2月下旬、中国の大気汚染が過去最悪の水準に達し、再び「PM2.5」という言葉に注目が集まっている。

中国の経済発展に伴う大気汚染は、昨年から大きく報道されるようになり表面化。その汚染物質の数値を表す言葉として使われ始めたのがPM2.5だ。

大気中気中にはたくさんの微粒子が漂(ただよ)っており、このうち直径2.5マイクロメートル以下の特に小さいものをPM2.5という。PM2.5には、炭素や窒素酸化物、硫黄酸化物、金属を主な成分とする物質など、体に入ると健康に悪いものがたくさん含まれているため、ひと言でわかりやすく表現するならば、「人体に悪影響を及ぼす微粒子」といえるだろう。

主な発生源はボイラーや焼却炉などから煤煙を吐き出している工場や、鉱物の堆積場など粉塵を排出する施設。ほかにも、自動車や飛行機など排ガスを出すものは、すべてPM2.5の発生源となっている。

「微小粒子状物質」と呼ばれるように、その特徴は非常に小さいこと。大きさは髪の毛の太さの30分の1程度しかなく、気管を通って肺の奥深くまで入ってきやすい。恐ろしいことに通常のマスクでは簡単に通過してしまうので、最近では高価なPM2.5専用のマスクも出回っている。

では、PM2.5は人体にどのような影響を及ぼすのか。呼吸器系や循環器系に悪影響を与えるため、大量に吸い込めば肺炎や肺がんのリスクが高まるといわれている。

世界保健機関(WHO)は、PM2.5などの大気汚染物質による発がんリスクを最高レベルに分類。また、ロンドン大学衛生熱帯医学大学院の研究チームは「PM2.5が高濃度の地域ほど、心臓発作を起こした患者の死亡率が高い」と報告している。

中国ではすでに深刻な人体への影響が現実化。江蘇省に暮らす8歳の少女は肺がんを発症し、中国メディアは「華東地方で最年少の肺がん患者」と報じた。これまで肺がん患者は50代以上に集中していたが、若年層の患者が増えているという恐ろしいデータもある。

中国の復旦大学の研究グループは、PM2.5を吸い込んだラットの肺がわずか6日で真っ黒になるという研究結果を発表。このグループによると、「いったん肺が真っ黒になったら、どんな治療を施しても回復はほぼ不可能」とのこと。

今、我々が対策できるのは、可能な限り「吸わない」こと以外には無い。

(取材/宮崎俊哉、渋谷淳、山田美恵、中島大輔)