巨人が恐れ、西武と広島が覚悟した人的補償のシナリオとは?

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 「脇谷リターン」の再現か。

 巨人はFAの人的補償で、内海哲也投手(36)に続き、長野久義外野手(34)まで放出したことが大きな波紋を呼んでいる。だが球界関係者は、冷静に分析する。

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巨人はバカじゃない


 「巨人もバカじゃない。球団幹部は『ショック』『遺憾』などという言葉を並べているが、それは建前。28人のプロテクトリストを作る際、長野や内海がチームから出ていくシミュレーションをしていないわけがない。2人は今年FA権を取得する。近い将来、チームに戻すことができる算段があってのプロテクト外しでしょう。仮に2人に活躍されたとしても、そんなにダメージはない。球団が本当に痛いのは、大竹の人的補償として放出した広島で一岡が開花したように、将来ある若手が相手球団で長く活躍する『最悪のケース』が続いてしまうことです」。

 早ければFAで1年後には内海、長野が巨人に出戻る可能性があるというのだ。その例として、脇谷亮太が挙げられる。13年オフ、巨人にFA移籍した片岡の人的補償で西武に移籍したのが当時32歳。その2年後にはFA権を行使して、巨人復帰を果たしている。

 今回、炭谷の人的補償で西武移籍が決まった内海に、それほど悲観した様子は見られなかった。「将来的にはジャイアンツに帰ってこられるように、ジャイアンツの紳士たれという部分を、ライオンズで発揮できれば良いと思います」とコメントし、出戻りをにおわせた。

巨人、広島、西武 それぞれの思惑と駆け引き

 FAで流出するリスクがあり、なおかつ年俸が高額なベテランを人的補償で獲得するメリットはあるのか。

 西武は最短1年後に内海を流失する可能性について「もちろんそこは認識している。でも、彼が1年間しっかり仕事をしてくれれば、移籍することになっても獲得した意味はある」と渡辺久信SD。10年ぶりにリーグ優勝したとはいえ、失点、防御率は最下位で、菊池もメジャー移籍した投手陣の立て直しは急務。昨季、阪神で伸び悩んでいた榎田をトレードで獲得してブレークさせたように、リーグが変わって内海が再起する可能性を見込んでのことだ。

 丸の人的補償で長野を指名した広島は「1年でも活躍できるなら、年俸が高くても問題ない」と鈴木球団本部長が「出戻りFA」も見越した発言をしている。長野は飄々(ひょうひょう)とした性格で若手からもベテランからも愛される存在。どこにいっても溶け込める性格で、巨人での経験、実績は広島の若手にとって生きた手本となる。近年の成績は丸の穴を埋めるほどではないが、右の代打としても計算でき、昨季限りで現役引退した新井貴のポジションを任せることもできる。十分なメリットを期待して長野獲得を決断した。

 「第2の一岡」を恐れてベテランを見切った巨人と、「第2の脇谷」になるかもしれないリスクを引き受けた西武、広島による駆け引きが水面下で展開された、今回の移籍騒動だった。

※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]