2008-09年にボルドーと最後まで優勝争いを演じたマルセイユ。2位でシーズンを終え、3年連続のチャンピオンズリーグ(CL)出場権を確保したものの、来シーズンに向けた見通しがまったく立っていない。17日に株主との対立でディウフ会長の退団が決まり、ジャン=クロード・ダシエ氏(民放TF1の編集局長)が新会長に内定しているが、そのダシエ氏の選んだスタッフに“いわくつき”の人物が含まれていることが波紋を呼んでいるためだ。22日付のレキップ紙が報じた。

 その人物とは、ジャン=ピエール・ベルネス氏。現在はナスリ(アーセナル)、リベリ(バイエルン)といった選手の代理人として辣腕をふるっているが、かつてはマルセイユの幹部だった。その当時、マルセイユが名門の歴史を汚した“八百長事件”に深く関与したとされている。

 この事件は1992-93年シーズンの終盤、マルセイユがヴァランシエンヌの複数の選手に働きかけ、金銭と引き換えに試合で“手加減”するよう依頼したもの。マルセイユにとっては、リーグ5連覇がかかると同時に、翌週にACミランとのCL決勝を控えた場面だった。その結果、マルセイユは負傷者を出さずにヴァランシエンヌ戦に1―0で勝って優勝、つづくCL決勝でもACミランを下し、フランス初の欧州チャンピオンに輝いた。しかし“八百長事件”が発覚すると、UEFAから欧州王者として活動する権利を奪われ(翌年のトヨタカップにはACミランが出場)、フランスリーグからは優勝タイトルの剥奪と翌シーズン降格の処分を受けた。

 ダシエ氏はこの事件に関わったベルネス氏をスカウトとして招聘する構えを見せているが、この人事にディウフ前会長の右腕だったジョゼ・アニゴ運動部長が難色を示している。当初、ディウフ氏とともにクラブを去ると表明していたアニゴ氏はその後態度を保留しているが、ベルネス氏の入閣が決まれば辞任は確実と明言している。

 クラブ幹部の人事が決定しないことで、ディウフ前会長から要請され監督を引き受けたデディエ・デシャン氏の正式就任も遅れている。デシャン氏自身はベルネス氏に代理人を依頼するなど親しい仲だが、過去のスキャンダルに関与した人物に正式のポストを与えるのは賢明でないと考えている。デシャン氏はこれまでモナコ、ユベントスの監督時代にそうであったことからわかるように、クラブの状況に納得がいかなければ仕事を引き受けない性格。このまま事態が紛糾すれば、監督就任を白紙撤回する可能性もないわけではない。