チベット問題から冷凍ギョーザ、北京五輪、そしてつい先日の冷凍インゲンと、今年は何かと中国が話題になる年だ。

そんな中国の”性”に関して、興味深いニュースが配信された。


今月15日にロイター通信が配信した記事によると中国で1976年から86年までに生まれた人々を対象にした性に関する意識調査が行わたという。これは「一人っ子政策」が施行された後に生まれた、30代前半までの世代を対象にした調査ということになる。

調査は初体験について尋ねている。それによると、初体験時の平均年齢は22.8歳ということだった。20歳以下と答えた人は2割近くに及んだ。また、初体験の相手について尋ねたところ、96%が恋人や結婚相手と回答している。売春、セックスフレンドなど行きずりの関係については、ほとんどの回答者が「容認しない」と答えていることもわかった。

このようなデータに基づき、ロイターの記事は「(中国の青年は)かつてより性交渉には開放的だが葛藤も感じ、一夜限りの関係には否定的」と総括している。しかし、本当にそうした見方が適切と言えるだろうか。

昨年行われた別の調査では、結婚前に交際相手と性交渉を行うことついて、「道徳的に問題ない」と答えた人が、2000年には55.7%だったのに対して、2006年には63.8%に増えていることが指摘されている。とりわけ女性については、2000年の49%から2006年には60.3%と、婚前交渉を肯定する人が急増しているという(調査結果はRecord Chinaによる)。

また、中国では現在、HIVの感染者が急速に増加の一途をたどっている。中国政府の公式発表によると、昨年10月までにあわせて22万例のHIV感染者とエイズ患者がいるとのことで、このうち、HIV感染者の7割は20歳から39歳の若者が占めている。また、エイズによる死者も72%は20歳から49歳の若年者だという。

政府の公式発表だけでも十分に多い数字だが、民間の統計ではHIV感染者は70万人に達しているというデータもあり、実際はもっと多いことが推測される。在中の日本大使館のホームページにも2006年12月に掲載されたニュースの中で「HIVおよびエイズ感染者は、実際には約65万人存在すると推計されており(香港・マカオは除く。ちなみに日本は約1.2万人と推計)」「つまり、感染者の多くは、中国政府に報告されていません」との記載がある。

中国におけるHIVの感染原因は、2006年の中国政府の公式発表によると麻薬が37%、輸採血が5%、性交渉が28%となっており、麻薬中毒者による感染ルートが主流を占めていた。しかし、ここ数年は新たに性交渉による感染ルートが表面化しており、それが急速な感染拡大につながっている。


西南部に位置する、雲南省。そこは麻薬密売の温床となっており、90年代後半には中国のHIV感染者の6割が雲南省人とまで言われた。人口の2%がHIVに感染したという州も出ているほどだ。

「麻薬によるHIV感染」とは麻薬注射による感染のことを指すが、それだけではなく、性交渉による感染も指摘されている。男性の麻薬中毒者は正常な男性と比較して明らかに淫らな性行為が多く、HIVの感染率もそれに比例して多くなっているということだ。また、女性の麻薬中毒者は2人に1人が売春行為をしていることがわかった。男性の麻薬中毒者とのセックスにより感染が拡大し、さらに感染した女性が子どもなどにも感染させる例も報告されている。


北京、上海に次ぐ大都市・広州。市内のある病院が、大型サウナセンターでマッサージをする女性の集団検診を行ったところ、130人中100人に何らかの性病が確認された。「マッサージ」と言っても、その実態は性的サービスであったことは容易に推測できる。

驚くべきは女性たちの多くは、性病について何も知らなかったということだ。また、コンドームをつけずにセックスをしてしまうことに、抵抗のない女性も多かったという。さらには、性交渉さえなければ性病に感染しないと思いこんでいる人も少なくないとのことだ。こうした女性達はいずれも地方の貧困層出身で、性に関する十分な知識がないまま、金のために劣悪な環境で働き、自らの体を傷つけてしまっているのだ。


一方、中部地区など貧しい地方では、「血液販売」での採血により感染する事例も報告されている。不衛生な環境での血液ステーションで、生計を立てるべく自らの血を売る。感染者の大部分は若者だという。
 
政府のエイズ予防教育ではみだらな性交渉による感染が過剰に宣伝された。このため、多くのHIV感染者は、その感染事由に関わらず、周囲からの差別を受けることとなる。貧困のために知識も予防手段もなく、感染後も惨めな思いをしなければならない。こうした実態を中国政府はどこまで認識しているのだろうか。


このように、中国におけるHIV拡大の要因は「貧困と無知」であって、「淫乱と無恥」ではない。06年に中国でも「エイズ予防治療条例」が施行され、感染者への差別の禁止や出稼ぎ労働者などに対するエイズ予防の宣伝、公共施設におけるコンドームの配備などが規定された。

わが国も中国へのODAの一環として、専門家の派遣や現地職員の人材育成を行うとともに、簡易検査機材の供与などを行っている。同じアジアの一員として人口大国・中国を襲うHIVの拡大を食い止めるべく、国境を超えた助け合いが急務となっている。


参照
在中国日本大使館
エクスプロア中国
大紀元時報

(編集部 鈴木亮介)

-ITからセレブ、オタク、事件・事故まで。スルーできないニュース満載-
TechinsightJapan(テックインサイトジャパン)はコチラから!