女性の敵は男ではなかった?(写真はイメージです)

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 Twitter界の自称ドクダミの花May_Romaです。さて今回は特集「女のクライシス」とのことで、日本の女性が直面する問題について語ってみたいと思います。

 シングルマザーの貧困問題や、ベビーカー論争、ママ友いじめ、マイルドヤンキー女性の生態、不倫に走る女性議員などなど、日本の女性は様々な問題に取り囲まれています。

 これらがネットで話題になると、必ずといっていいレベルで炎上し、リアルな世界でも、男と女が、まるで核戦争でもやっているような激しい言い争いを繰り広げるのです。その激しさは、インド人とパキスタン人の言い争いよりもすごいのではないかと、ワタクシは個人的に思っております。

 そういう女性を巡る問題に対して、出羽守が言いがちな意見は「女が差別されているからなのよ! 全部男が悪いんだわ!!! ヨーロッパではね〜」ということなのです。

夫に対し「あ、ごめんね」しか言えない日本の妻たち

 しかし、全部男が悪いというわけではありません。

 日本の女性が差別されている、女ばかり苦労する、というのは随分前から言われてきたことです。

 20年以上前でしょうか、ワタクシが毎週の様に見ていた『TVタックル』では、額も目もギラギラと輝く新進気鋭の学者である舛添要一氏と、歯に衣を着せぬ言動でお茶の間をプロレス会場に変えてしまう田島陽子先生がバトルを繰り広げておりました。

 田島先生ご本人は実は大変真面目な学者で、大学での講義も至極まともなものであったので、テレビで過激な部分だけ抜き出されてしまうのはなんだが不本意ではありましたが、周囲がキャハハウフフしている中、ニキビ面でトム・アラヤのような髪型だったワタクシは、同級生にはナンシーと呼ばれていましたが、ディスクユニオンでテスタメントのCDを買うか買うまいが悩みながら、先生の「女はガレー船に乗った奴隷なのよ!」という言葉を脳に焼き付けていたのでした。

 その約20年後、ワタクシは息子のうんこオムツの交換を旦那に押し付けることに成功しているのです。

 恨むなら田島先生を恨んでくれまいか、と旦那に言っております。

 バブルの末期ですら、「女の権利」ごにょごにょが叫ばれていたわけですが、20年以上たった現在でも状況は実はあまり変わっていません。

 運転免許センターに行けば、カウンターの裏に大量にいる事務員のほぼ100%は女性で、70年代のバスガイドの様な格好で、紙の申請書やら印紙やらを手にして甲斐甲斐しく労働しています。

 その横には、管理者らしき鼻毛の出た天下りジジイがいて、ぶすっとした顔で椅子に座っており、時々女性たちに小言をいっていますが、女性たちは笑顔で切り返すのです。

 市役所に行くと、窓口で紙と格闘したり、一日中立ったままで利用者案内をしているのは、時給800円ぐらいで働いている非正規雇用の中年女性たちで、その合間を、腹の突き出た管理職の男がウロウロしています。その男は市役所にやってきた市民に「ちょっとお待ちくださいね」と声をかけるだけで、ミジンコなみに役に立っていないのです。そういう男は女性たちよりもうんと若く、バカ面をしています。

 女達は何度も同じことを聞いてくる老人の相手に忙しく、バカ面男が何をしていようが、気にかける風でもありません。

 築40年、四畳半と六畳の畳の部屋と台所に風呂という間取りのアパートがあります。六畳の部屋には半乾きの洗濯物が大量に吊り下がっていて、生臭い匂いを放っています。押入れの中は100円ショップで買った仕切りやボックスが溢れており、テレビの前にはニトリで買った座椅子、シマムラで買ったミッキーのプレイマット、フリマで買った使い古したオモチャが転がっています。

 プレイマットの上にはトランクス一丁の頭が薄くなった男が寝っ転がっていて、ネットをやりながらプレステで遊んでいます。四畳半のタオルの上に寝転がっている赤子がギャーギャー泣くと「うるせえなあ」とボヤキ、「ねえ、ちょっと、どうにかしてよ」と、台所にいる妻に叫ぶのです。

 この髪の薄い男の月の手取りは18万円。非正規雇用で流れ作業をやっています。ボーナスはありません。妻は赤子を公営保育所に預けて週3回、スーパーでお惣菜を詰めるパートをやり、それ以外の時は内職で造花を作っていますが、月の稼ぎは5万円に満たないのです。

