東京都心のマンションが大暴落する?

写真拡大

東京都心部のマンションの価格が、東京五輪・パラリンピックが開催される2020年に「大暴落する」との声が不動産関係者から聞こえてきた。

東京都心では再開発が進み、町並みや交通網の整備が進められているが、最近のマンション価格の上昇を「バブル」とみて、どうやら五輪後の値崩れを警戒する人たちが早めに売り抜けようとタイミングを計っているらしい。

すでに「住みたい人」は買えないバブル状態

新築・中古を問わず、東京都心ではマンション価格の値上がりが続いている。最近の上昇幅こそ小さくなっているものの、3年前(2012年秋)と比べると、都心部(千代田、中央、港、新宿、文京、渋谷)では新築が4割強、中古が3割も上昇している。

2013年後半からじわじわ上昇しはじめ、14年4月の消費増税後に踊り場になったが、14年秋以降から現在にかけて一本調子に上昇。ずいぶん値上がりしたな、という印象だ。

不動産経済研究所によると、東京都区部のマンションの2015年8月の平均価格は前月比で4.6%ダウンしたものの、1戸あたり6502万円(1平方メートルあたり単価94.4万円)。一方、東京カンテイによると、8月の東京都内の中古マンション価格(ファミリータイプ、30平方メートル未満を除く)は4351万円で、前月と比べて2.0%上昇した。

一般に平均年収の6倍程度が適正水準とされる新築マンションの価格は、すでに10倍を超えている。また、都心部の中古マンションの価格も「ミニバブル」と呼ばれた2007年ごろの水準を上回りつつあり、過熱感が指摘されている。

最近の新築マンション価格の上昇は、地価の上昇と資材価格の高止まり、人件費などの建築コストの高騰という「トリプル高」が原因だ。中古マンションの価格も、新築に引っ張られて上昇しており、「地価も建築コストも下がる気配がないので、しばらくマンション価格は高止まりが続きそう」という。

価格高騰にもかかわらず、需要は活発で、相続税対策の日本人富裕層と、円安を背景にした外国人投資家が熱心に買い求めている。「湾岸エリアや山手線内の新築マンションの半分は、投資用として購入されている」との情報もあるほどで、そのほとんどが賃貸物件として活用されているともいわれる。

つまり、居住用として、本当に住みたい人がすでに手が出せない価格水準に達しつつあるわけだ。

いまは買いどきか、売りどきか

都心マンションの「大暴落」説がささやかれる背景には、こうした日本人富裕層と外国人投資家という「買い手」の存在がある。

現状で自分が住んでいないのだから、売却しても困ることはないからだ。投資した資金が回収できなくなる恐れはあるが、ある程度の損を見込んでいるのであれば、売却するタイミングさえ間違えなければいい。先々、資産価値が下がるとわかっていて保有し続ける投資家はいないので、そのタイミングが重なると大暴落が起こるという見方をする不動産関係者が出てきたのだ。手が届かなかった庶民にとっては朗報といえなくもない。

もちろん、これに異を唱える見方もある。ある不動産アナリストは「価格は緩やかに下がる可能性はあっても、大暴落する局面は、なかなか想定できませんね」と話す。

そもそも、マンション価格が変動する主な要因には人口の増減がある。東京都心部は転出する人よりも転入する人のほうが多い「転入超過」エリアなので、「マンションの急激な需要の減少は考えづらく、不動産価格が暴落するとは言いにくい」という。

ただし、日本全体の人口減で首都圏の住民も減りはじめれば、それをきっかけに供給過多に陥る可能性がないとはいえない。

この不動産アナリストによると、都心マンションは消費税が10%に引き上げられる予定の2017年4月前の駆け込み需要までは「このまま推移する」とみている。「10%増税以降は、新築マンションの分譲戸数が大きく減少するので、価格はそれほど大きく下がらないでしょう」と予測。「仮に下がるとすれば、2016年9月の経過措置(消費税8%で購入できる期限)終了後は、東京都心の高額物件は供給がほぼなくなるので、一時的な下落は起きる」と話す。

ただ、「大手デベロッパーが価格を下げて販売することもありません」と指摘。2000年代半ばの不動産ミニバブル後に起った「投げ売り」で、マンションの大幅値下げを期待するのはやめたほうがいいという。

いま買うべきか、売るべきか。見方は交錯している。