「べっぴんさん」54話。そんなに大急ってスゴイのか

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連続テレビ小説「べっぴんさん」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)第9週「チャンス到来!」第54回 12月3日(土)放送より。 
脚本:渡辺千穂 演出:中野亮平


54話はこんな話


大手百貨店・大急との契約をすみれ(芳根京子)が断ってしまい、紀夫(永山絢斗)は困り果てる。
そんなとき、社長の大島(伊武雅刀)が会いたいと言ってきた。

「うち、大急ですよ」
「うち、大急ですよ」と何度も強調する大急社員の小山(夙川アトム)。「べっぴんさん」公式ホームページの芳根京子のコーナー「すみればこ」でも注目されていた小山のこのしゃべり方。よく言えば、ブランドに対する誇りに満ち溢れ、悪く言えば、上から目線。イラッとするけどおかしくもある、イントネーションが最高。

それにしても、そんなに大急ってスゴイのか。
モデルは阪急百貨店。創業者は宝塚歌劇団をつくった小林一三。彼が1907年(明治40年)、阪急電鉄の前身である箕面有馬電気軌道の設立に参画、これが阪急百貨店の誕生につながっていく。これらの事業はやがて、今夏は「君の名は。」「シン・ゴジラ」など大ヒットを生んだ邦画界の頂点・東宝映画にもなっていくのだから、やっぱりすごい。
とはいえ、ここはNHK。阪急と大々的には言えないものだから、「阪」の代わりに「大」の字をつけた。大きい阪急という意味にもとれるが、大のつく百貨店「大丸」が浮かんできてしまうのも否めない。
大丸も西(京都)から生まれた大手百貨店だ。阪急が明治創立なら大丸は享保2年からの歴史を誇る。神戸支店ができたのは明治41年。
あまりあからさまに「阪急」を彷彿とさせるよりも、西全般にブランドイメージを拡大してみたというところか。こうすれば、神戸にイメージが集中しない。でも、小山役の夙川アトムは、神戸とおなじ兵庫県は西宮出身とおさえるとこはおさえている。それに、なんといっても主人公の名前「すみれ」は、宝塚歌劇団を代表する歌「すみれの花咲く頃」を思わせ、やはり「キアリス」のモデル「ファミリア」の発展のきっかけとなった阪急百貨店への敬意を密やかに込めているのかなと想像するのも楽しい。
「キアリス」「オライオン」「さくら」・・・もそうで、「べっぴんさん」の様々なネーミングには細やかな遊び心が感じられる。

今日の萌え


「わがまま言うんやない」とすみれに厳しく言う紀夫君。
あんなにすみれにベタ惚れだったけど、夫となったからには、ときには強い口調で諭す。
尊敬とか礼儀とかの境界があやふやな現代で、この折り目正しい夫婦関係に萌えた。 

今日のゲンテン(減点)さん


酔って会社に帰ってくる紀夫君。すみれに契約をなかったことにされ、酔わずにいられないのだろうけれど、
会社に戻ってくるということは勤務中で、ほかの社員も営業から戻ってきているところで、あんなふうに酔っているのはよろしくないのでは。ドラマだと夜なんだろうけれど、たとえばビジネスランチでランチビールしても、酒のニオイをさせて帰社しちゃダメだよね・・・。
(木俣冬)