ranking

写真拡大

[読了時間: 2分]

世永さん登場
編集チョのmaskinこと増田真樹です。現在、TechWaveは、新しい体制に向け、少しずつ変容を続けています。要となるのが 。素晴らしい活動をする人と人とが行きかう場を構築するのが私の編集というお仕事です。
本日登場していただきますのは、世永玲生さん。リスペクトする一人であり、業界に対する思いを共有できる一人であります。彼は、クリエイティブと(広義の)マーケティングの狭間において洗練された感覚の持ち主で、多数のヒット作を育て上げた敏腕プロデューサーでもあります。
実はすでに「「クソゲーの世紀」、ノンプロ&低コストで勝負するアプリビジネスは成り立つか? 【増田 @maskin】」で登場済みなのですが、今回は全文書きおこしということで、初TechWave寄稿して頂きました。


2013年4週連続でTop25入りを果たして見えて来た今年のAppstoreの5つのトレンド 【世永玲生 @reosucker】


 2013年が始まって4週目。appstoreにて連続4本のTop25入りを無事に果たせたほっとしている 世永玲生 @reosucker です。

 さて、LINEと広告予算が豊富にあるソーシャルゲームが優勢の中、その隙を縫って広告費ゼロでマーケティング戦を行なってきた僕が、見えてきた今年スマホアプリで勝ち抜くために知っておきたい5つのトレンドをテーマにちょろっと。

1 新境地にいち早く乗り込め


 REDSTONEと言うオンラインゲームを皆さんご存知ですか?オンラインゲーム黎明期に物凄い売上を誇ったタイトルで、なんと現在もなおサービスが続く長寿タイトルなのであるが、この「REDSTONE」一番すごかったのはそのマーケティング戦略です。

 当時、MSNメッセンジャーの下部広告は、当時本当に広告が集まらなくて非常に安くなっていた。そこに目をつけたのがとあるマーケティング担当の某氏。「メッセンジャーを使っている人は必ずネットで繋がっている友だちがいて、しかもかなり暇なはず!」そこで「REDSTONE」はMSNメッセンジャーの下部広告をごっそり買い、MSN側が値上げをするまでものごっついユーザーをかき集めたとネットゲーム関係者の間では伝説になっています。

 要はそのメディアの広告戦略が成熟しておらず、価値付けも正しく行われていない時がチャンス!と言う話なのではあるが、実は今一個そんな感じの広告の出し先がある。ヒント言うと、「広告代理店が存在してない」「不良とドラゴンとクリーチャーが徘徊している」広告費ゼロでこれをうまく使っているところと戦うのは本当にしんどい話です。

2 アプリ紹介メディアの細分化


 せっかくアプリがリリースされても、どこでも紹介されないのではランキング上位にでてくることは決してありません。そこでアプリデベロッパーは広告を打ったり、リワードを利用したりするのですが、これが中々、発注側にもスキルが必要だったりします。

 アプリ紹介メディアで紹介してもらうのも非常に効果的ではあるが、毎日何十本もアプリがリリースされているので、これが中々紹介してもらいづらい。特に大手メディアであれば尚更だ。その一方でアプリ紹介メディアも、段々と細分化しており、相性の良いアプリがそことうまく関わる事で効率よくダウンロード数を稼ぐことができるようになっているのも事実。

 例えば「激ミニゲーム解説」 はミニゲーム専門のメディアなのに、1記事5000クリックを達成しているそうです。

 これは「ミニゲーム」を目的としたユーザー層に対して、「面白いミニゲーム」だけを紹介という、効果があって当たり前の属性を持つメディアだからこその数字なのですが、これから「ソーシャルゲーム専門メディア」や「アイテム課金制アプリ専門メディア」等もできてくれば、発注メディアを正しく選択するだけで、広告担当者の発注スキルが無かったとしても効果的なユーザーへのアプローチが行える様になってくるんじゃないかなと。


