとで、頬の位置が逆と指摘されるのだが、タイミングはばっちりで大きな笑いを生んだ。三谷のおかげで、「べっぴんさん」も笑っていいんだという可能性が明確になったといえるだろう。

百合のことも気になるが


どうやら妊娠したらしい百合(蓮佛美沙子)だが、潔(高良健吾)は仕事をする百合が好きだと思って、悩んでしまう。すみれと百合、姉妹ともども仕事と家庭の両立という朝ドラ定番の問題に突入したが、今日のところは海原はるかと三谷幸喜、二大喜劇人にもっていかれた。

あの〜、余計なお世話だが、ツッコミ(というガイドを本編中に)入れたほうがいいと思う。
(木俣冬)