この停滞した現状をJリーグが危惧しているのは、2013年からアジアサッカー連盟(AFC)が導入するクラブライセンス制度と無関係ではないだろう。このクラブライセンス制度は、アジアチャンピオンズリーグ(ACL)の参加資格として、クラブに対し、様々な分野に厳格な基準を設けている。大東チェアマンも今後Jリーグもこれに準ずると明言している。

今回、J1昇格プレーオフの参加要件にはしっかりと「J1ライセンス」と明記されているが、今後J2がJ1に昇格するためには、チームの成績条件だけではなく、これまで以上の経営面やハード面のクラブ力を要求するということ。現状の流れからすると、1位と2位の自動昇格組はもちろん、プレーオフに参加する3位から6位までのJ2クラブの「J1ライセンス」は、相当厳格に審査されるのではないだろうか。たとえばスタジアム基準をとっても、改修によって将来的にJ1基準を満たす、といった暫定処置が認められるのかどうか。

■今は変わることができるチャンス

J2の地方小クラブを取材している立場から言わせてもらえば、J1昇格プレーオフと、J2とJFLの入れ替え戦と、今後導入されるクラブライセンス制度は、J2の、親会社を持たないような小クラブにとって、突如として大海原の嵐の激流に放り出されたようなものだ。だが、激動の今こそチャンスと捉えるべきではないだろうか。

先日ある取材で、親会社を持たないJ2の地方小クラブの代表が「たとえば行政は何をやるにしても相当の基準がないと腰をあげない。Jリーグが求める厳しい基準は、我々クラブにとっては厳しい側面はあるが、行政の重い腰を動かすためにはある意味で必要」と話していた。地方には、Jリーグに「3年以内に新スタジアムを作りますよ」と約束しておきながら、景気など諸事情を理由に、その建設計画を遅々として進めない行政もある。その対処策でもあるだろう。

今後Jリーグがクラブに求める諸基準は間違いなく厳格になっていく。だがそれは、クラブが地域や行政を説得するには好材料なのだ。だから、J2クラブはJリーグの諸基準の厳格さに委縮せず、それを逆手に取り、これまで以上にうまく地域や行政を、クラブの強化やハード面の整備などに巻き込めるチャンスだと捉えるべきだ。そして同時に、プレーオフ導入によって、多くのJ2クラブがJ1昇格に一歩近づいた。今、J2クラブは変わることができるチャンスなのだ。

■著者プロフィール
【鈴木康浩】
1978年生まれ、栃木県宇都宮市出身。作家事務所を経て独立。現在はJ2栃木SCを中心に様々なカテゴリーのサッカーを取材。「週刊サッカーマガジン」「ジュニアサッカーを応援しよう!」などに寄稿している。

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