「ルノーと日産で証明してきたからこそ、三菱自でも証明できる。自信がある。だからこそ、三菱自がアイデンティティーを維持すると主張してきた。だから益子(修社長)さんに(社長に)残ってもらった。益子さんは三菱自のシンボルだ。混乱はない。社風もそのまま尊重しながら、ブランドの中身も変えない」

 「シナジーを生み出すと言っているのは効率化によるシナジーだ。コストや投資の効率化、専門性の共有などだ。それでいて各ブランドは社風に応じて仕事をしていく。その条件があるからこそ、混乱のリスクを避けられる」

三菱自は大きく成長できる
 -三菱自会長に就いて1カ月が過ぎました。改めて三菱自の潜在力をどう見ますか。また新たに支援が必要だと思うことありますか。
 「二つの潜在力を持っている。会長になる前から分かっていたことだが。1つは大きく成長できることだ。ここ数年、年販100万台で横ばいとなっている。ブランドの潜在力ははるかに大きい。次期中期計画を策定して、益子さんの指揮の下で(成長を)実現できる。次期中期計画はこの会社を拡大し、成長させることが目標の一つだ」

 「日産もルノーもサポートできる。なぜなら、三菱自は多くの市場で販売しているが、プレゼンスが低いところがある。例えば、米、欧、ロシア、ブラジル、中東だ。ブランドにとって潜在力がある。第二は利益だ。購買部門を共用すれば、かなりのシナジーを三菱自にもたらす。100万台のメーカーが、同じやり方で1000万台のような購買はできない」

 「技術へのアクセスも増える。自社で開発する必要がなくなり、かなり節減が見込める。三菱自は生産を委託している地域がたくさんある。アライアンスがはるかにいい条件を提示できる。もっと効果的な条件で生産ができる。原価低減を通じた利益も好機だ」

 「もちろん実現しないといけない。アイデアが足りないと言うことはない。三菱自をどう回復させるか、より高い成長、利益を上げるために、どうするかのアイデアはたくさんある。益子さんはこれを意識している。なぜなら、私がV字回復を期待しそれをサポートしていきたいと考えているからだ」

常にベストを目指すが、1位自体が目標ではない
 -5年後、10年後のアライアンスの姿をどうイメージしますか。
 「アライアンスが上にあって、主に共通の技術やプラットフォーム、サービス開発などをやりながら、各社がその下で、日産であれば『日産』『インフィニティ』『ダットサン』、ルノーであれば『ルノー』『ダチア』『ラーダ』、三菱自であれば『三菱』というブランドを持ち、ビジネスを中心に集中して取り組む。こんな形の仕組みになるだろう。各社は個別の会社として存続し、自立性を持って事業をする。それでいて基本的なビジネスの要素は共同開発をする」

 -ゴーンさんの経営者としてのゴールは何ですか。
 「どのような経営者であれ、目標は持続可能性を実現することだ。会社と業績の持続可能性だ。会社の成長と利益と健全性を維持することが第一だ」

 「二つ目の目標は、常にベストを目指すことだ。魅力ある車、サービスを魅力ある価格で提供する。通常はベストな人がサイズが大きい。いい仕事をしてない会社が業界をリードすることはなかなかない。1位自体が目標ではない。それは結果だ。いい仕事をしたからこそ結果的に1位になる。いい戦略と実行力あってこそだ。『私は1位になりたい』と言えるようなことではない。だが1位になる可能性はある。コスト、品質、技術、戦略で戦っている」

 「今はトップ3のグループだ。フォルクスワーゲン、トヨタ自動車、当アライアンスで年販規模のわずかな差があるが、その差に意味はない。意味があるのはスケールだ。他のメーカーに対して、ハンディキャップを持たないことだ。スケールは利点だ。1位になることはうれしい。どうでもいいとは言わない。でも結果だ」
※内容、肩書は当時のもの