株式会社デサント 田中 勇吾さん × 江連 悠次郎さん
「すべての人々に、スポーツを遊ぶ楽しさを」の企業理念のもと、野球をはじめとした様々なスポーツウェアや用具などを製造販売している株式会社デサント(本社:大阪府大阪市)。現在も多くのプロ野球選手たちが、これまでの野球界にはないデザインにこだわった「デサント」ブランドのトレーニングウェアやユニフォームを身につけている。
今回は、その株式会社デサントで働く元・高校球児であり、甲子園の舞台でもプレーした2人の球児OBにインタビュー!高校時代の思い出と、現在の仕事でのお話をたっぷりと伺いました。
<今回登場いただいた株式会社デサントで働く元・高校球児のお二人を紹介!>・田中 勇吾さん 出身校:京都成章 3番ファーストとして、1998年の第80回記念全国高校野球選手権大会で準優勝。決勝戦では松坂 大輔投手擁する横浜と対戦した。その後、第3回AAAアジア選手権の日本代表メンバーにも選出。現在は、デサントブランド統括部デサントマーケティング部チームスポーツ課に所属し、契約選手に用具などを提供している。
・江連 悠次郎さん 出身校:日大東北(福島)2002年の第84回全国高校野球選手権大会に出場し、初戦で鳴門工(徳島)と対戦。惜しくも2対9で敗退したが、4番ファーストとして4年ぶりの甲子園出場に大きく貢献。現在は、デサントブランド統括部デサントマーケティング部チームスポーツ課マーチャンダイザーとして、商品開発からPRまで、幅広く業務をこなす。
高校野球から学んだマインド対談の様子
――田中さん、江連さんともに、高校時代は甲子園出場を果たしましたが、今振り返ってみて、改めて、高校野球から学んだことはどういったことでしたか?
田中 勇吾さん(以下、田中) 僕は『諦めない』ということです。頑張っていれば必ず報われるということでした。僕ら(京都成章)は、春のセンバツに出場して初戦の1回戦は2対18で負けているんです。それから練習をひたすら頑張って、夏も甲子園に行けたことが嬉しかった。春から夏への3ヶ月は、とてもしんどかったです。でも、そこで努力が報われたという経験で、一つ成功体験が出来て、社会に出てからも諦めないというマインドが今に生きています。
江連 悠次郎さん(以下、江連) 僕は『ブレない』ということですね。甲子園の最後の打席は、レフトフライで終わったんです。その時、来る球がインコースだと思って待っていたんです。でも、途中で一瞬気の迷いが生じて『外かもな?』と思ってしまった。その結果、インコースに球が来たんですけど詰まった当たりになってしまったんです。
その一瞬の迷いが生じたことで、自分の思い通りの球が来たにも関わらず、詰まってレフトフライだったっていうことが本当に悔しくて。今でも夢に見ますよ、その時の場面のことは。だからこそ、今の仕事をしていても、僕が迷ってしまうとそれが会社の結果に結びつかないということがあると思うんです。そういった部分でも、仕事でも『ブレない』姿勢は大切にしています。
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[page_break:仕事でも成果を残すために取り組んでいること]仕事でも成果を残すために取り組んでいること田中 勇吾さん
――高校野球で学んだことを社会に出てからも忘れずに、仕事をされているお二人ですが、現在は具体的にどんなお仕事をされているのでしょうか?
田中 自分は、実際にプロ野球の現場に行って、デサントの道具を使っている選手たちと話をして、足りないものはないか?とか、用具の調子などを聞いたりしています。球団全体でデサントの用具を使用してくれているチームもあるので、挨拶に行ったりとか、気もち良くプレー頂くためにフォローやサポートがメインですね。試合ももちろんですが、キャンプの時期も一緒に同行しながら、常に選手と会話をして、要望を聞きつつ、企画開発担当にも現場の声を伝えて次の商品開発の参考にしてもらっています。
江連 僕の場合は、日によってやっている業務が異なるのですが、全体のスケジュールでは、大きな企画が春夏と秋冬の2回あって、そこにあわせて商品企画をまず行います。そこで、素材やウェアの色を決めたり、デザインを決めたり、ラインナップを決めたりだとか、こういった企画を発売の半年前には終わらせます。
さらに、商品をラインナップするときは、どういった流通で、どのくらい売っていくかとか、それに向けて売るためにどんなプロモーションを仕掛けていくのかまで考えていきます。プロモーションをするために契約選手に協力してもらうこともあるので、そこは、球団担当の方たちと協力して動いていきます。
江連 悠次郎さん
――高校時代も常に上達するために色々なことを考えてこられたと思いますが、社会に出てからも、仕事で結果を残すために、何か工夫していることはありますか?
