いよいよ7日21時(日本時間8日午前5時)にフランス対アルゼンチン戦がキックオフを迎える。サッカー強豪国同士(FIFA最新ランキングでフランス4位、アルゼンチン3位)の対決だが、最後の一戦は1986年3月26日にまでさかのぼる。フランスはジャン・ティガナやルイス・フェルナンデス(現ベティス監督)、アルゼンチンはあのマラドーナのいた時代だ。試合は2−0でフランスが勝っている。

 まさに夢のカードとなるが、この一戦を誰よりも待ち望んでいた男がいる。フランス代表のFW、ダビッド・トレゼゲ(ユベントス)だ。トレゼゲはアルゼンチン人の両親の間にフランスで生まれたが、2歳のときに両親の故郷に移り、17歳までアルゼンチンで育っている。1995年、モナコでプレーするためにアルゼンチンを離れ、フランス国籍を選択した。以来、自分を「完全にフランス人」と思えるようになっている。似た境遇ながら、最近アルゼンチン国籍を選択したゴンサロ・イグアイン(レアル・マドリー)とは対照的だ。

 トレゼゲはレキップ紙のインタビューで「17歳のときからもう自分はアルゼンチン人ではない。あの年齢で選択を迫られた。青のユニフォーム(フランス)を着ることに誇りをもっている。後悔はない」と振り返り、「ユニフォームの色は自分で感じるもの、だからイグアインの決定はよく理解できる」と語った。

 フランスに来て3年後には、「青のユニフォーム」でW杯を制覇。その2年後には、自らのゴールで欧州選手権の優勝カップを手に入れた。「あの2つの大会が心を揺り動かした。僕の生活はフランスにあり、生涯ずっとここに残る」とフランスへの愛着を語る。

 しかしアルゼンチンも心の片隅から離れない国であることも確か。アルゼンチンに戻って、家族や幼なじみと再会するのは何よりの楽しみだという。少年時代はもちろん白と水色の縦縞のユニフォームに憧れた。1986年W杯メキシコ大会で、ディエゴ(・マラドーナ)が優勝カップを掲げたイメージがまだ焼きついている。少年時代「唯一のアイドル」だったマラドーナが、いまでは親しい友人になった。「僕らは友情で結ばれている。クリスマスには彼の家で食事した。午後中ずっとサッカーの話をした。彼がイタリアに来るときも会う。彼は自分の国を愛しているが、僕がいまこうなったことも喜んでくれている」。

 トレゼゲが現在のアルゼンチン代表の中で好きなのはメッシ。「彼はいまに最強になるだろう」と高く評価している。テベスについても、「フランク(・リベリ)みたいに計算しないところがいい」とほめた。セリエAで顔を合わせたクレスポとの対決も楽しみだという。

 トレゼゲにとって忘れられない一戦となるこの豪華カードで、昨年の「悪夢」(ユベントスのセリエB陥落、W杯決勝でのPK失敗)を振り払い、よい1年のスタートを切ってもらいたいものだ。