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この夏、甲子園で旋風を巻き越した金足農高の吉田輝星投手の進路に注目が集まっている。甲子園大会を終えた時点では、周囲の関係者は大学進学の可能性を匂わせていたが、2018年9月10日付のスポーツ報知が「進学路線も気持ちに変化」と報じるなど、ここにきてプロ入りの可能性が高まってきた。

吉田投手は、夏の甲子園で150キロを記録したが果たしてプロで通用するのだろうか。

安定したフォームが高い評価

一般に甲子園でスピードガンが普及したといわれるのが1980年。以降、夏の甲子園で150キロを超える球を投げた投手は2017年までに20人。今夏、吉田をはじめ、柿木蓮投手(大阪桐蔭)、奥川恭伸投手(星稜)、井上広輝投手(日大三)の4投手が150キロ超をマークし、夏の甲子園での150キロ超投手は、合計で24人となった。

2017年までに150キロ超をマークした投手の20人すべてがその秋のドラフトでそれぞれ各球団から指名を受けている。その中で大学に進学したのは新垣渚(沖縄水産高→九州共立大)ただひとりで、19人が高卒でプロ入りを果たした。ちなみに新垣は1998年の夏の甲子園で大会史上初の150キロ超となる151キロをマークした。

上記のデータを考慮すれば、吉田のプロ入りの可能性は極めて高い。では、実際スカウトの目には吉田の投球はどのように映っているのだろうか。関係者の声を拾ってみると、その多くが「プロでも通用する」だった。体格は176センチと、投手として小柄な方だが、多くのスカウトが評価しているのは安定した投球フォームと、投手としての頭の良さだ。安定したフォームこそが150キロを超える速球を生む。吉田にはまだまだ十分に伸びしろがあるとの見方が大方を占める。

球数の多さと制球難が課題か

一方で制球難を指摘する声もある。吉田は決してコントロールが良い投手ではない。それは今夏の甲子園で投じた球数が如実に物語っている。6試合に登板(5試合完投)して投じた球数は実に881。決勝戦は5回でマウンドを降りたが、一試合平均146球を投じた。これは無駄球が多い証拠でもある。高校生相手には三振が奪えたコースを外れた高めのボール球はプロでは通用しない。この制球難を克服しないかぎりプロでの成功はないだろう。

プロは速球だけでは通用しない。夏の甲子園で史上最速を記録した2人の投手のプロ入り後の成績はどうだろう。まずは2007年大会で155キロを記録した佐藤由規(仙台育英→東京ヤクルトスワローズ)。入団3年目に12勝をマークし、将来を期待されたが、肩を痛めたこともありその後の成績は芳しくなく、昨シーズンは3勝5敗に終わっている。また2013年大会で同じく155キロを記録した安樂智大(済美→東北楽天イーグルス)は、プロ入り後、故障が続き2017年までの3年間でマウンドに上がったのはわずか26試合。プロの厳しさに直面している。

ただ、松坂大輔(中日ドラゴンズ)、田中将大(ヤンキース)、大谷翔平(エンゼルス)ら3人がメジャーに羽ばたいたのも事実。今夏、超高校級投手の仲間入りを果たした吉田が、スカウトの予想通りにプロで通用するのか。まずは今秋のドラフト会議に注目が集まる。