楽天の田中将大が今季初勝利を挙げたのは日本ハム斎藤佑樹に投げ勝った試合(4月12日)だった。この顔合わせをマスコミは相変わらず「ライバル対決」と煽るが、田中はすでに日本球界を背負う存在で、斎藤とは格が違う。本人もそう思っていることだろう。

マスコミの「ライバル扱い」に田中はうんざり?

その試合は田中の馬力勝ちだった。技巧でかわす斎藤を追いやった。

「(田中は)決していいとは思わなかった。それでも終盤にアクセルを踏んだら、まだ踏めた」

日本ハムの栗山英樹監督はこう田中を評した。時速150kmの速球を勝負どころで投げる田中の力のピッチングは迫力満点だった。

周囲、とりわけマスメディアは、この二人を「宿命のライバル」と位置づけ、ことさら話題にしたがる。田中の様子をうかがうと、またか、とうんざりする表情に見えるときがある。

「チームの勝利が大事。これで勢いに乗ってくれれば、と思う」

田中は対斎藤の質問をかわし、フォア・ザ・チームを強調した。いつまでも高校時代のことを持ち出さないで、と言っているようである。

いうまでもなく両投手は高校時代、夏の甲子園大会決勝でぶつかり、駒大苫小牧の田中が再試合の末、早実の斎藤に投げ負けた。二人の話になると、必ずこの対戦結果がイントロとなっている。「勝った斎藤」「負けた田中」と。

昨年、田中と斎藤が公式戦で投げ合ったときは、初めてだから話題にするのは当然である。結果は田中の勝ち。内容はかなりの開きがあった、と専門家は口をそろえた。その試合はまた、斎藤の新人王レースからの脱落を意味するものでもあった。

田中は高校卒業と同時にプロ入り。2007年、11勝を挙げて新人王を獲得し、昨年は最多勝(19勝)、防御率1位(1.27)、勝率1位(.792)の3タイトルを獲得。今年から大リーグのレンジャースに入団したダルビッシュ有(前日本ハム)と並び日本球界で1、2を争う投手に成長している。

斎藤は早大時代の実績を背に昨年プロ入りしたが、6勝どまり。田中との距離を素直に認める発言をしたものだった。

名実ともに「日本のエース」との差は縮まるか

もう通算70勝に近い数字を残している田中。マスメディアをはじめとする周囲は、日本を代表するエースの有資格者、として扱わなければならない存在である。年俸3億2000万円という数字もそれを証明している。また私生活でも結婚(タレントの里田まい)が決まっており、すっかり大人だ。

斎藤は今シーズン、開幕投手に選ばれ、完投勝利をマークした。キャンプからの成果が出たといえる。向こう気が強い性格だけに、田中への挑戦の気持ちは並々ならぬものがあると思う。しかし、現状は残念ながらチームのエースを目指しているといったところ。今季の年俸は前年から倍増の3000万円となったものの、田中に追いつくのは容易なことではない。その大きな差をどう縮めていくか、ファンは注目している。

次回のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)では、日本チームの「背番号18」(エース)をつける第1候補は田中だろう。斎藤が選出されるかどうかは、今シーズンの実績にかかっている。それほど「格が違う」のである。(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)