「ジョジョの奇妙な冒険」主人公チーム、殺人鬼の正体を探っただけで全滅

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まともに飲んでもらえないジョジョのドリンクたち


ループする時間の中で何回も淹れてもらっているのに、吉良吉影が一回しか飲めなかったしのぶのコーヒー。お茶は香りと喉越しを楽しむ平穏の象徴……ということで、マトモに飲まれたほうが少なそうなジョジョ世界におけるお茶などのドリンク。


優雅な飲み物であるワインも、第一部のツェペリさんにかかれば相手の生命の振動を感じ取る「波紋探知機」扱いだった。「北風がバイキングを作った」ということでジョナサンは一滴もこぼさずにゾンビを倒し、グラスワインは飲まれないまま。

強く印象に残るのが、柱の男・サンタナを調べるための研究施設でのコーヒー。ちょっと目を離したスキに、サンタナが消えてしまった……ガタガタ震える研究員はコーヒーを飲もうとしたところ、シュトロハイムが「飲んどる場合かーッ!」ともっともすぎるツッコミ。

第三部のオインゴは、ジョースター一行を紅茶でもてなそうとした。ただし、毒入り。弟ボインゴのスタンド「トト神」の予言を信じて、途中でコーラに注文を変えられたり他の店に移動されそうになったが(その店はポルナレフのポイ捨てしたタバコで火事)、口に含ませるまではなんとかなった。が、犬のイギーが客のケーキを盗み食いする騒ぎに、ジョセフ達は紅茶をブーッ!

そして第五部のアバッキオがジョルノに淹れたお茶、通称「アバ茶」はファンの間では語りぐさ。どんなエゲツなさかというと……第五部がアニメ化されることを信じて、そのときに語ろう!

ただの小学生がたった一人で挑むループ無理ゲー


吉良吉影について探りを入れられたことでバイツァ・ダストの「スイッチ」が入り、露伴先生を爆死させてしまった川尻早人。誰にも助けを求められない孤独な戦いが、ふたたび始まる……。

「そうかでかしたぞ早人。お前はあの邪魔くさい岸辺露伴から私を守ってくれたのか」

勝ち誇った吉良はいっそうハイになり、妻しのぶに「お出かけのキスをしてもいいかな?」と迫る。正体を知ってる早人にとっては、第一部ディオがエリナの唇を強引に奪った「ズキュウウウウウウン」に匹敵する屈辱ものだ。むかっ腹を立てた早人が壊したポットセットだが、これもまた「運命」なので避けようがない。可哀想なポット!

(ママ…あいつは人間じゃあないんだ。僕があいつのことを誰かに喋ればその人をふっ飛ばして朝が繰り返される)

そう決意する早人の独白は、もはやループものゲームの主人公。しかし、ループものは「何度やり直しても上手く行かない」からループするのだ。

「運命」の裏をかくため、ドアを避けて窓から出ていく早人。ドアの横で早人の帽子を持って出待ちしながらスルーされるラスボス・吉良の絵面がかなりシュールだ。

前回より早めに家を出て、車から出てきた「あの人」を先に見つける早人。吉良を倒せるのは岸辺露伴のような能力を持つものだけ、しかし露伴に会わないでヤツのことを伝えなくっちゃあダメだ……。が、いきなり「本」に変わってしまう。

これは前の朝に露伴にされた能力! 露伴は僕を見てもいないのに!と慄く早人。その後ろから近づいて帽子をかぶせ「一度起こった運命の結果は変わらないんだよ」と宣告する吉良だった。

バイツァ・ダスト仕様の特殊オープニング(ジョジョ終盤恒例)


そして今回のオープニング、バイツァ・ダスト版の特殊仕様だぁぁぁーッ!!! 今までの通常オープニングの時間がバイツァ・ダストのように遡り、キラー・クィーンの腕を持つ吉良がスイッチを遅そうとしたところでエンド(歌詞は2番)。

第三部の終盤でも、いつもはスタープラチナがオラオラして締めになるところにDIOが「時止め」で割って入り、ゆっくりと承太郎の背後に回り込んでオラオラオラVS無駄無駄無駄のラッシュ合戦するアレンジがあったし、ジョジョ愛を波紋疾走(オーバードライブ)させるスタッフに感謝の念でいっぱいだ。しかしこのままだと、吉良が勝利エンドになっちゃう!