田中 自分の意見だけにとらわれないようにしています。色々な人に意見を聞いたり、情報収集をしたり。分からないことは人に質問をして、そこからどんどんと吸収していくなど、自分の思っていることだけにとらわれないということが大切だと思うようになりました。
江連 出来るんだ!という状態を必ずイメージしてから、取り組むことを大切にしています。これも、高校野球の時から繋がっていて、僕は高校2年生の頃から試合に出始めたのですが、ちょうど肩を壊してしまい試合に出られなくなってしまったんです。そんな時に、父親から手紙をもらって、「今はしんどいかもしれないけど、最後のウイニングボールを自分が取る瞬間をイメージして練習しなさい」という言葉がそこには書いてありました。
実際に、福島大会の決勝戦でそのイメージを実現できたことによって、自分の中でそれが大きな自信になっています。仕事でも、諦めずに自分の思い描いたものを叶えるために、いろんな選択肢を考えていく。ダメということがあっても、出来る方法を常に考えて取り組んでいます。
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[page_break:選手の「あと一歩」の後押しを]選手の「あと一歩」の後押しをボンディングストレッチコートを手にする江連さん
――現在は、デザイン性のあるトレーニングウェアやユニフォームなどでも注目を集めているデサントですが、実際にはどんなテーマや切り口で商品を開発されているのでしょうか?
江連 ウェアではより動きやすいものを作っていきたいと考えています。商品コンセプトに『一体感』というキーワードを掲げて開発を進めています。勝負の分かれ目となる、あと一歩、あと1センチ、あと一球といった場面で、力になれるようなものを。そこで、パフォーマンスを最大限に発揮出来るものを選手に着て欲しいと思っています。
例えば、ユニフォームであれば、着ることによって『あと一歩』という場面で、生地がグッと伸びれば、それがもしかしたら取れるかもしれないだとか、選手の一番のパフォーマンスを発揮できるようなことを後押ししてあげたいとか、そういった思いで商品を生み出しています。
――なるほどですね。選手からのニーズや野球界のトレンドも数年前とは異なってきていますが、そういった声に応えるために工夫していることはどのようなことでしょうか?
江連 実際のところ、野球は昔ながらの商品が多いと思うんです。グラウンドコートなどもシルエットも変わっていません。だからこそ、そういったところで、“新しいもの”を選手から要望されることが増えてきています。現在、グラウンドコートなどの開発も進めていますが、昨年発売した「ボンディングストレッチコート」の場合は、生地が3層になっています。表面の1層目がストレッチ素材の生地で、2層目が薄いフィルムが入っていて、ここで風を止めてくれます。
さらに、裏はフリースの素材になっているので、肌側が暖かくなっています。従来のグラウンドコートのような、ごわつきや動きにくさはなく、この商品であればグラウンドコートを着たまま、キャッチボールやバッティングまで出来ます。他にも、野球用のフリースジャケットや普段使いできる「XGN」というシリーズも、プロの選手たちからも好評で、「すごく動きやすい」「カッコイイし、とても着やすい」といった言葉を頂きます。今後も、これまではない、プラスαの要素をどんどん入れていきたいと考えています。
「今」しかない高校3年間の瞬間を大切に――それでは最後に、秋の大会やオフシーズンに向けて頑張る高校球児に、お二人からメッセージをお願いします。
田中 今、思っている目標よりも、もう少し高い目標を持って野球に取り組んでほしいです。僕が後悔していることは「甲子園に行きたい」ということを目標にやってきました。でも、「全国優勝」を目標にやってきたチームには叶わなかった。甲子園決勝戦ではその差が出てしまいましたね。常に高い目標を持って、それに向けて自分はどうやっていくかということを考えて練習をすれば良かったなと思いますね。
江連 高校3年間は、次のステージで必ず財産になることがあると思うので、「今」を頑張って欲しいですね。そして、信じる気持ちを持って頑張って欲しいと思います。
高校時代、高い意識で野球に取り組み、常に戦ってきたお二人だからこそ、そこで見えたものや、得た経験が大きかったのだと感じました。社会に出てからも、その経験を発揮されている田中さんと江連さんのお話は、とても参考になりました。高校時代からお仕事の取り組みまで、熱いお話をありがとうございました!
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