2011年07月27日配信のメルマガより抜粋

 先週の配信で全く言及するのを忘れていたので、今更ながらなでしこジャパンの世界制覇をテーマにコラムを書きたい。

 まずは、ワールドカップを持ち帰ってきてくれた選手、スタッフをはじめとするなでしこジャパンのチーム一同に心より「おめでとう」と「ありがとう」の言葉をかけたい。帰国後のなでしこフィーバーについては言及するのが気の毒になるくらいの消費型フィーバーであるが、個人的には今回の快挙をきっかけに女子サッカーに少なからず関心や注目を払い、機会があれば環境整備のための現状認識と課題抽出をするための取材を行ないたいと考えている。

 女子サッカーの世界大会を通しでじっくりと見たのは、今回が初めてだった。よって技術、戦術レベルで論評することはできないが、私が一番強く感じたなでしこジャパンの偉業は「日本人らしいフェアプレー」で優勝を勝ち取ったことで、「ジャパンスタンダードを女子サッカーの世界に植えつけた」ことだと思う。

 女子サッカー自体が男子よりも、クリーンで流れの切れないゲーム展開であることも有利に働いていたとは思うが、なでしこジャパンの選手たちには相手や主審を欺くような行為や、時間稼ぎのために演技をして痛がるようなことが全くなかった。

 レイトファールや意図的に足に向かってきたファールを受けても、相手や主審に噛み付くことなくさっと立ち上がって素早くリスタートをする。ゲームへの集中力が高い彼女たちにとっては当たり前のプレースタイルだったのかもしれないが、女子ワールドカップの裏で行なわれていたコパ・アメリカの試合を見比べるとそのクリーンさ、潔さはあまりに顕著で新鮮だった。

 私が欧州のサッカー大国のやり方を全肯定していないのはおわかりいただけていると思うが、欧州で長年生活してみて日本人の持つ生真面目な性格や、クリーンでフェアな行動様式はサッカーの中でもストロングになりえるものだと思う。一昔前は「日本人はマリーシアを知らない」「狡猾さが足りない」と言われていたものだが、私はなでしこジャパンの選手たちが見せたようなフェアプレーで頂点を獲ることで、自分たちの価値観や基準を世界に認めさせればいいと感じている。

 例えば、昨年末にスペインのエルクレスBに練習参加した仙石廉(ファジアーノ岡山)は、どんなにハードなファールを受けてもさっと立ち上がってすぐにリスタートしていた。自らの集中力を切ることなくすっとゲームの流れに戻っていくプレースタイルはスペイン人選手が初めて目撃するもので、周囲の選手たちも戸惑いながら接していたが、そうしたスタイルが技術の高さ以外にスペインで評価されていた。少々話が飛躍するが、私はリーガがプレミアにリーグとしてのクオリティ、コンテンツ力で勝てない部分の根幹はそうしたクリーンさ、潔さの違いにあると思っている。

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