頼もしい「味方」と出会ってしまった絶望感


ポットセットは早人が割らなくても必ず割れ、前の朝に本にされたものは必ず本になる。細部に違いはあっても、巨視的に見れば決まった結果に収束する。そんな「世界線」理論は、ループゲームをやった人なら耳慣れた概念のはず。しかし、まだループゲームが普及してなかった時代に「攻略」を強いられる早人だった。

「見ろ。彼は今自分がなぜ死んでいくのかさえも気付いていない。「もう漫画が描けないな」なんて考えているのかな」

早人の祈りも虚しく、いきなり爆死する露伴先生。今回は早人にさえ会ってなくて、なぜ死ぬのか本人に全くわからないのがバイツァ・ダストの恐ろしさ。振り返ってはいけない小道で、コナゴナに砕け散る露伴先生の魂を「そんなー!!」と見送る鈴美さんが哀しすぎる。

ここで、もしバイツァ・ダストを解除すれば露伴先生の死は確定し、もはや繰り返すことのない「事実」となる。が、他の仲間も来るはずと踏んだ吉良はあえて解除せず、早人を「地雷」のように利用することを選んだ。

「まぁバイツァ・ダストはお前に危害を加えるわけではないから、楽しい少年時代を送ってくれよ」

そんなことを言われて、楽しく過ごせるわけ無いだろ! 吉良は実際、信じられない強運に恵まれている。すでに「川尻早人と川尻浩作」の繋がりは掴まれ、遅かれ早かれ身元バレしてたはず。なのに、わざわざ露伴先生は早人という「爆弾」に会いに来てくれたのだから。

「あのー。ちょっと聞きたいんだけど今何時かわかる? 僕の時計調子悪くて…」

早人に時間を尋ねてきたのは康一くん。前回のループで、露伴先生が手を伸ばせば届きそうな距離にいたものね。康一くんは身長を低めに設定されているために、早人と同学年の小学生のようだ。

スタンドが見えない早人だが、車のドア開けっ放し、キー挿しっぱなしの車の近くで「露伴先生どこ行ったんだろう…」とやり出されたら、嫌でも「同じ能力」を持つ仲間だと気づく。もし自分が川尻早人だと分かって、質問を始められたらおしまいだ。そこで急いで逃げようとしたところ、ガラの悪そうな高校生たちにぶつかってしまう早人。

「おっと悪いな。寝ボーしたんで待ち合わせに遅れちまったもんでよ〜」

ぶつかったのが仗助で、「お前どっかで見た顔だな。どこだっけ?」と気づいたのが億泰だ。承太郎や康一くんを含めて4人、集まってしまった。この上なく頼もしい味方だというのに「一網打尽」という言葉が浮かぶ絶望感……。

「あの顔の角度…確かにどこかで見たぞ…どこだっけな〜」

写真を手にしながらボケ続ける康一くんを見かねたのか、「康一君。ランドセルの名前を見ろ」と助け舟(?)を出す承太郎。やれやれ、気付くのが遅いぜ……と視聴者の心の声を代弁するようなアニメオリジナルセリフ付きだ。

探し求めていた吉良を倒せるもの、「岸辺露伴のような能力を持つもの」に巡り合ったというのに、まさに彼らの命を守るために逃げ出すしかない残酷さ。小学生に「自分が爆殺されるより辛い重荷」を背負わせるとは、原作者の荒木先生は人が悪すぎる……!

主人公チーム、「正体を探った」というだけでまさかの全滅!


7:31 起床
7:55 天気予報が始まる
8:05 吉良 家を出る
8:24 早人 露伴に会う
8:27 ペプシの看板に雷が落ちる
8:30 岸辺露伴 爆死

アイキャッチは露伴先生が爆死に至るまでのタイムスケジュール。ますますループゲームじみてきたが、「爆死」から「起床」まで、きっちり1時間巻き戻されていてることも織り込み済みの細かさだ。

(だ…駄目だ…質問しないで…あなた達まで死んでしまったら誰があいつを倒せるんだ!)

