女性が起業で失敗しないために知っておくべき7つの心得
by Chung Ho Leung
スタートアップ向けの投資を行っているベンチャーキャピタルのY Combinatorでは、これまでに1000社以上のスタートアップを支援してきました。Y Combinatorの共同設立者であるジェシカ・リビングストン氏が、Y Combinatorで得た経験から、「女性が起業する際のポイント」を紹介しています。
Jessica Livingston's Pretty Complete List on How Not to Fail ・ The Macro
リビングストン氏はY Combinatorで11年間働いていて、現在は1年間の有給休暇を取得中。会社を離れている間にリビングストン氏が同僚に伝えたアドバイスを、女性起業家にも当てはめることができるということで、リビングストン氏は女性起業家800人が集まったFemale Founders Conferenceのプレゼンテーションで「女性が起業する際に役立つ7つのアドバイス」を送っています。プレゼンの様子は以下のムービーから見ることが可能です。
Jessica Livingston at Y Combinator Female Founders Conference 2016 - YouTube
◆1:人々が求めるものを作る
これはY Combinatorのモットーでもあり、リビングストン氏は11年間で1000以上のスタートアップを送り出した経験から「このモットーは正しい」と感じているそうです。スタートアップの設立者は、まず自分が作りたいものを作りますが、成功するためにはアイデアを発展させて他人のためにモノ作りを行う必要があります。リビングストン氏いわく、「人々が求めるものを作らないならば、起業家の行うことは重要ではありません。起業家は、すぐれた代弁者・資金調達者・プログラマーといった役割を兼業しなければなりません。世間の需要を満たす製品を作っていないならば、起業家として成功することはないでしょう」とのこと。
by Steffen Zahn
リビングストン氏が例に出したのは、民泊サービスのAirbnbです。Airbnbは当初、町でカンファレスが開かれる際にエアベッドを貸し出す「AirBedandBreakfast」として始まり、次にエアベッドや共用スペースを貸し出すサービスになり、現在では宿泊施設を貸し借りするサービスになりました。リビングストン氏は、「Airbnbが民泊サービスを提供するようになったのは、信じられないかもしれませんが、ミュージシャンのバリー・マニロウがキッカケなのです。マニロウがツアーで長期間家を空ける際に、『留守の間、誰かに家を貸し出せないか?』とAirbnbのスタッフに尋ねたことから、Airbnbは民泊事業に本格的に乗り出すようになりました」と語っています。
◆2:集中する
Y Combinatorが投資した1000社以上のスタートアップにおいて、起業に成功した設立者の多くは、「自社の製品とユーザーに集中している」とリビングストン氏は言います。最も優れた起業家は、他の物事に時間をかけず、ビジネスに集中しているとのこと。リビングストン氏によれば、女性の起業家は以下のような物事に気をそらしがちだそうです。
・投資家とコーヒーを飲みに出かける
・会社を買収してくれそうな人と話す
・同業の人たちと互いに情報を交換する
・アドバイザーを雇う
・ユーザー獲得のために、他の企業とパートナーシップを組む
・人々が求める製品を作る以前に、PR活動に時間を割く
・SNS上で議論を繰り広げる
・会議に参加する
・女性としてテクノロジー業界に属していること心配する
by Lee Down
◆3:「女性であること」に悩まない
上記のリストの最後にある「女性としてテクノロジー業界に属していること心配する」ということについて、リビングストン氏はさらに詳しく解説しています。女性の起業家の前には多くの障害が立ちはだかっているのは事実ですが、女性が起業家になることを尻込みしてしまう原因は、そのような障害についての話やノイズがあまりにも多いせいとのこと。リビングストン氏は「女性がスタートアップを設立したいならば、実際にやってみることです。『女性が起業するのは難しい』という周りのノイズを怖がらず、気を散らさずに取り組むことが、問題を解決するための最適な方法です」と語っています。
by amenclinicsphotos ac
◆4:自身の成長を測る
人々が求める製品を作ることで、結果として起業家は成長できます。逆に言えば、己の成長を測ることで、スタートアップが正しい方向に進んでいるかどうかを知ることが可能です。リビングストン氏によれば、スタートアップの理想的な成長率は、1カ月当たり最低10%とのこと。もしもこの成長率に満たないならば、何かが間違っているか、十分に集中していない可能性があるとのこと。また、スタートアップの設立者は、しばしば現実から目をそらすという危険を冒しがちですが、成長率を測ることで現実から目を背けることができなくなるのもメリットと言えます。
by Chris Potter
◆5:経営が黒字か赤字かを知る
会社の支出が一定で、収益が伸び続けている状態を「デフォルト・アライブ」と呼び、資金が底をつきかけている状態を「デフォルト・デッド」と呼びます。Y Combinatorでは、投資した全てのスタートアップに対して、会社の経営状況がデフォルト・アライブかデフォルト・デッドのどちらかを尋ねているそうです。こうすることで、スタートアップがどのような状況なのかを把握し、起業家が現実に目を向けることにも役立つとのこと。リビングストン氏によれば、意外にも起業家の多くが、自社の資金繰りについて理解していないそうです。
by Alan O'Rourke
◆6:経費を節約する
スタートアップが資金繰りに苦労する理由の大半は、設立当初から社員を大量に雇い、多額の給料を支払っているためです。リビングストン氏によれば、会社の設立に成功した後に、次の段階で大量の社員を雇って失敗するパターンがよくあるそうです。スタートアップにこのようなアドバイスを伝えているY Combinatorでさえも、社員を雇いすぎて失敗することがあるとのこと。「諸々の経費を節約することで、ビジネスを長く続けていくことができます。そのため、資金調達に成功した後は、どのようにお金を使っていくかを非常に真剣に考えなくてはいけません」とリビングストン氏は言います。
by Tax Credits
◆7:資金集めはどんどん難しくなる
Y Combinatorでは、「資金不足のため、シリーズAの投資を募集します」というメールがスタートアップから頻繁に送られてくるそうです。そのようなスタートアップに対してビジネスの状況を尋ねると、成長速度は遅く、支出ばかりが多いことがままあるとのこと。ビジネスの成長が見られない場合、スタートアップが投資家から追加の投資を受けることは難しいもの。スタートアップの設立者は、投資家がシリーズAの投資をしたくなるようなパフォーマンスを見せなくてはいけません。
by frankieleon