【笑う朗読】水島裕×大塚明夫×小野賢章 ロングインタビュー! 世代を超えて語り合う“声優の仕事論”
水島裕プロデュース公演Vol.5となる『笑う朗読』が5月19日(金)から21日(日)の期間、全5公演で開催されます。
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声優界のレジェンド野沢雅子さんが少女時代から晩年までを全てひとりで演じ、対するキャスト全員が小学生から壮年まで自身と同年代の役を演じる「MACO〜ぼくの姉貴〜」、前回も好評だった小林由美子さんブログ原案の「おかわり自由日記」の続編、井上喜久子さん・ほの花さん母娘共演作、さだまさしさん書きおろし脚本という、ここでしか観ることのできない豪華すぎる4本立てとなっています!
Character JAPANでは、企画・プロデューサーであり出演者の水島裕さん、出演の大塚明夫さん、小野賢章さんにインタビューを敢行。『笑う朗読』への意気込みから、お互いの印象、声優という仕事への想いまでたっぷり語っていただきました。
“笑う朗読”にこだわるワケ
―― まず最初に水島さんが“笑う朗読”にこだわるワケをお伺いしたいです。
水島:これまで色々な朗読劇を見てきたのですが、真剣なテーマのお話が多いなと思ったんです。これは良し悪しじゃないですよ。真面目でシリアスなお話もとっても大切ですが、そんな中で思い切り笑える朗読劇を作ってみたらどうだろう?と思ったのがはじまりです。
―― シリアスな朗読劇が多い中、“笑える”朗読劇ってとても目立ちますよね。
水島:それはシメシメでしたね(笑)。
―― 今回も本当に豪華なメンバーが集まりました。
水島:大好きな人ばっかり集まってもらいました。いや、もちろん今回出ない方でも大好きな人たくさんいますが(笑)。現場で好きな人がいたら「こういう舞台やらない?」ってナンパしてました。
脚本家は大変だったと思いますよ。例えば今回、明夫ちゃんと賢章君が出てくれることになって、脚本家は出演者に合わせて本を書かないといけない。自分が思うままに書いた脚本に合わせてキャストを決めるんじゃなくて、決まった人に合わせて書くという。やっと明日、脚本が出来上がります。
―― えっ、すごくギリギリなんですね!(取材日は4月4日)
大塚:いえいえ、全然。朗読劇は台本を覚えなくて良いからね、1ヶ月前に(台本を)もらえれば余裕なんですよ(笑)。
水島:そうそう(笑)。あと、賢章は特に覚えが早いよね。
小野:……そうですかね?(笑)
大塚:まだ脳細胞がたくさんあるからな。
小野:だからこそ油断しちゃうんですよね。覚えなくても良いと思って実際に舞台にあがると噛んじゃうというか。
水島:本当にキャパシティ広いんですよ、賢章って!「ラフィングライブ」(水島裕、山寺宏一、演出家の野坂実の3人がコメディをやるために立ち上げた演劇ユニット)の前回公演『Run for Your Wife』でいわゆるオネエの役があって、「この役は賢章にやってほしいな」と思いつつも、これはOKしないかなと心配だったんですが(笑)、でも本当に気持ちよく引き受けてくれて。
それは大塚さんもそうなんです。以前、舞台の上で水をぶっかけたりとかしたことがあったのに……今回も気持ちよくOKしてくれて。出演してくれる皆さんには感謝してもしきれないです。
声優・野沢雅子のスゴさ
―― 本公演の一番の見どころ、こだわりポイントを教えてください。
水島:今回のキャストの皆さんはマコさん(野沢雅子)のために集まってくれていると思っています。今作では、マコさんが一人で幼少期から晩年までを演じて、その時代に合わせてキャストが代わっていくのですが、そこが一番の見所だと思います。こんなことをできるのはマコさんしかいない。
例えば、森光子さんは『放浪記』で女学生時代から晩年までを演じられていて、それも十分すごいのだけど、マコさんは幼少期からできる。それは声優だから。
大塚:「オラ、ワクワクすっぞ!」って言えるんだもんね(笑)。マコさんって、本当すごすぎる方なので。疲れたって思ったことが無いらしいね、あの方が一番サイヤ人かもしれない。
水島:アニメ番組のオーディションの時に、僕だったら台本をもらって役作りを考えてからマイクの前に立つんだけど、マコさんは前もって作らずに、座っているところからマイクの前に歩いて行く間に、自然とその役の声になるんですって。
小野:すごい……。僕は野沢さんとお会いするのが初めてなので、本当に楽しみです。
水島:そのマコさんのすごさを、この「笑う朗読」では笑いを通して皆さんに伝えていきたいなと思っています。
「朗読」の魅力とは
―― アニメーションや舞台など、表現する方法は様々ですが、「朗読劇」の一番の魅力はどんなことだと思いますか?