※写真は17時に「激ミニゲーム解説」にアプリを紹介してもらった時のもの18時から物凄い勢いでランキングが上昇している。

 この手のミニゲームに絞ったメディアでは、ゲーム系との相性は抜群なものの、ツール系だと中々ダウンロードもクリックも伸びないとか、そんな感じみたいです。

3 ますます高まる「スピードが命」


 現在、僕がプロデュースで参加している「東京検定研究所」では開発2日、調整2日の4日間でアプリをサブミットしている。これは、相方であるプログラマー氏のスキルの賜物ではあるのですが、同時にマーケティング要素としても週1本必ずサブミットする体制が重要となります。

 現在、ゲームのTop25にリリースしたアプリが入るまでの時間は約3日間、そして滞在時間は同じく3日間。(※東京検定研究所の場合)このあとゆっくりと下降曲線を描きランキングが落ち着くのですが、この間に次のアプリにバトンタッチをするのがコツなワケです。

 なお、2日間でサブミットなんてできないよって言う人に更に驚きの話をするのであれば、うちの相方は絵とサウンドも込みで2日間でサブミットした上、基本残業0です。そんな彼は様々なスピード開発のノウハウを持っているのですが、そのコツをAndroid/iPhone共に出版しているので興味がある方は是非よんでみてください「AndEngineでつくるAndroid 2Dゲーム 」「コピペではじめるiPhoneゲームプログラミング」。

 数カ月前にアプリランキングの上位を独占していたデベロッパーがTOP300にもどこにも居ないなんて事はわりとよくある話なのですが、殆どの場合それはヒットアプリに恵まれなくなったということよりも、リリースが途絶えた、またはリリース間隔が長くなったのが原因の場合がほとんどです。「継続は力なり」これ+「スピードが命」が成功しているデベロッパーの共通点です。

 開発時間と同じくらいQAに時間を割いているところも、やっぱり成功しているところが多いです。

4 アイコンのトレンドを追え


 アイコンのトレンドはダウンロード数を稼ぐ上で最重要ポイント。最近、特に目立つのは「ソーシャルプラットフォームのプラットフォーム隠し」です。

 「登録が必要」これだけで避けるユーザーが増えてきている昨今。大手プラットフォーマーもプラットフォームを表すアイコンバッチを付けない方向が目立ってます。

(アメーバはそこを敢えて突っ張ってますが、それはメディア力あっての事)

 逆にLINEの様にアカウントを多くの人が持っている前提で勝負しているアプリはバッチをつけていることで「簡単に登録できる」事をユーザーに伝えれてますが、

matrix

 解析サイト「appanine」の「Top5Matrix」http://www.appannie.com/matrix/iphone/japan/ を見てもわかるように、上位にいるアプリでバッチをつけているアプリはLINE系を除けば皆無といっても過言ではないです。

 AppAnine で毎日「Top5Matrix」を眺めているだけでもアイコンのトレンドを掴む力は上昇すると思うのでまだ見たことが無いって人は一度見てみてください。

5 それでもまだある鉄板テーマ


 アイコンのトレンド同様、ジャンルのトレンドというものもありまして、金脈を見つけてそこにリソースを全力投入するのは1個の手法です。例えば「東京検定研究所」では「棒人間」と言うテーマにリソースを2013年から集中させ、成果を上げています。

 「でも、そんな金脈見つけるの大変でしょ?」「激混みで過当競争状態なんじゃないの?」

 そんなあなたに一個金脈をプレゼント。
 それはずばり「にゃんこ」

neko

 可愛い脱力系の絵でネコのアプリを作れば高確率でランキング上位に入り込めます。そして、正直そんな過当競争でもないです。

 僕がネコが嫌いでなければ絶対に攻めたいジャンルです。

 一方、「金脈がなければ作ればいいんじゃないか?」と言うのも事実。そこで「東京検定研究所」では「無限」という金脈を作ろうと「棒人間」と共にブランディングを行なってます。

