甲子園球場で行われた阪神対巨人戦で鳥谷が顔面に死球を受けた

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巨人戦で阪神・鳥谷敬内野手(35)が顔面から流血する死球を受けて倒れ込み、一時試合が中断したが、再開直後に阪神ファンから飛び出したコールは「くたばれ読売」だった。

「そこは『がんばれ鳥谷』じゃないのかい」。阪神ファンからさえもそんな違和感や苛立ちの声が続出した。

「応援するのが先じゃないの?」

甲子園球場で2017年5月24日に行われた阪神対巨人戦、0-0の5回ウラ1死3塁の場面で、吉川光夫投手が投じた直球がすっぽ抜け、打席に立つ6番・鳥谷の顔面を直撃、鼻から流血した。テレビ放送の音声でも「ゴツッ」という音が聞こえた。鳥谷はその場で倒れ込み、球審、塁審と、阪神の金本知憲監督もすぐにベンチから駆け寄った。担架が呼ばれたが、鳥谷はしばらくすると立ち上がり、タオルで鼻の辺りを押さえながら歩いてベンチに下がった。球場はわずかにざわつくだけで、ほぼ静まり返っていた。

吉川は危険球により退場処分。球審が場内にアナウンスを入れると、スタンドからは打楽器の音や声援が徐々に聞こえはじめた。そこでホームの阪神ファンがリズムに合わせたのが「くたばれ読売 そーれいけいけ」と繰り返すコールだった。

読売巨人軍にブーイングを浴びせたわけだが、負傷して退いた自チームの鳥谷への「応援」ではなく、負傷させた相手チームへの「口撃」が真っ先に響いた状況に違和感を覚える野球ファンが、ツイッター上では少なくなかった。

「自力で立ち上がった鳥谷を心配して、そして応援するのが先じゃないの?怒るのは分かるけど」
「ファンの総意は、くたばれ読売じゃない。頑張れ鳥谷、でしょ」
「鳥谷が倒れてるのに『くたばれ読売』コール・・・そこは『がんばれ鳥谷』じゃないのかい?」

さらには阪神ファンというユーザーからも「普通に鳥谷心配しろよって阪神好きだけど思う」「くたばれ読売コール 現地いるけど気分悪い」などと疑問が出ている。

巨人・亀井「鳥谷選手がすごく心配です」

「くたばれ読売」というフレーズ自体はもともとヤクルトファンが「東京音頭」の前奏部分にのせて合唱していたものだが、同じフレーズを阪神ファンがオリジナルのコールで使っている。なおヤクルトでは08年頃から使用自粛の動きがある。

コールの1つとして野球ファンの間で知られた「くたばれ読売」については、一種の「煽り」にすぎず、本気で「くたばれ」と思っているわけではないパフォーマンス的なものだとする向きもある。一方で、こうした使われ方を知りつつもツイッターでは「あれだけは現地で口に出したくない」と毛嫌いする声があるほか、今回の鳥谷への死球シーンでも用いたことに「いつもは半笑いでやっていたけど、昨日のは皆、殺気立っていた。ちょっと怖かった」という声も出ている。

試合は巨人が3-1で勝利したが、8回に代打で先制適時打を放ってヒーローインタビューを受けた亀井善行外野手の言葉が反響を呼んでいる。インタビュアーに「今日はアクシデントもあって、その後(退場の吉川に代わって)出てきた田原(誠次)投手や、8回もベンチスタートの選手が活躍して勝利をもぎ取りました」と振られると、亀井は「鳥谷選手がすごく心配ですけども」と口にした。その上で「みんなでもぎ取った勝利だと思います」とした。何気ない一言だったが相手球団の選手を気遣う言葉に、ツイッター上では「これこそ真の野球選手」との声も出ている。

鳥谷は負傷後に病院に直行し、鼻骨骨折と診断されたという。25日のスポーツ紙の報道写真では鼻全体を覆うフェイスガードを着けて練習する姿が映されている。鳥谷は歴代2位の1794試合連続出場中(1位は衣笠祥雄の2215試合)。25日の巨人戦では先発を外れたもののベンチ入りしている。