SC相模原、町田ゼルビア、ともに初戦を落とした者同士の対戦のなったこの試合。

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さらには「境川ダービー」と銘打たれたこのカードに、両者はどう立て直してくるのかが注目であったが、初戦のパルセイロ戦からFWの鈴木が森谷に替わっただけで挑んできた相模原に対して、町田は4人を入れ替えこの試合に挑んできた。

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試合は初のホームゲームであり、気合いの入っていた相模原が押し込む形でスタート。5分、6分と立て続けにCKのチャンスを奪い、9分にも上がってきた天野のクロスからチャンスを作り出し、いい流れを掴んでいく。さらに10分には向のボールをカットし、素早くカウンターを仕掛けて町田ゴールに迫っていく。また、守備面でも全体のラインをうまくコントロールして、オフサイドの網に掛けていく。

立ち上がりは相模原がペースを掴んだように見えたこの試合だが、Jリーグを経験してきた町田は一瞬の隙を逃さなかった。

15分、CKのチャンスを掴んだ町田。一度は相模原守備陣がこのボールを跳ね返したのだが、クリアボールがペナルティエリア外にいた鈴木の足下に流れ込む。そしてこれをダイレクトボレーで蹴りこみ、あっさり町田が先制。

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すると、立ち上がりは相模原の攻撃にやや押され気味だった町田は落ち着きを取り戻し、長いボールを交えながら、巧みなボールポゼッションを見せつけて安定した試合運びを見せていく。華麗に短いパスをポンポンと繋ぐという形ではなかったものの、リスクを排除しながらのポゼッションで、徐々に自分たちの流れに引き寄せていく。また、深津を中心としたディフェンスラインは落ち着いたラインコントロールを見せ、全体的に見ても大きなパスミスもなく、途中で「奪われて危ないカウンターを食らう」という場面をほとんど作らせず、ボールを失ったとしても、スローインやゴールキックという守備をリセットできる形を常に生み出し、相手にチャンスらしいチャンスを作らせない。

のらりくらりと自分たちのペースに引きずり込んだ町田に対し、立ち上がりのように主導権を握れない相模原。29分にやっとカウンターから菅野が攻め込んで久々のチャンスを迎えたが、ここでも連続攻撃とまでにはチャンスを広げられない。しかし今季の相模原には、劣勢の時間でも打開できる大きな武器があった。

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佐川大阪、SAGAWA SHIGAで爆発的な得点力を誇った御給が、ここ一番で大きな仕事をやってのけた。36分にCKのチャンスを迎えると、一度はクリアされたボールを曽我部が拾って中へ浮き球を入れると、横から入ってきた御給が相手よりも先に触って押し込んでゲームを振り出しに戻す。

この貴重な同点ヘッドで勢いづくホームの相模原。続く39分にも天野のクロスから曽我部が飛び込んでダイビングヘッド! これは難しい体勢であったため決定機とはならなかったが、ホームの心強い声援を受け勢いを再び取り戻していく。

御給の同点ゴールから流れは一変し、町田にとってはイヤなゲーム展開になろうとしていたが、今年、長野パルセイロから加入してきた向が大きな仕事をやつてのける。

41分、町田はゴール正面だが距離は約35mという位置でFKのチャンスを掴む。

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「失点してしまい、流れが悪くなっていた場面だったので、どうしても点が欲しかった」と試合後に語ってくれた向。距離もあり、「どうかな?」と一瞬感じたそうだが、ポイントに立つと躊躇無く右足を振り抜くと、強烈なシュートはゴールに一直線に飛んでいき、JFLではなかなかお目にかかれないスーパーゴールが相模原ゴールに突き刺さった。

さらに町田はロスタイムにもCKのセカンドボールを真野が蹴りこんで、リードを2点差として前半を折り返す。

それにしても町田は見事すぎるゲーム運びを見せた。
上にも記したが、長いパスを織り交ぜながらリスクを排除した戦いを見せ、セカンドボールを相手に与えず相模原に逆襲の目をつみ取り、自分たちの攻撃が切れる時はリスタートさせる形を取り、さらにはセットプレーから確実に得点を奪っていく。

華麗なポゼッションから得点を奪っていくスタイルもいいだろうが、昨年J2リーグを経験し「したたかに戦うこと」を学んだ町田は、この前半戦でチームとしての「経験値の違い」をまざまざと見せつけたのである。個の能力という点では、相模原も多くの元Jリーガーを擁しており、決して低くはない。だがいかんせん、昨年まで戦っていたリーグは地域カテゴリーの関東リーグであり、その差は残念ながら明白だ。

