アゼルバイジャンに2-0で勝利を収めた翌日の5月24日、いよいよW杯アジア最終予選のオマーン戦、ヨルダン戦、オーストラリア戦に臨む日本代表メンバーが発表された。

アゼルバイジャン戦のメンバーから長谷川アーリアジャスールと徳永悠平が外れ、今野泰幸、吉田麻也、ハーフナー・マイクが招集された。定刻になり会見場に現れたアルベルト・ザッケローニ監督には笑顔がない。いつもよりゆっくりした口調で会見は始まった。

宮市、川島、長友、内田らアゼルバイジャン戦後のコメント
日本代表戦評〜ザックにとって頭の痛い問題とは

原委員長
「いよいよワールドカップ最終予選が始まります。これから1年かけて予選の8試合がありますが、いい準備をして全力で戦ってブラジルワールドカップの出場権を獲得したい。サッカー協会としても全力で現場をサポートして戦っていきたいと思います」

ザッケローニ監督
「ワールドカップに向けて予選本番が始まる、まずはこの3連戦があるという状況です。この3試合は当然大切なゲームになりますが、この3試合しかないわけではなくて、予選すべての8試合をトータルで見て戦っていければと思います。この3試合に関してですが、とてもタフな試合になると予想できます。最終予選に出ているメンバーは当然3次予選を突破して、その段階で成長しています。3チームの中にはアジアカップで実際に今まで対戦したことがあるので、ある程度の情報を持っているチームもあります。

いずれにせよ最終予選が始まる中で、私もすべての監督と同様にポジティブな方向に行ければいいと考えていますし、そのように行くと思っています。チームへの信頼を高く持っています。もう日本に来て少し時間が経ちますから、みなさんも私のことをわかってくれていると思います。結果を約束するタイプではありませんが、全力を尽くすことを約束するタイプです。ソクラテスのようにたくさん話した後で殺されたという状況になりたくないので、ここで話を止めておきます」

――練習はほぼ非公開ですがその理由を教えてください。
「ワールドカップ予選に向けて準備をする中で、たとえば昨日の記者会見での質問に、決定率を上げるにはどうしたらいいかというヒントを、という質問もありましたが、そういうことを言うことによって当然相手に情報が入ってしまうことがありますし、できる限り相手に情報を与えたくないという思いがあります。

私が相手の情報をほしいと思っているのと同じように、当然相手もできる限りうちの情報を集めようと思ってやってくるでしょうが、とにかくチームが集中できる環境をつくりたいというのがその目的です。情報という意味でも、相手を有利にさせることは一つもしたくない。フルメンバーが一度に集まれるという状況がありますから、できる限り集中力を高めるためにもこの策を採りました」

――宮市選手を藤本選手のように経験のある選手を外してでも選んだのはなぜですか。
「まずはこのメンバーを選考するに当たって、選手の特徴ができる限りかぶらないようにということで選手を選考しました。ですのでたとえば宮市選手は藤本選手の代わりに選ばれたというのではなくて、説明すると藤本選手はどちらかと言えばアシストが得意な選手で、宮市選手はゴールに迫るタイプ。宮市選手の特長と言えば両サイドをうまくこなせるということと、サイドで幅を持たせると言うことと、1対1に強い、スペースをうまく使えるということです」

――過去、最終予選では監督が解雇されたこともあるのですが、監督の意気込みを教えてください。
「気持ちとしては勉強をたくさんしてしっかりと準備をした学生が試験に臨むような心境です」

――森本選手の状況と高橋選手を選んだ理由を教えてください。
「森本選手は昨日の試合で腰を強く打撲したのですが、昨日の夜から今朝の状況を見た感じでは回復傾向にあるので数日で回復するだろうと思います。今の情報ではオマーン戦に間に合いますし、その前、数日のトレーニングには合流できるでしょう。高橋選手はいいコンディションにある、Jリーグを戦っている選手の中でもトップクラスにあるでしょう。また高橋選手の能力ですがバランス感覚に優れていて、戦術眼も持っていて、ピッチの大きなエリアをカバーできる選手です。フィジカルも持っています。まだ若い選手ですが私は気に入っています」

――相手をどう見ていますか? 勝点いくつを考えていますか?
「まず、私は自分の経験から計算しないことが大切だと感じていますので、計算はしません。この3試合に関しても大切な試合ではありますが決定的な試合ではありません。過去の経験を振り返ってみても、リーグ優勝したときは最後のほうで勝点を稼いで優勝したというのがあります。この仕事をして30年間の経験から学んだことは、一つひとつ目の前にある試合をこなしていくのが大切ということです。当然今回のメンバーを選ぶにあたって3試合を想定しながら選んだのですが、現時点ではオマーン戦だけに集中してやっていきたいと思います。サッカーではときに勝って時に負ける。何が起きるかわかりませんので、あまり計算はしないで目の前の試合に集中していきたいと思います。また、うちのチームの特長として、その試合で出来なかったことも次の試合では課題を克服することができます」

――長く一緒にいることを生かして、たとえば3-4-3のように習得に努めたいことはありますか?
「この3試合に関してはフレンドリーマッチではないので、この3試合に向けて具体的に準備をしたいと思います。現時点でこの代表の基本的なシステムには4-2-3-1と3-4-3というのがあるのですが、そこを重点的にやってきたいと思います」

――昨夜の試合でFWはシュート0本でした。その点を踏まえてハーフナー・マイク選手に対する期待をお願いします。
「まずはFWにとってゴールが大切だということは理解できるのですが、たとえばシュートが0本でも、その動きでチームにスペースを与えたり、パスが来なかったりというのがあると思うのですが、昨日はそういう現象が起きたと思います。なので昨日の試合に関していえばピッチに立ったCF2人については、相手のDFを引きつけるというタスクがあってそれを実践してくれました。誰が決めるかというのが大切ではなくて、日本代表としてチームが決めるというのが大切で、我々は20試合を戦ったなかで40得点をしたのですが、たくさんの選手が得点しています。マイク・ハーフナーに関してですが、昨日ピッチに立った選手とは違った特長を持っていて、ゴール前でシュートするタイプですし、エリア内で仕事をするタイプで、体も非常に強いという特長を持っています」

――選手にどんな心構えを求めていますか。
「メンバーに関してですが、これまでやってきてくれたように高いモチベーションと代表チームに来ること、代表でプレーすること、代表のユニフォームを着ることに誇りを持ってほしいと思います。みんな自負しているととは思いますが、サッカーはチームプレーですから、チームプレーの中に個の場面があるというスポーツですから、そういうことをしっかり把握して代表チームに来てほしいと思います。たとえば1人の選手の才能がチームに勝利をもたらしてくれるということはあるのですが、それはたった1試合に過ぎない。長い目で見て、たとえば大会を勝ち抜くにはチームというのが大切になるのです」

「ミナサン、コンニチハ」。なぜか会見終了後に監督は日本語で挨拶した。報道陣からの笑いはない。監督にも笑顔は一切なかった。真剣勝負が目の前に迫っている。