4)勝敗の明暗を分けたものとは?
 
 これまでも述べてきたように、ポゼッションは他を寄せ付けないクオリティーの高さがあった。初戦の香港や2戦目の中国は、日本に対して、べた引きの状態だった。攻撃も後方からのロングボールを多用。前線には迫力もなく、日本は相手を完璧に封じ込め、ほぼ何もさせずに無失点勝利を掴んだ。
 
 香港、中国戦と同様、オーストラリア、韓国に対しても、日本はポゼッションで圧倒した。とりわけ韓国戦の35分までは、今大会で一番の出来というくらいの内容だった。前線から素早く相手を囲い込むアグレッシブな守備、ハーフウェーラインぎりぎりまで押し上げる強気のラインコントロール。中盤をコンパクトに保って、パス回しで韓国にボールを触らせなかった。
 
「75分まで0-0で行けたら」と吉武監督が言ったように、強力な個を持つ相手を圧倒的なボール支配で終盤まで完璧に抑え込んでいれば、韓国戦でもオーストラリア戦でも結果は出ていたのかもしれない。しかし、現実に選手たちはそのタスクを全うできなかった。自分たちのペースに引きずり込めていたにもかかわらず、一瞬の隙を突かれ相手のストロングポイントに屈してしまったのがすべてだった。
 
取材・文:安藤隆人(サッカージャーナリスト)