さて、後半に入ると試合の流れは前半と全く違う形になっていく。

2点のビハインドを必死に追いつこうとする相模原が、立ち上がりから猛然とラッシュを仕掛けていく。47分、50分とCKのチャンスを奪い、51分にはクイックで入れたスローインからチャンスを掴み、御給がフリーでゴール前に飛びこんでヘディング! 決定機を迎えたがシュートは残念ながら枠を捉えられない。このように、攻める相模原に守る町田という展開で後半戦は進んでいく。
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だが、ボランチの藤田・小川に深津を含めた町田守備陣は終始慌てず対応。再三ボールをバイタルエリア付近まで運ばれたが、結局打たれたシュートは前半と同じ4本だけ。攻められてはいるものの、決定的な場面までは行かせない。さらには前半のようなポゼッションは影を潜めたものの、カウンターでチャンスを掴むとしっかりフィニッシュまで持ち込み、やはりここでも「中途半端に奪われてカウンター」というリスクを回避した形をしっかりとっていく。

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そして試合は2点差のまま進み、残された時間はアディショナルタイムの3分だけとなった。終始確実な試合運びを見せた町田の勝利は確実であったが、最後の最後に町田はとどめの一撃を相手に食らわす。途中交代で入った双子の岸田兄弟の兄・和人(弟はサガン鳥栖の翔平)がカウンターから泥臭く押し込んで4点目を奪って試合終了。

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結果的に3点差がついたゲームだが、終始試合巧者ぶりを発揮した町田が、危なげなく相手を寄り切ったゲームであった。しかし、勝った町田にとって、手放しで喜べるゲームではなかったと言えるだろう。

試合後の会見で秋田監督が「どっちにころんでもおかしくないゲームだった」と語ったとおり、相模原がいくつかあつた決定機をしっかり決めていれば、どうなったかわかなかったし、町田もリスクを負わない展開に持ち込めなかったであろう。また、受け身に回ってしまった後半戦に関して、もっとアグレッシブに行かなければいけないとも語ってくれた。

ただ、新戦力の向に関しては、そのポテンシャルの高さを認めた上、同点の場面での貴重かつ、スーパーな一撃を絶賛。また、スタメンを入れ替えたことに関しては「試合に出ていなかったメンバーを含めて、全員高い能力を持っており、誰が出てもおかしくない状況だと思っています。今日に関しては、替わった彼らのやる気を利用して、これまで積み重ねてきたことをやっただけです」とも語ってくれた。

初戦は高いモチベーションを持った福島の粘り強い戦い方と、開幕戦のプレッシャーから「自分たちらしさ」を出せないまま敗れてしまった町田だが、目指す華麗なサッカーが仮に出来ない(出来なかった)としても、今日のようなソツのない戦い方をやり続けられればJ2復帰は難しくないだろう。

さて、連敗スタートとなってしまった相模原だが、木村監督は強風の中で思うようなサッカーが出来なかった初戦に比べて、チームが目指す攻撃サッカーの手応えは掴んだようだった。確かに結果を見れば1-4と言い訳できないスコアである。だが、得点はセットプレーからと、最後の最後で攻めに行った末のカウンターによる失点であり、攻められて崩されたものではない。攻撃の形を見せることができたのだから、次はセカンドボールの処理を含めたセットプレー対策が重要になってくるだろう。

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そして、元々キャリアのある選手が揃っているのだから、一日も早く「JFL仕様」のチームになることだ。今年の戦いの場は、昨年までの地域リーグカテゴリーとは違う全国リーグ。さらにはJリーグ入りを目指すプロクラブとの戦いもあり、「これまでのような…」ではうまくいかない。しばらくは思うような試合運びが出来ない試合が続くだろうが、戦力的に残留を争うチームではない相模原。いや、逆に言えば上位争いに加わらなければ行けないクラスでもある。だからこそ、1日も早くJFLでの戦いに慣れて欲しいところ。

連敗スタートだが、その中でも御給をはじめ、攻撃の中で光るものを見せている相模原が、どの時点で「その力」が開花するかに注目していきたいところだ。

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2013 JFL第2節 @相模原麻溝公園競技場
SC相模原 1-4 FC町田ゼルビア
[得点者]
15分鈴木、42分向、45+3分真野、90+3分岸田(町田)
37分御給(相模原)