ブラックバイト雇用主が激白「絶好のカモ」を飼い慣らす方法
ブラック企業という言葉が定着した今、あらたに注目されているのが「ブラックバイト」だ。12月だけでも、『東洋経済オンライン』(12月10日付)や『弁護士ドットコム』(12月22日付)といったネットメディアで、ブラックバイトの問題が取り上げられていることから、この問題への関心の高さが窺い知れよう。
ブラック企業同様、ブラックバイトのカモになるのは「上司の言うこと、先輩の言うことを素直に聞く人間」、そして「ガマン強い真面目な性格の者」だ。そこに加えて労働法への無知があれば、企業経営者やマネジメントサイドにとっては、まさに“絶好のカモ”となることはいうまでもない。
関西でIT系企業を営む友田洋司さん(仮名・50代)は、自身が持つブラック企業での正社員とアルバイト経験が、現在の企業経営に役立っていると話す。
「根性があって、礼儀正しい。上司や先輩を立てる。そんなタイプをバイトとして雇い入れることで企業の人的コストを削減しましたね。今の時代、正社員だと労働法だの何だのとややこしい。でも、バイトだと企業側が多少の無茶をしたところでトラブルになる確率は少ない。これからの経営者はバイトを無理使いできるかどうかが腕の見せどころだ」
友田氏経営の企業では、アルバイト募集告知を必ず大学の学生課などを通して告知する。ネットだと募集そのものを広く知られてしまうこと、もし採用がうまくいかなかった場合、ネットで企業の内情を広く拡散される可能性があるからだ。大学の学生課で告知したアルバイト募集ならば、こうしたリスクを回避できる。
「そもそも大学経由でのアルバイト募集告知に応募する学生は堅いタイプが多い。だから、『下手な働き方だと大学の名に傷が付く』と考える節がある。そこにつけ込むというわけ。もし学生とトラブルになり、大学側に駆け込まれても、こうしたトラブルに巻き込まれることを大学側は嫌う。それも我々にとってはありがたいところ」(前出・友田氏)
ただし友田氏は、昨今、各種報道で伝えられているような「業務をこなせなければ罰ゲーム」「仕事でミスをすれば罰金や損害賠償請求を匂わせる」といった、いかにもブラックという扱いは決して行なわない。これこそ後々トラブルの種となるからだ。
アルバイトならそいつの人生を背負わなくていい「本人がブラックな職場だと思わないような職場環境をつくること。これが大事。うちは大学生やフリーターをバイトに雇っているが、彼らからみれば『若い自分たちの言うことを聞いてくれている』と思ってるんじゃないかな。正社員以上の仕事と権限を持たせているのだから」(同)
友田氏経営の企業では、出勤前シフトをバイトに提出させる。その提出したシフト勤務時間しか給与は支払わない。時給にして800円だ。もっともそのシフト時間で仕事が終わることはない。シフト時間外はすべてアルバイト労働者のサービス残業だ。週に100時間労働しても40時間分の時給で済むこともある。経営者側にとっては“好都合”な話だ。
「最初は簡単な事務処理からですね。でも、それだけをこなす学生バイトには、『これだけの仕事で面白いか? もっと社会を勉強したほうがいいよ』と焚きつけて、制作や営業までやらせる。そうすると本人は『やりがいがある』と思い込むのでしょう。大学にも行かず生き生きと働いています。うちは儲かればそれでいいので(笑)」(同)
友田氏はなぜブラック企業経営者を自認し、ブラックバイトを使っていると告白するのか。その理由は、「最終的にアルバイトの人生を背負うつもりがないから」だという。どんなに頑張ったところで正社員になることもなければ昇給することもない。
「正社員を雇いたい。でもカネがかかる。だけど優秀な人材は欲しい。だったら優秀なバイトに正社員並みの仕事をさせれば会社は十分廻る。名刺を持たせて、適度な権限と肩書きさえあげれば人は生き生きと働くものですよ」(同)
自分はホワイト企業でアルバイトをしている――そう思っていても賃金面と与えられた職責から実はブラック企業だった。そんな事案がこれからは増えてくるのではないだろうか。
(取材・文・写真/秋山謙一郎)