mugen

・無限ドッカン(キッズカテゴリ1位、無料ゲーム総合6位)
https://itunes.apple.com/jp/app/wu-xiandokkan/id595898981?mt=8
・無限ホッピング(スポーツ1位、無料ゲーム総合5位)
https://itunes.apple.com/jp/app/wu-xianhoppingu/id594391670?mt=8
・無限1upせよ (ファミリーカテゴリ1位、無料ゲーム総合10位)
https://itunes.apple.com/jp/app/wu-xian1upseyo/id592341163?mt=8
・無限キャッチボール(スポーツ1位、無料ゲーム総合14位)
https://itunes.apple.com/jp/app/wu-xiankyatchiboru/id590058283?mt=8
まとめてみたらちょうど5個でキリのいいところでまとまりました。

 初のTechwaveへの寄稿でちょっと緊張しつつの原稿エントリーでしたが、お楽しみいただけたでしょうか。

 今年の、スマホアプリの大きな戦略はほぼ2択に絞りこまれてくるかなと思ってます。一つは高ARPPUが狙えるタイトルをしっかり作った上で、広告担当に優秀な人をつける。もう一つは広告が必要ないコンテンツを作り続け、自らがメディアとなり露出度を高める、僕が主にとっている戦略です。

 この戦略は「思いつき」をヒットに結びつけれるたった一つの方法だと思ってます。

 例えば、ステーキ屋さんの限定カレーは余った肉の有効利用が目的なので、原価に関してはあまり気を払わないでOKです。それと同じで宣伝コストが0であれば、いわゆる「思いつき」のコンテンツでも勝負をかけても良いわけで、その中からまぐれヒットが生まれるかもしれません。ヒットが生まれた際にはじめて広告の表示配分を自社回しと収益が生まれる広告に分ければいいわけです。自らが作ったサービスやコンテンツが成長するまでは肥料や水を絶やしちゃいけないって事です。

【関連URL】
・「クソゲーの世紀」、ノンプロ&低コストで勝負するアプリビジネスは成り立つか? 【増田 @maskin】
http://techwave.jp/archives/51766028.html

蛇足:あえて別の視点から-The third eye
reo 自分で記事を書いた上で「僕はこう思ったッス」を書くのがすごい大変な事に初めて気づきつつ、改めて「マーケティング」の重要さを訴えたいと思う次第。自分が作ったコンテンツやサービス。これを1人でも多くの人に見てもらうことに関して否定な意見をいう人もゼロではありません「そんな奴は、チラシの裏にでも企画を書きためてAppstoreにアプリをリリースするのをやめてくれいっ!(審査がその分遅れるから)」と叫びたい心を常に抑えているというのは若干大げさではありますが、「良いアプリを作れば売れる」って人が相変わらず多いのも事実です。そんな事を言ってしまったことがある人に読んで貰いたい気持ちで綴ったエントリーです。
著者プロフィール:世永玲生 a.k.a reosucker

エデュテインメントコンテンツのディレクターを志しソニー・ミュージックエンタテインメントに入社。デジタルコンテンツ部にて数百のWebコンテンツリリースのディレクション/プロデュースを行い、その後セガへ。音楽と映像の連動した「ミュージックインタラクティブ」ジャンルのゲームの原案・ディレクションを行いファミ通ゴールド殿堂等複数のアワードを獲得。その後メディアアートアプリのMatrixMusicPadの原案・ディレクションからiPhone業界へ。2009年の年間ベストの有料部門1位を獲得。現在はGMOインターネットにて特命担当として各種サービスの分析をおこなう。アプリ開発者としては、同人サークル「東京検定研究所」のプロデュースに2012年8月より参加。ゲーム総合1位やカテゴリ1位を複数回達成する。

大手出版社・テレビ局・配信会社等のバイラル設計&マーケティングのコンサルティングも行い、インタビュー記事・分析記事は掲載多数。