鹿児島実vs大島

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鹿児島実先発・泰が好投

鹿児島実・泰

 鹿児島実・泰 厚志(3年)、大島・渡 秀太(3年)、両先発の好投で9回まで両者無得点と緊迫した投手戦が続き、勝負は延長戦にもつれた。

 延長10回、鹿児島実は一死から9番・泰がエラーで出塁し、満塁とすると、3番・中村 天(3年)の犠牲フライで均衡を破った。その裏、泰が3者凡退で打ち取り、4強入りを決めた。センバツでエース番号を背負った丸山 拓也(3年)、捕手の井戸田 貴也(3年)が故障で使えず、苦しいチーム事情の中で背番号11の右腕の好投がチームを救った。宮下 正一監督は「きのうの志布志戦で2桁安打されていたので、その悔しさをぶつけるつもりで投げさせた。よく投げてくれた」と評価した。

 大島・渡は「良い投球ができている」自覚があったという。シード鹿児島実を相手に7回までは散発3安打、三塁も踏ませない、ほぼ完ぺきな投球だった。

 前日の加治木工戦に勝った後、渡邉 恵尋監督は「鹿実を相手に試してみたいことがある」と話していた。渡の直球の最速は130キロ台。鹿実クラスの強力打線を球威だけで抑えることは難しい。「速い球をより速く見せる」(渡邉監督)ために、緩急を生かした投球術を工夫することだった。

 立ち上がりに重用したのはカーブ。110キロない球速のカーブをうまく織り交ぜることで、直球と20キロの球速差が生きてくる。相手打線が的を絞り切れず「打ち上げたり、見逃しや空振り三振がとれた」ことに、渡は手ごたえを感じながら投げることができた。注目の強打者・綿屋 樹(3年)は5打席凡退で退けた。

 力投を続けるエースにベンチも一丸となってサポートする。8回、先頭打者に初めての長打を打たれた直後、二死満塁となった直後と2度の伝令を送った。具体的な指示よりも「肩に力が入っているのをリラックスして間をとらせた」と渡邉監督。満塁のピンチもしのぎ、9回まで鹿児島実打線に1点も与えなかった。

 渡が力投して鹿児島実打線を抑えた一方で、大島打線も鹿実の右腕・泰を打てなかった。球速はないが、外角を中心にボールの出し入れをうまく使った投球を崩せなかった。7回は二死一二塁と絶好の先制機を作り、勝負の代打・徳永 雄大(3年)を送ったが、意表を突く一塁けん制アウトで生かせず。8回は一死から出塁したが、送りバント失敗と拙攻が続いた。延長10回は遊撃手・大山 竜生主将(3年)のエラーがきっかけでピンチを招き、決勝点を許した。「終盤の小さなミスを見逃してくれなかった」と大山主将は唇をかんだ。

 加治木工戦、鹿児島実戦と戦って「夏に向けての試金石になった」と渡邉監督。鹿児島実クラスの強豪が相手でも十分渡り合える自信をつけると同時に「バント、走塁など細かい野球を詰めていくこと」(大山主将)という課題がみえた。「甲子園の夢をかなえるためには、このクラスのチームに勝たないといけませんから」。エース渡は来る夏の挑戦に思いを馳せていた。

(文=政 純一郎)

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