そんな早人の心の叫びはつゆ知らず「この写真の事が聞きたいんだが」「ビデオを撮ってる理由を知りたいんだ…」と質問攻めする4人。警告そのものが「スイッチ」になるため言葉にできない早人は「急に鼻血がいっぱい出てきた!僕失礼します!」とエスケープしようとするが、仗助がブロック。

すかさず早人は腕時計を顔に思い切り叩きつけて、本当に鼻血を出す。吉良吉影、普通の(もはやそうでもないが)小学生にどんな覚悟を決めさせてるんだ……と必死の戦いに涙が出てくる。

「鼻血なんて出てないぜ」

クレイジー・ダイヤモンドの超スピードで、たちまち治癒する仗助の優しさ。早人の命懸けの決断を叩き潰し、自分たちを死のジェットコースターに載せる「優しさ」だ。生まれ育った地元・杜王町だけに、ぶどうヶ丘小学校までの近さも知ってる仗助に対しては「遅刻しますから」という言い訳も通用しない。

「ちょっとした質問なんだ。この写真についてなんだ。なんでもなけりゃそれでいいんだけどよ」

(なんでもあるんだよ!質問しないで!質問しちゃ駄目だ!)

一言でも口にしてしまえば、バッドエンドは確定。そう分かっちゃいても「ここに映ってるおめーのお父…」と核心に踏み込まれては「駄目だ!それ以上言うな〜!!」と中断させるしかない。が、「駄目だ」は何かを知っているのと同じことで、「疑問」という名のスイッチを入れてしまった。

その中で「ひょっとして何か質問されることそれ自体がまずいことでもあるのか?」とズバリ正解にたどり着く承太郎は、さすがの前主人公。ここで早人をキャッチ&リリースしていれば、いずれ吉良の正体にたどり着いたはず……その場合は「爆死から一時間」以上が経過して、露伴先生は死んだままになっちゃいますが。

(ぼ…僕が死ねばもう誰も死ななくて済む…爆弾の僕が死ねばいいんだ…)

早人はとっさにランドセルからカッターナイフを取り出し、しっかり喉に当てて体重をかけるように……。仗助達を守るため、ママを救うため、自刃しようとする小学生キャラがかつていただろうか。うずくまってる早人の異変に気づいた承太郎達が振り向かせると、チビのキラー・クィーンがカッターが喉に刺さる寸前で止めていた!

(さ…刺せない!なぜか喉にカッターナイフが刺さらない!)

普通の人間の早人には見えないし、キラー・クィーンをスタンドで払いのけることもできない。が、4人には「見えて」しまった。

「こいつは!」

一斉にスタンドを出した4人。特にスター・プラチナは言うが早いかオラオラを始めていたが、ときすでに遅し。第三の爆弾バイツァ・ダストを見たということは、すでに目の中に入ったということ。 何人だろうと同時にな!

今回は「吉良の正体を探った」というだけで、4人とも全滅。見たら即アウトという、クソゲーを通り越した鬼畜ゲーだ。その悲しみに浸る余裕も与えず、キラー・クィーンの瞳に吸い込まれるように時が巻き戻される演出も最高に怖い。一度に主人公チーム全員を葬った、絶望的なまでに強いラスボスにしてサラリーマン・吉良吉影……。

神さまに「人殺しをさせてください」と祈る小学生の決意


再びベッドの上で目を覚ます川尻早人。

「防げなかった…あの4人も攻撃されてしまった…もう駄目だ…僕がどんな風に努力してもこれから1時間後あの4人も消滅させてしまう…」

露伴先生の死を防ぐどころか、新たに4人をバイツァ・ダストに攻撃されてしまった早人。どんな風に努力してもこれから1時間後にあの4人も消滅させられる……何の能力も持たない小学生にのしかかる、なんというプレッシャー。

爆弾である自分を“排除”しようとしても、自動的に「守られる」ことになって打つ手なし。強すぎる……吉良吉影は化物すぎる…とても勝てそうにないラスボスを産んでしまった、荒木先生の心の叫びのようだ。このまま時が来れば4人は確実に爆死させられ、それを見届けた吉良が事実として「確定」してしまう。吉良が死ぬか、気まぐれか何かで解除しない限り……。

(今まで僕は自分が人殺しなんて絶対できないと思っていた。11歳のちっぽけな少年に殺せるわけなんかないと)

人殺しができないという以前に、意識の外へと締め出していた選択肢に目を向ける早人。その手に取られるのは、まっ暗な屋根裏で兵器庫にしまってある拳銃のように眠っていた「たった一つだけ」の可能性ーーストレイ・キャット、空気の弾丸を飛ばす「猫草」だ。

