強力な「鉾」「盾」で九州、勝ち取る・大島

初回に上原と太月の適時打で3点を先取した大島

 大島は初回、4番・上原 勇人(2年)のセンター前タイムリー、5番・太月 幸(1年)のライトオーバー三塁打で3点を先取。2回にも上原のセンターオーバー二塁打などで3点を加え、主導権を握った。勢いの止まらない大島は4回も打線がつながり、太月のレフトオーバー二塁打、8番・國分 祐希(2年)のセンター前タイムリーなどで更に4点を追加した。

 先発のエース渡 秀太(2年)は毎回走者を背負うも要所を締め、5回は三者凡退に打ち取り、コールド勝ちした。大島の4番・上原は3安打4打点、5番・太月は2安打4打点、まさしく「クリーンナップ」の働きで勝利に貢献した。

 今大会、上原は4番に座りながら打点がなかった。身体が開いて引っ張りにかかる悪い癖が出ていた。渡邉恵尋監督が「1打席目はセンターから右方向に打つ意識で打て」とアドバイス。初回の最初の打席で指示通りのセンター前タイムリーを放った。「先輩が打ったことで、気持ちが楽に打てた」太月がライトオーバー三塁打を放ち、3点を先取して打線に火をつけた。

 1本打って吹っ切れた上原は、2回に中押しとなるセンターオーバー二塁打を放つ。「変化球に身体を開かず、腕をしっかりたたんで打てた」。4回にはサイン通りバントを決め、これが相手のミスを誘い得点にもつながった。「バントは苦手だったので、これを決められたのが一番うれしかった」と笑顔がのぞく。

 上原のバントで二三塁と広がった好機に、太月がダメ押しのレフトオーバー二塁打を放った。「内角が苦手だったけど、同級生にティーを上げてもらって練習した成果が出た」と仲間に感謝していた。

関連記事・2015年秋季大会特設ページ・あの学校の取り組みは?!鹿児島県の野球部訪問を一挙紹介!

 大島の九州大会出場は2度目だが、前回と今回とでは意味合いが全く異なる。1年半前は、21世紀枠のセンバツ出場と同様に「選ばれた」初出場だった。今回は、「強力な鉾(攻撃力)と盾(守備力)」(渡邉 恵尋監督)を身につけて、自らの力で勝ち取った切符だった。

 「鉾」の力は、これまでのどの試合より強力だった。4番・上原、5番・太月と中軸を担う2人が初回に口火を切ったことで、勢いに乗った。「4回戦が苦しかった分、この試合の序盤で先手をとれたことが大きかった」と大山竜生主将(2年)。これまで中々決まらなかったバントがしっかり決まったことで、打線がつながり、相手のミスを誘うという「副産物」もあった。9安打で10得点と効率よく攻めることができた。

 「盾」の力はいつも通り安定していた。エース渡が、本調子でなく毎回走者を背負ったが、要所は締めて得点を許さなかった。守備も4回戦に続いて2試合連続無失策でスキを見せなかった。攻守ががっちりかみ合い、わずか1時間19分のスピードゲームで九州がかかった大一番を制した。

 印象的なのは、勝利を決めた後、選手たちが歓喜を爆発させることもなく、淡々としていたことだ。渡は「上原の構えたミットにちゃんと投げられなかったことで悔しくて、九州大会のことは頭になかった」という。考えてみれば、県大会4強は、3代上のチームから毎年達成しており、先輩に肩を並べたに過ぎない。目指すのは「次の準決勝、決勝も勝って、先輩たちを超えること」(上原)だ。

(文=政 純一郎)

関連記事・2015年秋季大会特設ページ・あの学校の取り組みは?!鹿児島県の野球部訪問を一挙紹介!