 赤子の世話もほとんどし、夫には弁当ももたせて、下着にすらアイロンをかけますが、何もしない夫は薄くなる頭髪と反比例してブクブク太っていき、毎晩のようにおかずの味付けが濃いとか、刺身が古いと文句をいうのです。

 しかし、妻はそういう夫に「あ、ごめんね」というだけなのです。

女性が自ら女性の立場を苦しめている理由

 一方、イギリスやイタリアの役所に行きますと、窓口にはやる気のなさそうな男と女の両方が座っていて、「書類を無くした」「あと5分で閉まる。お前は帰れ。俺はもう帰る」と冷酷に言い放ったり、「このクソコンピュータが!!!!! 動け!!! バッファンクーロ!!!」と叫んでいたりします。ところで誰も制服は着ていません。

 イギリスの公立病院に行くと、受付に座っているのは、BMI45ぐらいのヒゲ面のオッサンです。時々謎のプルプルする動きをしながら、患者が来ると「この検査はあっち」「今日は終わった」とイヤイヤな感じで案内をしています。その横を、手術着を着たインド系の女性医師や、チャドルを被ったイラン系の女性医師が走っていくのです。

 このBMI45のオッサンの上司はBMI35ぐらいの女性で、病院内をビーチサンダルで歩き回って、イビサ島で入れた人魚の入れ墨を足首から覗かせています。BMI45のオッサンがコーラをがぶ飲みしていると、「ちょっと、デビッド! 次のホリデーの予定、カレンダーに入れておいてね。あたし3週間休むのよ」と大声で叫んで去って行きました。

 イタリアの女性達は普段からズボンを履いていることが多く、フェミニンな格好はあまりしませんが、豹柄のタンクトップから乳をはみ出させ、ブルドッグの首輪のようなネックレスをはめ、男性には女王のように振舞っています。育ち良い人ほど甲斐甲斐しい家事などしないし、男の面倒など見ないのです。オフィスで一言も文句を言わないで甲斐甲斐しく働くイタリアの女性を探すのは大変です。

 イギリスの女性たちは男の前でもガハハと笑い、BMI35でも自分が美しいと思うご自慢の入れ墨を見せびらかし、夕食は冷凍ピザのチンで、バレンタインデーには直径50センチの花束を夫からもらうのが当たり前だと思っています。そういう妻に対して夫は特に文句をいうのでもなく、6時に家に帰ってきて、赤子のオムツを替え、次の日のお昼用に、タッパーにハムのサンドイッチとバナナを詰めておくのです。そして、病院や役所の受付にはオッサンがいて、管理職や専門職には女性が少なくないのです。

「あ、ごめんね」と言う日本の妻と、この人達の違いはなんでしょうか?

「あ、ごめんね」の人達は、自分達の不満を口に出しません。抗議をしません。いつも可愛いと思ってもらいたいと思っているのです。自分だけ目立ちたくないのです。デブス、ババアと悪口を言われることを恐れています。自分が意見して周囲の女性に何か言われることも恐れています。夫に「お前もオムツを変えろ」といって殴られることを恐れています。

 不満を胸の中に溜めたまま、気がついたら閉経していて、皺だらけの顔になっており、夫が早く死んでくれないかと祈ることが生きがいの、悲惨な老女になっているのです。ガハハと笑うことができなかったので、顔の筋肉は垂れ下がり、いつも悲しそうな顔をするようになっています。

 日本は女性が夫や職場の男たちに抗議したら、ガソリンをかけられて焼き殺されるところではありません。日本では女性は自由に発言することもできるし、メディアもあるし、ネットだって使い放題なのです。手に職をつけようと思えば可能だし、職業だって自由に選べます。

 そういう自由な日本で、女性を苦しめているのは、男性だけではなく、自分だけエエカッコしたいという女性達自身の狡猾さと勇気のなさなのです。

著者プロフィール

コンサルタント兼著述家

May_Roma

神奈川県生まれ。コンサルタント兼著述家。公認システム監査人(CISA) 。米国大学院で情報管理学修士、国際関係論修士取得後、ITベンチャー、コンサルティングファーム、国連専門機関、外資系金融会社を経てロンドン在住。日米伊英在住経験。ツイッター@May_Romaでの舌鋒鋭いつぶやきにファン多数。著作に『ノマドと社畜』(朝日出版社)、『日本が世界一貧しい国である件について』(祥伝社)など。最新刊『添削! 日本人英語 ―世界で通用する英文スタイルへ』(朝日出版社)好評発売中!

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