判定は!? 「美人半額/ブス無料」バーへ行ってみた

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顔面でトクしたことも損したこともない……そんな自らを「程よいブス」と自覚して生きてきた筆者です。

「モテすぎてつらい…」は本当だった! “超イケメン”に日常と恋愛模様を聞いてきた

先日、山手線内回りが高田馬場で停車した際に、ちらっと窓の外を見ると、インパクトのある看板が飛び込んできました。黒地に黄色で「美人半額 ブス無料」ってナニコレ。

東京に住んで13年にもなるのに、これまで気づいていませんでした。

HPを覗いてみたところ、1968年に営業開始し、今年で51年目の老舗! いったいどんなマスターがいるバーなのか、自分の会計は半額になるのか、無料になるのか確かめるべく、看板があるお店「Bar信」を訪ねてみました。

私の辞書にブスという言葉はありません

高田馬場駅前にあるビル2階の角、山手線ホームが見える好立地にあるお店。マスターとママの風格漂う女性従業員(シゲさん)が迎えてくれます。お酒をつまみを頼んだ後、単刀直入に聞きました。

――なぜ『美人半額 ブス無料』というインパクトのある言葉を看板に掲げることにされたのでしょうか?

「昔は飲み屋で『女性半額』とすることが多かったの。でも、それは面白くないから、『美人半額 ブス無料』って書いてみたんだよね」(マスター)

マスターの遊び心からの始まりだったようです。ただ、その看板を見ると、自分は美人なのかブスなのか確かめたくなるのか、来店早々に「私、ブスですか?」と聞いてくる女性もいるとか。

「自分に自信がないと『私、ブスですか?』なんて言葉は出てこないよ。それに自分はブスだと本当に思っている人に、『あなたはブスだから無料です』なんて、こっちも言えるわけがない(笑)」(シゲさん)

それは正しい! としか言いようがないコメントをシゲさんからいただいた後、マスターが補足してくれました。

「ブスを無料にしたらうちの商売が成り立たないからね(笑)。まぁでも、私の辞書にブスという言葉はなくて、女性はみんな美人なんですよ」(マスター)

女性=美人! Bar信の空間内では、原則、全女性が美人、ということだったのです。

内面ブスは雰囲気を乱したり、嫌な飲み方をする人

うーん……美人とブスの違いについて、マスターからなんとか言葉を引き出したい。そう思った筆者はこんな問いを投げかけてみました。

――見た目は美人だけど、中身はブスな人っていませんか?

「それはいるよね。たとえば、いくら美人だったとしても、ここに来て騒いだり他のお客さんに迷惑をかけたり、嫌な飲み方をする人は、中身まで美人だとは思えないよ。

逆に、美人のなかの美人は、感じがいい人だよね。雰囲気がいい人、というか。他のお客さんとも気持ちよく会話したり、その場にいい感じに溶け込んだりね」(マスター)

高田馬場の地で51年、夜の店を続けてきたマスターの言葉はシンプルながら、深みがあります。

高校卒業後、百貨店に入社して呉服部に配属され、着物を売る仕事をしていたマスターは、勤続7年目に会社が倒産してしまったのだそう。

無職の期間に知り合いと飲みに行った際、たまたまテナントが空いていたことから、3カ月後には自分でバーをオープンしていた、という話は驚きしかありません。行動力とエネルギーにあふれすぎていてすごい……!

「バーの営業なんて当然未経験だし、経営に携わったこともないけど、店を持つことになったんだよね。でも、バーやお酒の知識がまっさらだったからこそ、素人なりに工夫して、50年以上も続けてこられたのかもね」(マスター)

25歳のときに自分の店を持つようになってから、毎晩営業終了後には他の店へ飲みに行き、お酒の作り方を教えてもらっていたと言います。

「あなたは美人」と言ってもらえる非日常

マスターの歩んできた道までお話を伺えて満足しました。さて、会計をしてもらいます。「ごちそうさまです。お会計お願いします」と伝える筆者に、マスターとシゲさんは「半額ね」と返してくれました。

BAR信の中では、筆者は美人として扱われました(笑)。「仕組みをわかっているけどなんか嬉しいですね。現実世界で、美人って言われる機会はないですから。えへへ」と笑う筆者に、「あなたは美人だよ」とマスターは最後の最後まで優しかったのでした。

ちなみに、女性=美人=半額になるケースは、女性だけで来店した場合に限られます。女性ひとりまたは女性の友人同士で来店すると半額になります。

メニュー表にある「珍からあげ」「珍たこ焼き」などはレンジでチンして出すものだそう(マスター談)ですが、「そば粉焼」など凝ったメニューもあります。マスターもシゲさんも気さくで、常連さんとも笑いあふれる会話ができるBAR信、一度訪れてみては?

取材協力/BAR信