第22節シャルケ戦で、3試合ぶりに先発出場を果たした長谷部誠。最近はサイドバックでの出場が多いが、この日のポジションは中盤の右サイドだった。マガト監督の下ではこのような突発的なポジション変更は珍しくなく、「いつもどおり、試合の2時間前のミーティング」の際にチーム及び本人に告げられた。シャルケ対策として、戦術練習からこのポジションに入っていたというわけではないのだそうだ。

「このチームでは試合に向けて何か戦術練習をするというわけではない。多くのライバル(チームメイト)がいる中で練習から100パーセント出し切っている姿でアピールして、監督はその中から良い選手を使うんだというメッセージを感じている」
 と、長谷部は語る。

「だから、(戦術的な)意思統一をはかるのは、正直、難しいですよね。今日だって中盤で簡単にフリーでパスを出されて、それなのに最終ラインが高かったりと、このチームはサッカーの基本ができていない」
 
 この日の長谷部は、前半10分、15分と立て続けに失点を許し0−2とされると、29分には交代させられてしまう。特に長谷部のミスから失点したわけでもなく、常識的に考えれば理由のよくわからない交代だった。
 
「理由の説明は特にない。でも、僕も付き合いが長いからわかるけど、マガト監督は選手を目覚めさせるためにこういうことをすることがある」

 すでにボルフスブルクで4季目に入り、マガト監督のことも熟知しているだけに達観なのか、諦観なのか、いずれにせよ淡々とした表情で笑顔さえ浮かべながら話す様子が、こちらとしても少々切なかった。結局、チームは長谷部の交替後の後半にもさらに2失点し、0−4と大敗を喫してしまう。

「ホームとアウェーの戦い方が違いすぎる。アウェーでは守備的になりすぎるし、アウェーで勝ち点をとっていかないと、やはり上に上がっていくには厳しい」

 チームについてだけでなく、納得のいかないはずの自身の交代についても冷静なところが長谷部らしい。 

「(0−2となり)これから攻撃、という時に交代させられるのは、このチームの中で攻撃に行く時には一番不要だというメッセージを感じなくてはいけない」
 
 サイドバックで出場することが多いことでも分かるように、攻撃よりも気の利いた守備がマガトのお気に入りになっている。日本代表での姿などからするともったいないと思ってしまうが、客観的にボルフスブルクの長谷部を見れば、本人の言う通りなのだろう。

 今や単に欧州でプレイしていればいいという時代でもない。もちろん選手にもよるが、香川真司の活躍以降、日本人でも欧州、特にドイツでは十分に通用することは分かっている。長谷部の場合、年齢的にもキャリア的にも、決してこのままの状態でいいということはないはずだ。仮に今後、マガト監督の下でレギュラーとして試合に出続けたとして、どのような成長を望めるのだろうか。

 長谷部には毎年、移籍話が浮上するが、浮かんでは消えていく。今季こそそれが実現したら……というのは老婆心だろうか。そんな思いにとらわれた一戦だった。

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