W杯開催が迫る中、フランスのレキップ紙はウェブ版で出場32チームをシリーズで紹介し、その戦力を分析しているが、20日には15番目のチームとして日本が登場した。

 そのテーマはズバリ「ベスト4を公式目標に掲げているが、はたして可能なのか?」。この問いに元代表監督のフランス人、フィリップ・トルシエ氏が答えている。

 まずは「理論的には、日本がベスト4に進むのは不可能」と単刀直入に切り出すトルシエ氏。ただし実際的には、過去の歴史において不可能が可能になった例がなくはないことも認めている。自身が指揮をとった2002年大会もそのひとつ。「韓国が4位、トルコが3位なんていったい誰が想像した? 審判の判定やゲーム展開によっては、日本だってこういう現象の恩恵を受けられるかも知れない」と語る。

 トルシエ氏は、“ベスト4”という目標を掲げた岡田監督の意図を、「高いハードルを課して、選手たちに責任感を植えつける」、「国民に夢を見させ、熱狂を生み出す」狙いがあったと理解している。トルシエ氏自身、「私だって、日本が勝ち残れないほうに賭ける、なんてことはしない。日本が殊勲の勝利をあげることは可能」と考える。ただしそのイメージは「カップ戦で4部のチームが1部のチームに挑むようなもの」とあくまで現実的だ。

 現在の日本の実力については、「2006年以来、以前のレベルに戻った。能力的には後退し、再建中のチームだ。外国でプレーする選手が非常に少なく、チームの成熟度に欠ける」と分析する。欧州の舞台でハイレベルの試合を経験する選手たちを擁するアフリカの国々とは対照的だ。「少なくとも30人は欧州の1部や2部のクラブでやれる選手がいるのに、その認識が足りない」と日本が世界のトップ20から大きく引き離される原因を指摘した。

 戦術についてトルシエ氏は、日本のプレースタイルを攻撃型と見ている。ボールを支配することに重点を置き、高いラインで水平的なパスを中心に攻撃を展開する。試合の場面によっては、6、7人が相手ゴール前に殺到することもある。これではカウンターに対して非常にもろい、というのがトルシエ氏の懸念だ。しかし「90分間、彼らは決して力を緩めない。ピッチで死ぬ覚悟がある」と選手の運動量と精神力には敬意を払っている。

 最後にトルシエ氏は中村俊輔について語った。「私の時代からすでに中村はスターだった。彼の左足はマジック。世界屈指と言っていい。セットプレーの強力な武器だ。しかしいまとなっては、彼の評判は結果よりも名声が先行している。日本で彼はメディアの寵児なんだ。彼にとって不幸なことに、その左足はもはやかつてのような重要性をもっていない。現在のサッカーでは、自分のポジションと同時に、ディフェンシブな場面でも力を発揮できるトータルな選手が求められている。その点で彼はややピークを過ぎた」。

 中村を「非常にいい選手であることに変わりはない」と評価するトルシエ氏。ただし「日本が殊勲の勝利をあげるとしたら、それは彼の力で可能になるわけじゃない。集団で成し遂げるものになるだろう」と結んだ。