世界一の自立式電波塔『東京スカイツリー』の工事を手掛けたのは、東証1部上場ゼネコンの株式会社大林組(東京・港区)。完成当初、同社ホームページはトップから大々的にスカイツリーを宣伝し、まるで東武鉄道のそれかと見間違えるくらいだった。
 それもそのはず、『東京スカイツリー』事業は大赤字覚悟の一大プロジェクト。建設費は400億円とも450億円ともいわれているが、大林組にとってこれは“建設費”ではなく“宣伝広告費”みたいなものなのである。

 今回、大林組は“宣伝効果狙い”とはいえ、建設鋼材に安価な韓国製鋼材を多用するなど、実は最後の最後まで事業の黒字化を諦めなかった。「以前は質の問題があったが、最近では加工性、品質面でも日本製と比べて見劣りしない」と鉄鋼業者が言うように、2011年の普通鋼鋼材の輸入量は前年比22.4%の増加となっており、このうちの6割程度が韓国製である。そのスカイツリーに使う鋼材の価格競争の中で、日本の企業が倒産していたことは、ほとんど知られていない。
 鉄骨加工のグレードとしては最高位のSグレード認定業者であった株式会社安藤鉄工建設(秋田県)は、その韓国製鋼材との価格競争の末、スカイツリー向け鋼材を安値で納品することになった。この影響もあり資金繰りが破綻した同社は、'09年末に民事再生法を申し立て倒産した。六本木ヒルズにも携わった国内有数の鉄骨製造業者は、大手ゼネコンの“広告宣伝”事業に巻き込まれて倒産したと言っても過言ではない。スカイツリー工事着工('08年7月14日)から、わずか1年半後のことであった。

 それだけではない。「今回、大林組は、一部の下請け業者への工事代金の支払いを最後まで確定させていませんでした」と関係者は証言する。これは、大赤字覚悟で臨んではいたものの、下請けへの支払いを抑え、あわよくば黒字プロジェクトにしようとしていたということだ。
 「告発する下請け業者はいないでしょうが、下請法違反に問われる可能性もある行為です」(前出関係者)

 工事中、スカイツリーの中継をする各テレビ局は、『大林組』の幕の前からリポートをしていた。おそらく、十分に広告効果はあったであろう。
 ビッグプロジェクトで建てられた建造物の影には、大きな“陰”もあるということか…。