【連載】ミラン番記者の現地発・本田圭佑「選手、監督、幹部と総入れ替え必至の来季ミラン――その礎となるべきはお世辞きで本田だ」
懲罰的な意味も込めての強制合宿も、両者の関係を修復する助けにはならない。多くの選手が、一日中ミラネッロにこもって一体、何の役に立つのかと反発した。もう目指す目標もないというのに、なぜ今さら?(ミランの公式サイトでは、合宿の期間は無期限と発表されている)
バスのなかでインザーギが怒りを爆発させる前、彼の監督の地位は風前の灯にあった。ベルルスコーニ・オーナーが試合の結果に激怒し、インザーギをクビにするよう指示したからだ。しかし、ガッリーニの2度の電話がそれを思いとどまらせた。この時期になっての監督交代など、全く無意味だと説得したのである。
オーナーが怒ったのも無理はない。90分間を通して、枠に飛んだシュートはたった1本だった。
ミランの黄金時代の魂、インザーギを監督にすることで、選手たちにミラニスタとしての誇りを浸透させ、チームを復活させるという作戦は完全な失敗に終わった。今は新たな復活の方法を模索しなければならない。しかし、それを実行するのは別の監督、別のクラブ幹部、そしてもちろん他の選手たちだ。
現在の所属選手で、来シーズンもミラネッロに残る選手は少ないだろう。ミランを去っていくだろう選手のなかには、この1月に大いなる期待をもって獲得したマッティア・デストロとアレッシオ・チェルチの名も見られる。彼らは今シーズンで、「最もがっかりさせられた」選手だった。
ただ、失望という点では、誰もインザーギには及ばない。クラブ幹部たちは、あまりにも彼に期待し過ぎた。彼が監督に就任したその日から、まるで救世主であるかのようにみなし、彼の監督経験の浅さをまるで顧みなかった。
では、今のミランのメンバーのなかで来シーズンも残るのは? 新生ミランの礎となる選手は? この答えは簡単だ。こうした混乱と変革の嵐のなかでも、真面目に、冷静に、周囲に惑わされない選手。まず、私の頭に最初に浮かんでくるその名前は――冗談やリップサービスではなく、本田である。
文:マルコ・パソット(ガゼッタ・デッロ・スポルト)
協力・翻訳:利根川晶子
Marco PASOTTO/Gazzetta dello Sport
マルコ・パソット
1972年2月20日、トリノ生まれ。95年から『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙で執筆活動。2002年から8年間ウディネーゼを追い、10年より番記者としてミランに密着。ミランとともにある人生を送っている。