大塚:一番自由度の高い表現方法でしょうね。アニメや吹き替えだと、元となるキャラクターからあまりに大きく外れることはできないけれど、朗読劇はビジュアルが無い分、自分で考えて演じることができる。
水島:だからこそ、演じる人の技量にかかってくるんですけどね。だから実力派ばかり揃えないといけないんです。
小野:僕も大塚さんがおっしゃるとおり、自由だけど難しいというのが朗読劇の魅力だと思います。アニメーションの現場だったら事前に練習をしますが、朗読劇だと相手の方がどういう読み方をするのかまでは事前にわからないので、その場で変えていかなければいけない。
大塚:そうだね。難しいと思えば難しいけど、自由だと思えばとても楽しい。考え方の違いだと思います。
―― 皆さんは“笑わせる”演技というのはご自分で得意だと思いますか? 難しいと思いながら取り組んでらっしゃいますか?
大塚:人を笑わせるっていうことは一番難しいと思うので、毎回挑んでいる感じですね。
水島:大塚さんの人を笑わせようとする意欲ってすごいんですよ。前回公演では寿美菜子さんと親子役だったんですが、ハリセンで思い切り叩かれるシーンで、角度や強さを一生懸命コーチしていて。
―― ハリセン! 痛くなかったですか?
大塚:ハリセンの質が悪かったのか、結構痛くてね(笑)。
水島:ごめんね(笑)。
小野:僕は(笑わせる演技は)あまり得意ではないですね。無理に笑わせようと思うとお客さんは冷めちゃうと思うので、一生懸命取り組むことが大事だと思っています。ひたすら一生懸命に。
水島:いやあ、前回の「ラフィングライブ公演」でも、賢章はかなり笑わせてくれましたよ。飛び道具的なキャラクターだったのですが、それ以上にかなり盛り上げてくれました。
小野:(笑)。そうですね、かなりぶっ飛んでいるキャラクターだったので。
大塚:こんな若いうちにね、飛び道具的なキャラクターを演じるのってすごく難しいんだよ。年取るともっと図々しくできるというか、ベテランが飛び道具を演じるというだけで笑ってくれる部分があるけど、若いと難しい。だからすごいんだよ。
世代を超えた人気声優の“仕事論”
―― 皆さんが好きな、これは笑ったな〜というコメディ作品ってありますか?
大塚:僕がこれまで一番笑ったのは『少林サッカー』(2002)。あれはもうダメでしたね、ゲラゲラ笑いました。
水島:僕は『ローマで起こった奇妙な出来事』という、映画にもなったブロードウェイミュージカルが大好きです。あと、アンジャッシュのネタは大好きです。
小野:最近笑ったのは漫画の『中間管理録トネガワ』です。
水島&大塚:えっ、“トネガワ”ってあの『カイジ』の?
