本田は及第点以上のプレーを見せたが、インテルが若手やサブプレーヤーばかりだったことを差し引かなくてはならない。主力が揃った後半でのプレーが見てみたかった。 (C) Getty Images

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○ミラン 1-0 ●インテル@深圳(7月25日)
[得点者]メクセス
 
 ミランがフルメンバーで臨んだのに対し、インテルはレギュラー組ゼロの実質Bチーム。夏のフレンドリーマッチとはいえ、両チームの主力が勢揃いしての真剣勝負を期待したファンにとっては、やや残念な試合となった。
 
 メンバーを落としたことについて、マンチーニ監督は次のようにコメントしている。
 
「48時間後には、また試合(月曜のレアル・マドリー戦)がある。最初の60分を違うメンバーで戦ったのはそのため。一番重要なのは故障者を出さないことだ。そのためには、いかなるリスクも冒すべきではない」
 
 ミランのベルルスコーニ・オーナーは、チームが中国へ出発する前にミラネッロを訪れ、選手たちに「中国のマーケットはきわめて重要だ。ダービーだけは落とさないように」と釘を刺していた。
 
 一方のインテルは、4日前にフルメンバーでバイエルン戦を戦っており、主力組に無理をさせるのはコンディション上もリスクがあった。
 
 さらに言えば、ミランに勝つよりもR・マドリーに勝つ方がアジア市場におけるインパクトは大きい。その点でこのダービーを「犠牲にした」のは理に適った選択だった。その意味で、両チームの商業的な利害は一致していたと言えるかもしれない。
 
 試合は、ミランが後半から8人を入れ替えたのに対し、インテルは後半15分にコンドグビア、イカルディなどレギュラー4人を投入、それに合わせてミランも前線にルイス・アドリアーノ、バッカという2人の新戦力を投入したことで、やっとダービーらしくなった。
 
 後半16分の決勝ゴールはCKから。そのCKをもたらしたのは、鋭い突破からボナベントゥーラにラストパスを送り込んだバッカのプレーだった(ボナベントゥーラのシュートがアンドレオッリにブロックされてCKに)。
 
 さて、本田、長友の日本代表2人はともに先発出場だったが、上記を考えるとチーム内での立場は明らかに異なっている。
 
 本田はミランの4-3-1-2システムにおけるトップ下の座を、ボナベントゥーラと争っている状況。アジアツアー出発前のリヨン戦ではボナベントゥーラが先発したが、この試合ではスタメン出場を果たした。
 
 現時点のレギュラー争いは、互角に近い状況と推測できる。これから1か月の間に指揮官を納得させられれば、背番号10に相応しいトップ下のレギュラーという立場で開幕を迎えることも決して不可能ではない。
 
 一方の長友は、先発したとはいえ、明らかにリザーブ組という扱い。シャルケ、サンプドリア、ガラタサライなど、様々なクラブの名が移籍先として噂に挙がっていることからも、マンチーニ監督がチームにとって絶対不可欠な存在と考えていないことは明らかだ。
 
 とはいえ、このプレシーズンのパフォーマンス次第では、残留の可能性も十分に残されている。右SBは新戦力のモントーヤで決まりだろうが、左はダンブロージオ、サントン、長友、さらにファンも含め、レギュラー争いは渾沌とした状況にある。
 
 インテルにとって補強の優先順位は前線(ヨベティッチとペリシッチ)にあり、左SBは既存戦力でやり繰りすることになる可能性も高い。長友にとっても、勝負はここからの1か月かもしれない。
 
文:片野道郎