『シー・トレマーズ』 Komodo Dragon BV (C)
ゴールデンウィークも終わり、やる気を出すのが一苦労な5月がやってきた…。そんな皆様の目を覚ますべく、カルト映画のフジモトがご紹介するのは、インドネシア発の海洋モンスター・ホラー『シー・トレマーズ』。80〜90年代にかけて、数々の名作を世に送り出したブライアン・ユズナ監督の新作だ。“恐怖の匠”久々の劇場公開作の魅力を徹底解説!

『シー・トレマーズ』

海洋生物学者ジェーン(ファナ・ファサート)はYoutubeにアップされた謎の生物の映像に興味を持ち、水上輸送のプロ、ジャック(マイケル・パレ)を雇い、北スマトラ海沖に調査に向かう。途中、彼女は沖合に建築された水上の漁場で、幼い少年タマール(モニカ・サヤンバティ)が密漁団に強制労働させられているのを目撃する。正義感から、この様子を地元の警察に通報したジェーンだったが、警察も密漁団の仲間だっため無視されてしまう。一方漁場では、海中から謎の巨大生物が現れ、密漁者たちを一人また一人と餌食にしていた。ジャックとジェーンはタマールの救出に向かうが、そこで待っていたのは想像を絶する光景だった…。
作品情報へ

容赦ない“あの頃のホラー映画”が帰ってきた…残酷描写がヤバイ!

 本作の監督=ブライアン・ユズナについては、ざっくり説明が必要だろう。ユズナの仕事で最も有名なものが、6ミリに縮小された子供たちが、自宅の中庭で冒険を繰り広げるSF『ミクロキッズ』の製作。しかし、彼の本質は80〜90年代を代表する、過剰な残酷描写を得意とするホラー演出だ。当時、過激なホラー監督は多く存在したが、彼の携わった作品はかなり異質。その代表作は、人体蘇生実験にいそしむマッドサイエンティストを描いたスプラッター・コメディ『死霊のしたたり』シリーズ、人体融合を快楽として楽しむ異常な社交界を描く『ソサエティ』、「這いよれ! ニャル子さん」でいまや(ちょっとだけ)有名になったクトゥルフ神話もの『ネクロノミカン』『DAGON』など、現在では劇場公開がむずかしそうな、特殊な“性と暴力と恐怖”を描く作品ばかりだ。

ユズナは、その後もスペインで制作会社を立ち上げ、『REC/レック』シリーズのジャウマ・バラゲロ監督を育てるなど、地味ながら実はけっこう活躍している。そんな彼がスペインの制作会社を追い出され(!)、インドネシアで一念発起して第一弾として放つのが本作。自ら製作・監督・脚本をつとめただけあり、劇中では往年のグログロな表現が満載。また最新のVFXと、これまでの作品で培った特殊造形の融合で、無駄に残酷描写が洗練されているのである。溶ける肉!ちぎれる人体!突き刺さる触手(的なもの)!当時のホラー映画ファンは、容赦ない“あの頃の恐怖”の片鱗を楽しめることだろう。

あのヒーローが帰ってきた?マイケル・パレがヤバイ!

 帰ってきたのは“恐怖の匠”だけではない。80年代の伝説のヒーロー俳優、マイケル・パレも久々に(日本の)スクリーンに戻ってきている。パレはウォルター・ヒルの名作『ストリート・オブ・ファイヤー』のアウトローなヒーロー役でブレイクして以降は、低予算アクションに主演することが多かった。かつてはオーソドックスなイケメンを演じることが多かったが、最近では『リンカーン弁護士』のワイルドな刑事役や、“世界最低の映画監督”とあだ名される個性派=ウーヴェ・ボル作品の常連となり、異彩を放っている。
本作ではやさぐれヒーローとして登場するパレは、ヒロインを男前にサポートし、巨大なモンスターとも果敢に戦うのだが…そこは“恐怖の匠”の演出、絶妙のさじ加減の活躍になっているので確認してほしい。何はともあれ、パレ自身もTwitterで日本公開を呟くなど、かなりの意気込みで本作に臨んでいる。今後もこういった形で、様々な作品でお目にかかりたいものだ。


絶妙すぎる登場、カッコいい造形…甲殻類っぽいモンスターがヤバイ!

 本作はいわゆるモンスター・パニックものである。作品のキモとなる巨大生物のデキが、実に秀逸なのは注目すべきポイントである。海洋生物ものといえば、サメやタコ・イカなどが定番だが、今回登場するのはちょっと固めの“甲殻類っぽい”モンスター。厳密には甲殻類ではないのだが、実にカッコいい造形なのである。

そして、モンスター・パニックもので重要なのが、その登場の仕方。いきなり姿を全て見せてしまっては興ざめだし、かと言って最後まで姿が見えなければ、腹が立つもの。この「モンスターのチラリズム(一部業界ではモンチラという)」が、本作では絶妙の塩梅になっているのである。巨大生物の一部分が登場し、犠牲者が増えてゆくごとに明らかになる本体。どんな姿かは、劇場でモンチラぶりにドキドキしながら予想して楽しんでほしい…と言っても初見で何であるかはだいたい予想できるのだが。

インドネシアといえば、昨年はバイオレンス・アクション『ザ・レイド』が世界を席巻したばかり。同作のギャレス・エヴァンス監督も、ウェールズからインドネシアに拠点を移し成功している。スハルト政権崩壊による自由化以降、インドネシア映画は徐々に発展しつつあるのだとか。そんな活気ある国で“恐怖の匠”が作り上げた作品を、是非スクリーンで体験してほしい。

『シー・トレマーズ』は5月11日(土)より シネマサンシャイン池袋、109シネマズMM横浜ほかレイトロードショー

『シー・トレマーズ』 - 公式サイト



http://image.news.livedoor.com/newsimage/9/1/916efa74bb8f8c653f9cce0c76a6ce5f.jpg

カルト映画のフジモトの所見評価

【あの頃のホラー度】★★★★

【マイケル・パレ度】★★★

【モンチラ度】★★★★★

カルト映画のフジモトの「編集部的映画批評」一覧



【MOVIE ENTER 特別連載】
編集部的映画批評 - 編集部がオススメ映画をピックアップ
オトナ女子映画部 - 恋する女子が観ておきたい

MOVIE ENTERのTOPへ