「神様どうかこの僕に人殺しをさせてください」

そんなことを小学生が心から祈る異常なシーンが気高い光に満ちているのは、何周も重ねられた「絶望」という影がドス黒いからだろう。しばらく見ないうちに、猫草の顔はキラー・クィーンそっくりに成長。太陽の光に反応して空気弾で攻撃し、部屋の中の弱い光でさえ分厚いIMIDAS(集英社刊/2006年に休刊)に風穴を開ける破壊力。光という銃爪で殺意を飛ばせる「拳銃」だ。

吉良が早人に帽子をかぶせに来ることも「運命」のうち。チャンスは背後から近づいてくる至近距離! 記憶力と「ループ」の飲み込みも速く、現代なら人気のゲーム実況者になりそうな早人。

「パパがコーヒーもう一杯欲しいって言ってたよ」
「はい。もしもし。いえ。番号違いです。うちは桜井じゃあありません」

次々と先回りして手を打っていく早人。ここで電話の呼出音が入ってる(受話器を持っている時間が不自然に長い)アニメオリジナル要素にスゴい!!!と唸らされた。実は……とバラすのも野暮なので、原作未読の人はこの箇所をよく覚えておくといいですよ。

頼んでもいないコーヒーを淹れられて、いい気になってカップを手に取る吉良。しかし「一度破壊されたもの(ポットセット)はどうあがいても必ず破壊されてしまう」と本人が言ったとおりカップが割れて、吉良の手に熱いコーヒーがこぼされる。

「それじゃママ!行ってきます!」

前回は吉良がキスしていたところで、早人はママにお出かけのキス。一方、吉良に対しては挑戦的な眼差しを向けて、殺人鬼から母を取り返す宣戦布告の合図だ。しのぶも事情は分からないなりに「けっこう悪くないって気分だったりして」と感じるところがあり、数少ない和む光景だ。

しかし、前回は帽子をかぶせに来た地点で、吉良はやってくる気配がない。ペプシの看板に雷が落ちたのに、先に自分が家を出たことで運命が変わったのか?露伴先生の爆死まで、あと2分と少し。吉良はすでに来ていて、木の陰に隠れていた。

「勘だがどこか妙だ…何回かこの朝を往復しているようだな。3回…いや4回ぐらいか?」

スタンド能力以上に厄介な、吉良本人の自衛本能。だてに15年以上も警察の手を逃れちゃいない。まさか猫草を隠し持っているのを知ってるのか? 知っているにしては近すぎる距離だ……もし空気弾を外したら、全員が消し飛んだところでバイツァ・ダストを解除して吉良の勝ち。あらゆる可能性を検討する早人の考え方は、もはや百戦錬磨の大人の域を超えている。

(くそ…もう一歩だけ左に…その小汚い木の陰から体を出してくれたなら攻撃できるのに!)

関係のない木が小汚いとdisられてることに笑ってしまうが、それだけ早人が必死だということ。そもそも吉良の警戒心を研ぎすませたのも、さっき見せた早人の決意めいた意思だ。が、刻一刻と「そのとき」が迫る。「あの目…肥溜めで溺れかけてる鼠みたいに絶望しているぞ」と表現された早人の顔は作画は描き込みが凄まじい。猜疑心の鬼である吉良が。うかつにも警戒心を緩めるほどに。

「忘れていた帽子を届けに来たよ早人」

殺人鬼を木の陰から出してくれた運命に感謝しながら、闘志がわいた早人はストレイ・キャットに光を当てて空気弾を発射。吉良の左胸、心臓部分にクリーンヒット!!

や…やった!!とどめを刺しに行く早人。しかし、吉良のグーパンチが飛んできた……のをやはりガードするバイツァ・ダスト。左胸のポケットから取り出されたのは、壊れた腕時計だった。今朝、早人が「運命」を変えて吉良の手首にコーヒーがかかるようにしたせいで、腕時計を外してそこにしまわれていて、空気弾を防いだのだ。

ほんの些細な仕返しのつもりが、全てのダンドリをひっくり返してしまった早人。し……失敗した!!と「シュタインズ・ゲート」のプレイヤーなら胸が熱くなるセリフを締めに、次回へと続く。まぁ「ダイヤモンドは砕けない」という予告が、ほとんどネタバレなんですけどね!
(多根清史)