代表監督交代のタイミングを迎えている。

 マリに1-1で引き分けても、納得感を抱かせる内容なら、特段、何かを言い出す気にはならない。進化の過程にあることを実感できたなら、寛容な気持ちになれるが、実際はその逆だ。解決の糸口が見えない。ハリルホジッチの言葉を聞いても、混乱の最中にいる感じだ。想定外の出来事にショックを受けている様子が見て取れる。実際、打開策が見えてこない。ドツボにはまった状態、万策尽きた状態とはこのことだろう。

 こちらが交代を口にするのは、これが確か4度目だ。アジア2次予選、アジア最終予選の最中にそれぞれ1度。そして3度目は、昨年末に行われた東アジアE-1選手権後。宿敵・韓国に1-4で敗れたからと言うより、サッカーの中身そのものに決定的な違和感を覚えたからだ。

 悪く言えば、蹴っ飛ばすサッカー。よく言えば縦に速いサッカー。相手の背後を突くサッカー。ハリルホジッチの求めるスタイルに可能性を感じないことが、その一番の理由だが、今回はそれに加えて、メンバー選考の無計画さが露わになった。もちろん、この件について指摘するのも、初めてではない。この期に及んでまたしても露呈した格好だ。その方面の才覚に乏しいことが確定的になっている。

 いい話を探し出すことが、ここまで困難になったチームも珍しい。想起するのは2010年南アW杯に臨んだ岡田ジャパンだ。この時は、本番に向けて日本を経つ直前に行われた壮行試合でも韓国に敗れ、日本代表は泥の船に乗せられるように旅立っていった。

 岡田武史監督はそこから本番まで2週間弱で、大改革を図り、チームを立て直したわけだが、ハリルホジッチにそうした芸当があるようには見えない。当時の岡田さんが持ち合わせていた、体裁を気にしない開き直りが、ハリルホジッチには望めそうもない。高いプライドがそれを許さない気がする。

 事態が好転する気がしない。監督交代のタイミングそのものだと思う。こちらの意見を述べるならば、再度、アギーレで、となるが、誰を迎える場合でも、似たような問題は起きる可能性がある。4年間を有効に使い、計画的に強化を進めることは、簡単なことではない。

 ハリルホジッチの招聘に大きく関与したのは、大仁邦彌会長、原博実専務理事そして霜田正浩技術委員長(役職はいずれも当時)だ。しかし、この3人はいま、いずれも日本代表関係の仕事に就いていない。大仁さんは名誉会長。原さんはJリーグの副チェアマンと言う、それまで空位だったポストに横滑り。霜田さんに至っては、「日本の指導者は、もう少し外国に出て学ぶべきだ」と言っていたにもかかわらず、今季から、レノファ山口の監督の座に収まっている。

 任命責任者は不在だ。現在、会長を務める田嶋幸三氏がその任に就いたのは、ハリルホジッチが代表監督の座に就いた後(2016年3月)で、西野朗氏が、強化委員長のポストに就いたのは、その直後。

 ある時の代表メンバー発表記者会見で、ハリルホジッチが、日本のサッカーについて思い切り苦言を呈したことがあったが、西野さんはその傍らでその言いたい放題の発言を、ジッと黙って聞いているしかなかった。日本サッカーの方向性について語るべきは、ハリルホジッチではなく強化委員長なのに、である。

 任命責任はないとはいえ、責任者は誰かと言えば、時の強化委員長であり、会長になる。大仁、原、霜田各氏より、ハリルホジッチにノーを突きつける力を持っているのはこちらの方々だ。いまのこの事態を招いた責任は、どちらが重いかと言えば6対4で田嶋、西野両氏のコンビになる。

 だが、それを論じることが根本的な問題に繋がるかと言えばノーだ。