Jリーガー時代より高額のギャランティを受けながら、金銭感覚が一般人並のカレン・ロバート

写真拡大

 筆者と初めて会ったとき、カレン・ロバートは自転車で待ち合わせの場に現れた。

 昨年七月に面談の約束を取り付けた際、彼が指定した場所は船橋駅近くの某ファミレスだった。取材後はそのまま母校・イチフナ(市立船橋)の練習に参加するという。

 カレン・ロバートは日本代表とも目された実力者で、現在はインドスーパーリーグのノースウェストユナイテッドFCに所属している。

 知っての通り、J1を経験するとサラリーマンには到底稼げない額のお金をもらえる。ましてやカレンはタイ、韓国、インドで「日本ではもらえないほどの高額のお金」を受け取っている。にもかかわらず、移動は自転車である。

 筆者は今まで約20人のサッカー選手と会っているが、そんな選手はほかにいなかった。

◆30歳前後で引退を余儀なくされたJリーガーに3つの進路を提案

 全くの偶然だが、筆者はカレンと会う数日前にとある元サッカー選手の再就職相談にのっていた。JFLとJ3を行き来して、29歳で引退となった選手で、実績も知名度も無に等しい。

 筆者は彼に三つのルートを提案した。

 一つ目に、サッカーアカデミーのコーチ。

 王道であり、あまりにもベタだが、サッカーに関わり続けられる。筆者には幸い、カレンを含めアカデミーをやっている友人もいる。

「最近は多すぎて渋滞気味ですけど」とカレンは言うが、いざとなれば知人の知人で中国に住み着いてサッカーアカデミーを成功させている人物もいる。興味があれば紹介しようと思っていたが、本人曰く「サッカーはもういいです」という。

 二つ目に、競輪選手。最近は競輪学校に入学する際も年齢制限がなく、サッカー選手ということは故障さえなければ並み以上の運動能力・下半身が備わっているはずだ。話題性もあるだろうし、筆者に知人には競輪でトップクラスに入る選手もいる。何より、頑張れば五十前後まで年収一千万程度、細く長く稼げる競技というのはなかなかない。これはどうかと勧めると、競輪は気が向かないという。

 三つめは、保険営業マンである。かつて若くして故障で挫折した元メジャーリーガーのフランク・ベトガーが大成功して以来、特に技能がない元スポーツ選手がよく進む道である。考えてみれば、外国語だのプログラミングだのは知らないかもしれないが、元スポーツ選手ということで、地元では今も「おらが街の大英雄」である場合が多く、顔も広く話も聞いてもらいやすい。友人の凄腕保険営業マンに同席してもらい、仕事内容などを話してもらうと、成果を上げれば何千万、億の収入も夢ではないと聞き、少し興味を持ったようだった。

◆プロスポーツ選手の活動期間は最長で約12年。やはり大卒者は不利

 筆者はカレンに、彼の立場ならどうするのだろうか聞いてみることにした。

 ちなみに、その彼は東京の某私立大学を卒業している。

「だったら話は簡単じゃないですか。C級指導者ライセンスを取って、出身大学のツテでどこか私立高校の指導者とかすればいいんですよ。誰でもすぐとれるし、それで指導すれば月に30~40万くらいはいけますから選手時代の収入より全然いいと思いますよ」

 問題は、彼がサッカーに関わりたくないと言っていることなのだが……。

 以前カレン・ロバートと「サッカーでどんな選手が大成するのか」深く話し合った際、一致したのは「欧州移籍を考えるなら大卒デビューは遅すぎる」ということだった。

 スポーツ選手は一生できる仕事ではない。サッカー選手なら30歳前後までの職業だ。カズや中村俊輔はあくまでも例外中の例外であり、ほとんどは今回の彼のように30手前でひっそりと引退というか「クビ」になっていく。つまり、高校卒業から残された時間は単純計算で12年しかないということになる。大卒だと8年しか残っていない。18歳から22歳までの期間をサッカーだけに費やすか、学業にかまけてしまうかの差はあまりに大きい。