小野:その利根川のスピンオフなのですが、日常の些細なことをあのテンションで解説するんですね。お昼ご飯のメニューについてだったり部下の扱い方について「圧倒的敗北・・・!」とか「想定内・・・」というテンションで(笑)。すごく面白いのでオススメです。
―― 水島さんと大塚さん、そして小野さんは世代が違うと思うのですが、先輩のおふたりから、小野さんの活躍をどう見られていますか?
大塚:僕が賢章君の年齢の時なんて全然ダメでしたね。僕が27歳の頃ってちょうど声の仕事をはじめたくらいかな。賢章君は腕も良いし、腹もすわってるしね、何も教えることないくらい。
小野:いえいえいえ!
大塚:こういう人がいてくれれば、声優界も安泰なんじゃないかな?
水島:僕の27歳の頃は、バリバリアイドルやっていた思い出すと恥ずかしい時代ですね(笑)。
僕が賢章のことをすごいと思うのは、僕も児童演劇出身で、例えば坂上忍君や斉藤こず恵ちゃんが3歳の頃から知っているんだけど、子役がそのまま成長してちゃんと大人になるのってすごく難しいと言われてて。
でも賢章は初めて会った時からちゃんと大人の演技をしていたし、「子役から脱却するのに苦労した」という感じが全くしなかったんだ。
小野:子供の頃から舞台で大人と混ざってお芝居させていただいていたのと、自分のことを客観的に見る癖があるので、そういう伸び悩みを感じることはなかったですね。
―― 今こうして何回か舞台を共にして、第一印象から変わった所はありますか?
大塚:あんまり変わらないかな。嘘つくのが下手なんだと思う。初対面でも取り繕わないんだろうね。
小野:……はい。嘘下手です、すぐバレます(笑)。
水島:僕が賢章に初めて会ったのって、前々回の「ラフィングライブ公演」だったのだけど、僕の息子役だったのね。それで、礼儀正しいけれど自分からグッと来るタイプではかった気がする。慣れてからはどんどん話してくれる様になったけど(笑)。
一回ビックリしたのが、稽古場に1時間だけ来たことがあるんです。前の仕事が終わったあとに品川の稽古場に駆けつけて、1時間だけ稽古して、2時間後にはシンガポールへ旅立っていった。僕だったら知らん顔してそのまま羽田空港行って飯でも食っちゃう。そういうところも本当にすごいなと思っています。
―― 小野さんから見た、水島さんと大塚さんはいかがでしょうか。
小野:裕さんの第一印象は、初めて会ったのが「ラフィングライブ」を立ち上げたばかりですごく気合が入っていた時で、「こいつ大丈夫なのか?」っていう視線を感じたんですね(笑)。
大塚:(笑)。
水島:そんなんだった?! ヤバイな〜(笑)。
小野:でもそこからの心の開き方が裕さんはすごく早くて、すぐに仲良くなれました。
明夫さんは渋くて格好良い役を多くやられていて、大人の男性のイメージだったんですが、すごくお茶目で。
大塚:こいつバカだな、って思ったんじゃない?(笑)
小野:そんなことないです(笑)。先ほど明夫さんが「俺くらいの年齢になったら飛び道具の役がウケる様になるんだよ」とおっしゃっていましたが、そうやって年齢を重ねたからこそできることってうらやましいんです。ズルいなと思って(笑)。とりあえずはやく30代になりたいな、という気持ちが大きくて。
水島:でも逆に今しかできない役もあるでしょ? 年は自然にとっちゃうんだから、そんなに早く大人になっていかなくても良いと思うけどなあ。
大塚:あとは20代でサボると30代にツケが、30代でサボると40代にツケがきちゃうんだよな。僕なんかもう50代後半ですけど、今サボったら60代の時に仕事なくなるぞっていう危機感がある。
水島:それはそうだね、役者は自分が努力していなければ仕事が無くなってしまうから。
小野:本当にそうですね。アニメのお仕事も、毎クール就活している様なものですから。
「やることが目標」になっちゃダメ
―― 少し気が早いかもしれませんが、次回公演については決まっているのでしょうか?
