レバノンの非公式テント居住区で、友達に教えてもらいながら文字を書く練習をするシリア難民の子ども。© UNICEF_NYHQ2013-1389_Noorani

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【2015年4月15日 ベイルート(レバノン)発】

 ここ10年間、就学率には素晴らしい向上がみられています。それにも関わらず、中東・北アフリカ地域では、子どもと若者の4人にひとりにあたる2,100万人以上が、学校に通えていないか、中途退学のリスクに晒されています。

貧困や差別、紛争などの要因が絡み合って障害に

“学校に通えない子どもたちに関する世界イニシアチブ”の一環として、ユニセフ(国際連合児童基金)とユネスコ統計研究所が発表した共同報告書は、中東・北アフリカ地域における教育の平等について、現時点で最も包括的にまとめられたものです。

 報告書によると、中東・北アフリカ地域で学校に通えない子どもの数は過去10年間で40%減少し、何百万人もの子どもたちが将来への明るい希望を手にしています。しかしながら、最近では、貧困や差別、質の低い学習環境、紛争などの要因が絡み合い、就学率の向上の動きが鈍っています。

 ユニセフ中東・北アフリカ地域事務所代表のマリア・カリビスは「この地域における変動や混乱のなかで、2,100万人の子どもたちに教育の機会を与えず、挫折させている余裕はありません。子どもたちは、この地域を変える役割を担うため、教育を受け、必要なスキルを取得する機会を与えられなければならないのです」と述べました。

 各国政府は更なる取り組みを早急に実施し、特に弱い立場に置かれ、苦境に立たされている家族の教育ニーズに優先して対応する必要があると、報告書は訴えます。就学前教育プログラムを拡大し、生徒の中途退学やジェンダーによる差別を無くし、紛争地域で暮らす、より多くの子どもたちが教育を受けられるようにするために、新しい政策が必要です。

600万人を超える子どもたちが中途退学のリスクに

 ユネスコ統計研究所のシルビア・モントヤ所長は、「特に、紛争によって避難を余儀なくされている家族や、家に留まることを強いられている女の子、働かざるを得ない子どもたちに特に的を絞り、支援を提供する必要があります。この報告書は、そのような子どもたちをより正確に特定するためのデータや、子どもたちが直面している苦境、その子どもたちに支援を届けるために必要な政策を示しています」と述べています。

 報告書によると、中東・北アフリカ地域の1,230万人の子どもと若者が学校に通えていません。加えて、最近行われた算出によると、600万人を超える子どもたちが中途退学のリスクに晒されています。報告書はまた、支援に必要な資金が不足しているために、非常に多くの子どもたちが教育を受けられないままでいることを指摘し、国際社会に更なる支援を求めています。

 そして、紛争によって教育システムが大打撃を受けているシリアとイラクでは、300万人の子どもたちが学校に通えていません。現在起きている暴力が更に拡大すれば、何百万人もの子どもたちが、明るい将来のために必要な知識やスキルを取得できない、“失われた世代”となる恐れがあります。

 この地域の他の国々においても、武力衝突や政治的混乱のために、子どもたちは教育を受ける機会を奪われています。また、女の子が学校に通えていない理由や、社会的慣行や早期婚、女性教師の不足などの要因で中途退学のリスクに晒されている状況を報告書は強調しています。

 中東・北アフリカ地域の国々では、学校に通えている女の子の数は、男の子と比較して平均で25%少ないことが報告されています。一方で、若者の高い中途退学率は、教育水準の低さと質の低い学校環境が要因です。

■「学校に通えない子どもたちに関する世界イニシアチブ」特設サイト(英語)

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