水島:全然決まってないです! 「笑う朗読」は、僕がやりたいことが見つかったらやるので、舞台の日程を先に決めることはないんですね。次回をやるかどうかは五分五分、かな。面白いことを思いついたらやります。
大塚:こういった舞台って「やることが目標」になっちゃダメなんだよね。お金儲けの為にやるんだったら、簡単には儲からないんだから。皆で一つの目標に向かって本気で楽しいって思えたら、それが儲けなんだよね。
―― 時代が流れていく中で、エンタテインメントを取り巻く状況について変化を感じることはありますか?
水島:テレビでやれないことが増えた分、舞台ではできることが多いし、ライブに人が集まってきて、お芝居を生で見てくれる世の中の流れになってきたんじゃないかなと感じています。
大塚:僕の若い時と違うのは、インターネットの時代になってSNSが発達して、情報や観るものを選べる様になったから、そこでできた時間を舞台に使ってもらえたら嬉しいですよね。
あと、エンタテインメントって本来は刺激や毒もあって、もっと混沌としているもの。アレもダメ・コレもダメと言われがちな時代ですが、それじゃつまらない。オーディエンス自身が選択して色々なエンタテインメントに触れるようになればいいなと思います。
小野:若者目線としては、僕は声の演技も、歌も舞台も色々なことをやっているので、昔は「自分ってどっちつかずだな」と思うことがあったんですね。でも最近はそういうことがなくなってきたし、やりたいことをやればいいじゃんって思ってるんです。
水島:「声優」とか「アーティスト」とか分けたがる人がいるんだよね。
大塚:「あなた声優でしょ?」みたいなね。
小野:そうなんです。昔はそういう空気を感じていたんですけど、最近はもっと自由になって楽しめるようになってきている気がします。
水島:「職業・小野賢章」でいいんだよね。色々できちゃうのが賢章だから! 今回集まったメンバーも皆そうですね。山ちゃん(山寺宏一)なんかにこのテーマを語らせたら大変ですよ、あの人何でもできちゃうんだから(笑)。
―― 最後に、大塚さんと小野さんがプロデューサーとしての水島さんを見て感じたこと、すごいなと思うところを教えていただけますか?
水島:やめてください! 恥ずかしい(笑)。
大塚:裕さんをずっと遠くから見ていて、裕さんは嘘をつかなくて正直に気持ちが出ちゃうタイプなんですよ。すごく気持ちの良い人です。あと、僕はいい加減なところがあって、面倒くさいと思ったことは放り投げちゃうこともあるんですけど、裕さんもそういうところがあると思って親近感があるんです。
水島:アハハ。鋭い!
大塚:プロデューサーって本当に大変なんですよ、やることがいっぱいあるしね。なんで忙しい裕さんがそんなことできるの? って思うくらい。
小野:裕さんは面白いことをどんどんやっていこうというパワーと行動力がすごい。今回のように皆さんと一緒にお仕事できることが自分にとって絶対プラスになると思うので、これからも声をかけていただけるのなら、全力で取り組んでいきたいです。
水島:よし、じゃあもっと変な役を色々やってもらおう!
大塚&小野:(笑)。
―― 今日は楽しいお話を本当にありがとうございました!
水島裕プロデュース vol.5 『笑う朗読』
日時 2017年5月19日(金)〜21日(日)
会場 品川プリンスホテル クラブeX
脚本 さだまさし/酒井晴人/瀬名快伸/小林由美子
演出 野坂 実
出演 野沢雅子/
井上喜久子 井上ほの花 寿 美菜子
斉藤こず恵 春名風花 潘 めぐみ 悠木 碧/
大塚明夫 小野賢章 島粼信長
関 智一 瀬名快伸 西 亮一 山寺宏一/
水島 裕 ほか